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フウウンキュウなる野分かな [折々散歩]

鳥羽殿へ五六騎急ぐ野分哉 与謝蕪村

台風がくると、この句を思い出します。

「野分(のわき、のわけ)」は、野を分けて吹くから、台風の古称。鳥羽殿は、白川上皇、鳥羽上皇の離宮で、「鳥羽離宮」・「城南離宮」とも呼ばれます。平安末の、政争・戦乱の舞台ともなりました。

「鳥羽殿へ」の「へ」は、方向を示す格助詞です。「に」が、時間や空間における点を表し、「行く」「移る」「進む」などと一緒に使うと、「郵便局行く」などのように目的地を表すことになります。それに対して、「へ」は、「南向かう」「あっち行け」というように、漠然とした方向を示すと言われます。

台風の激しい風が吹きすさぶ中、「鳥羽殿」の方角へ、五六騎の武者が疾駆しているのです。目的地が鳥羽殿であるかどうかの確証はありませんが、何やら政乱含みの緊迫した事態が、見るものをも緊張させるのです。

「風雲急を告げる」という表現がありますが、まさにそれです。『風雲○○城』という番組がありました。もちろん。「フウウン」と読みます。

この写真などは、さしずめ、「風雲常山城址」となりますか?

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 すると、これは「風雲麦飯山城址」

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風雲の鴨川

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風雲金甲山

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風雲のなかを行く朝の通勤通学列車
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倒れた稲と雀たちの饗宴
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『土佐日記』に「4日。かぢとり、 『今日、風雲のけしきはなはだあし』とて、船出ださずなりぬ。」(「忘れ貝」とあります。ここは、「かぜくも」と読むのが適当でしょう。

都が近づいて、心が急く作者一行なのに、「今日は風や雲の様子がチョーヤバイか」といって船頭さんが船を出さなかったのに、穏やかな天気だった、という記事です。

作者(仮名文字を使う日記を書きたいために、自らを女性に仮託して書いていますが)は、「ひもえはからぬかたゐなりけり。」(船頭の野郎は、天気予報もできないアンポンタンだったんだよね。チェッ!」てな具合に、船頭に悪罵を投げつけています。「かたゐ」は、教科書などでは、「田舎者」などの役を当てていますが、漢字では乞食と書きます。

室生犀星の有名な詩を引きます。

小景異情(その二)   室生犀星

ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの
よしや
うらぶれて異土の乞食となるとても
帰るところにあるまじや
ひとり都のゆふぐれに
ふるさとおもひ涙ぐむ
そのこころもて
遠きみやこにかへらばや
遠きみやこにかへらばや

 この詩の「異土の乞食」も、「いどのかたい」と読みます。異境の地で落ちぶれて乞食暮らしをするようなことがあっても、故郷に帰ろうなんて思っちゃ ならにというのです。


野分を詠んだ松尾芭蕉の句を引きます。

茅舎の感

芭蕉野分して盥(たらひ)に雨を聞く夜(よ)かな  松尾芭蕉

この句は、松尾芭蕉が、深川のわび住まい「芭蕉庵」の入庵の時に詠んだ句とされています。作者三八歳の時で、いわゆる「蕉風」を確立していく時期の、印象深い句です。

芭蕉は、大きな葉を持つ、バナナに似たエキゾチックな植物。これを台風の雨と風が激しくたたいている様は、ドラマチックとも言えます。

詞書き(前書き)に、こうあります。

老杜(ろうと)、茅舎(ぼうしゃ)、波風の歌あり。波翁(はおう)ふたたび此の句を侘びて、屋漏(おくろう)の句作る。
其世の雨をばせをの葉にききて、独寝(ひとりね)の草の戸。


芭蕉庵は、あちこちから雨漏りするあばら屋。自分の詫びた境涯が、尊敬する杜甫(老杜)のそれと似ていることだけが、せめてもの慰めだと言うのです。


 江戸俳諧が隆盛を示した、元禄・文化の2俳人の句を見ましたので、文政期を代表する一茶にも登場願いましょう。

 裸児と烏とさわぐ野分哉 小林一茶

台風の持つただならぬ気配を敏感に察して、烏と子どもが騒いでいるのです。烏も子どもも、ともに、人為から遠い、言い換えれば、ありのままの自然に近い存在であり、とりもなおさず「神」に近い存在と言えるかも知れません。

この句の前に置かれているのがこちらです。

あの月をとつてくれろと泣子哉 一茶

やっぱ、子どもにはかないません!子どもは、「小型の大人」ではなく、 「神の代役」(柳田国男)であったのでしょうか?


台風24号は、日本海を北上し、山陽地方への影響はわずかで住みました。被害の大きかった地方の皆様、お見舞い申し上げます。

私の故郷は、岡山県三大河川の一つ「吉井川」の支流である「吉野川」の流域。かつてはよく氾濫する川でした。

これにちなんだ話題は、別項にて。



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