木蓮のつぼみ柔らに春立ちぬ [今日の暦]
春立ちける日詠める・紀貫之
袖ひちてむすびし水のこほれるを春立つ今日の風やとくらむ
古今集の撰者の一人、紀貫之の歌です。
「春立ちける日」とは、暦の上で立春になった日、という意味。つまり今日のことです。
学研全訳古語辞典を引用します。
[訳] 夏の日の袖がぬれるまでにして手にすくった水が、冬の間凍っていたのを、立春の今日の風が解かしていることであろう。
鑑賞:季
節の推移を水の変化(水→氷→水)によって巧みに表現して、立春を迎えた喜びを詠んだもの。「むすび」は「掬(むす)び」と「結び」との、「春」は「張
る」との、「立つ」は「裁つ」との掛け詞(ことば)。「結ぶ」「張る」「裁つ」「とく(解く)」は、「袖」の縁語。末尾の「らむ」は係助詞「や」の結び
で、助動詞「らむ」の連体形である。
この歌を現代語で解釈しようとすると、理屈っぽくなってしまい、歌としてはどうなの?と突っ込みたくなりますね。
そもそも、歌っている季節は春なの?夏なの?冬なの?
極めつけは、これでもかと言わんばかりの修辞や技巧。「サムイ親父ギャグ」並の言葉遊びですか?
古今集の歌風の特徴をなす、「優美・繊細・理知的」といった傾向は、大なり小なり「理屈っぽさ」と形式重視の頭でっかちに傾きがちで、貫之はといえばその歌風の推進者ですから、無理もないのですが。
でもこの歌、その鼻につく理屈っぽさと言葉遊びの を少々大目に見てやると、こめられている季節感なり歌の調べなりは、なかなか捨てたものでもなさそうです。
「立春」という知的認識がもたらす観念的・論理的連想が、情緒的・体感的な感覚を伴って心象風景となって繰り広げられ、みずみずしいといってもいい季節感を醸しているではありませんか。特に「泉の水」というピンポイントに照準を合わせて、うつりゆく季節の時間的推移が複層的に読み込まれています。
それを図式化してみると、
緑の葉のおい茂る夏のほとばしる清水の冷涼さ(=過去)
→厳しい冷え込みに泉も凍り付く真冬の冷たさ(直前)
→立春(現在)
→そよ風が氷を溶かしているであろう想像上(願望上の)情景(想像上の現在~近未来)
といった具合でしょうか?実際のその目で確かめた春ではありませんが、「立春」であるからには、今頃は、かならずや山の泉の氷も溶けて春が訪れているだろうと、心の中にはありありと、穏やかな春の訪れが「体感」されているのです。
全国的な気象情報と違わず、私の地方でも、昨日までの何日かは、まるで3~4月並と言われる暖かさでした。打って変わって今日は、ちらほらと雪花も舞う、冬逆戻りのお天気でした。
吉丸一昌(よしまる かずまさ)作詞、中田章(なかた あきら)作曲の「早春賦(そうしゅんふ)」(1913年)は、
春は名のみの 風の寒さや
と歌います。
- アーティスト: 呉恵珠,コロムビア・オーケストラ,アンサンブル1960,ドイチュ(ヘルムート),塚田佳男
- 出版社/メーカー: コロムビアミュージックエンタテインメント
- 発売日: 2003/07/23
- メディア: CD
◇オルゴール 早春賦 / 赤とんぼ / ふるさと (中田章/山田耕筰/岡野貞一) FSO-570HO
- 出版社/メーカー: フジゲン株式会社
- メディア: おもちゃ&ホビー
古今集つながりで、清原深養父(きよはらのふかやぶ)は、こんな歌を残しています。清少納言の曽祖父です。
冬ながら空より花の散りくるは雲のあなたは春にやあるらむ
【解釈】冬なのに空から花が降ってくるのは、雲のかなたは春なのであろうか。
これも理屈っぽいと言えば理屈っぽいですね。
冬なのに空から降る花=雪花です。
地上は雪の降る冬だけれども、雲のあなたの天上は、花盛りの春なのだろうか?と、へ理屈をこねているわけです。でも、桜花の舞う春の訪れを渇望している心情は、よく伝わってきます。
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kazさん、相変わらず難しい言葉が並んでいて晩酌しながらでは理解が及びません。連絡と質問です。連絡は、ご存じかもしれませんが、例のIWAS〇氏率いる団体が100名加入を成し遂げ、あと少しで純増くんだそうです。21世紀に入ったころのことを思い出します。それから、質問は、なぜ、野鳥の名前をよく御存じなのでしょうか。日本野鳥の会の会員とは聞いていないのに。
by はるかぜのきみ (2014-02-04 19:09)
はるかぜのきみ様
晩酌前に読みなさい(笑)。
IW○○○氏の件、聞いてます。niceです。
鳥の名前、お師匠に恵まれているのです。
後山近辺には、どんな鳥がいるのでしょう?
by kaz (2014-02-04 21:38)
今朝の仙台はマイナス4.8℃、犬の散歩で凍えました(^^)ニコ
by johncomeback (2014-02-05 09:38)
johncomeback様
寒いといっても温暖な岡山では、わずかに薄氷が張る程度。わずかに雪花が待っただけでも、凍えております。
by kaz (2014-02-05 19:04)