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まされる宝鳥にしかめやも? [文学雑話]

昨日の記事で、山上憶良の「貧窮問答歌」を話題にしました。そこでわたしは「社会派」、「生活派」、「人道派」の歌人という呼び名を用いました。
同時に、「家族思い」「子煩悩」という一面も、思い浮かびます。

瓜食めば子ども思はゆ栗食めばまして偲ばゆ 何処より来たりしものぞ
眼交にもとな懸りて安眠し寝さぬ 
                        <万葉集巻5 802>
  銀(しろがね)も金(くがね)も玉も何せむに 勝(まさ)れる宝 子に及(し)かめやも
                        <万葉集巻5 803>

地方語訳
瓜を食うたら子供らあが思われてならん。栗を食うたら、いよいよ恋しゅう思えるんじゃ。
子供ゆうもんは、どこからきたもんかのお、
寝よう思うても、まぶたの裏に子供らぁの姿が引っかかってからに、ちっとも安眠させてくれんのじゃ。

銀じゃの、金じゃの、真珠じゃのゆうたりする宝もんも、何にしようにぃ(なんにもならんがな)。
いちばんまさっとる宝ゆうたら、子ども以上のものがありましょうか?ありゃあしませんぞな。

銀=シルバーは、白く光る金属なので白金(しろがね)です。 もちろん、プラチナ=白金(はっきん)ではありません。

黄金=ゴールドは、黄色く光る金属ですから、「きがね」です。なまって「くがね」、「こがね」ともいいます。黄金虫は「こがねむし」です 。

黄金虫・アッシャー家の崩壊 他九篇 (岩波文庫)

黄金虫・アッシャー家の崩壊 他九篇 (岩波文庫)

  • 作者: ポオ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2006/04/14
  • メディア: 文庫

玉は、珠。真珠=パールの類です。 以前、「白玉か何ぞと人の問ひしとき---」(「伊勢物語」)の話題で触れました。
ついでに、赤い金属は赤金(あかがね)=銅で、黒い金属は黒金(くろがね)、つまり鉄です。
「守るも攻めるも黒鐵(くろがね)の浮かべる城ぞ頼みなる」(瀬戸口藤吉作曲の行進曲「軍艦行進曲」)の「くろがね」はこれです。ちなみに岡山市西大寺にある「鉄(くろがね)」は、鉄鉱山に由来する地名だそうです。


憶良の作品に、こんなものもあります。

老身重病年を経て辛苦(くる)しみ、また児等を思ふ歌五首 長一首、短四首
  玉きはる 現(うち)の限りは 平らけく 安くもあらむを
  事もなく 喪なくもあらむを 世間(よのなか)の 憂けく辛けく
  いとのきて 痛き瘡(きず)には 辛塩を 灌ぐちふごとく
  ますますも 重き馬荷に 表荷(うはに)打つと いふことのごと
  老いにてある 吾が身の上に 病をら 加へてしあれば
  昼はも 嘆かひ暮らし 夜はも 息づき明かし
  年長く 病みしわたれば 月重ね 憂へさまよひ
  ことことは 死ななと思へど 五月蝿(さばへ)なす 騒く子どもを
  棄(うつ)てては 死には知らず 見つつあれば 心は燃えぬ
  かにかくに 思ひ煩ひ 音のみし泣かゆ(897)
反歌
  慰むる心は無しに雲隠れ鳴きゆく鳥の音のみし泣かゆ(898)
  すべもなく苦しくあれば出で走り去(い)ななと思へど子等に障(さや)りぬ(899)
  水沫(みなわ)なす脆き命も栲縄(たくなは)の千尋にもがと願ひ暮らしつ(902)
  しづたまき数にもあらぬ身にはあれど千年にもがと思ほゆるかも(903)

中でも、899の歌は、庶民の切実な思いが込められています。
【地方語訳】

 どうしようものうて苦しゅうてたまらんけえ、いっそ、家出して逃げちゃろうと思うたりするんじゃけど、そねなことをしたら子供らぁにメーワクがかかってしまうけえのおぉ、なんぼぅにもできんわのぉ。


今日の鳥です。
烏城の烏

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楠の実を食べています。
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烏城
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 シロハラ
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ヒヨドリ
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カルガモ
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