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我が宿のカワラナデシコえとせとら [園芸]

以前「万葉集」学習のきっかけに、クイズをつくってみました。その一部がこんな感じ。






Q3   日本語の文字は三種類あります。日本人がそれを使い始めたのはいつ頃でしょう?
   漢字
      平仮名
      片仮名
      
Q4 万葉集という奈良時代にできた和歌集(最古の和歌集)は、こんな文字で書かれています。
   読めるかな?

①余 能 奈 可 波
②春 過 而
③見 鶴 鴨
④於 保 吉 民
⑤五 十 日 太
⑥二二
⑦十六
⑧二八十一
⑨牛鳴
⑩馬声
⑪蜂音
⑫神楽声         例 神楽声浪乃 四賀津之浦能 船乗尓 乗西意 常不所忘
⑬山上復有山     例  毎見 恋者雖益 色二山上復有山者 一可知美
このような文字の使い方を「        」といいます。

日本列島に定住した私たちの祖先(たぶん)が、長らく文字を持たない人々だったということは、考えようによっては大きな驚きですね。
伝達・伝承は、口承によるしかなかったわけで、明治に入るまでのアイヌ・ウタリの人々と同様、れっきとした無文字文化が続いてきたのですから。
近代に入るまで、無文字文化、口承文芸を伝えまもってきたアイヌ・ウタリの人々やウィルタなどの北方少数民族の文化もすごい、と思います。
ウィルタの文化は、①戦争(争い) を知らないこと,②階級(上下関係)を知らな いこと,③“私有”の概念を持たないこと,④ 文字を持たないこと(ウイルタ協会代表委員・弦巻宏史氏による)だそうです。

ウイルタ語辞典

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 北海道大学出版会
  • 発売日: 1997/03/25
  • メディア: 単行本

 

ゲンダーヌ―ある北方少数民族のドラマ

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  • 発売日: 2010/11/12
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アイヌ神謡集 (岩波文庫)

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1978/08/16
  • メディア: 文庫







エジプト、メソポタミア、インダス、黄河の各地に起こった古代文明において、文字の発明が、その発展を支えたことも疑いありません。その四大文明のうちで、現代に至るまで、今なお営々と発展を続けている中国文明=漢字文明は、なおのこと凄い。
人口だって、台湾や香港、マカオなどをのぞいても、13億6千万人と、群を抜いて世界一。それだけに、天安門事件から25周年の今日、長い歴史に恥じない、成熟した「オトナ」のクニになって欲しいと思わずにはいられません。
イヤ、もちろん、戦争ごっこが根っから大好きな「坊ちゃん政治家」が異常にはびこっている、どっかのクニの方がマシだとは言えませんがね。

ちなみに、冒頭のクイズの答えは、
Q3
   漢 字  奈良時代以前に中国から伝えられた。
      平仮名  平安時代に、漢字の崩し字をもとに作られた。
        (多く宮中の女房らに用いられた)
      片仮名  平安時代(以前)に、漢文訓読の補助記号として、漢字のヘン・ツクリの一部を用いて作られた。
        (多く僧侶や学者らに用いられた)
なお、漢字が「真名」であるのに対し、「仮名」は、「仮の文字」を意味した。

Q4
①よのなかは(世の中は)
②はるすぎて(春過ぎて)
③みつるかも(見つるかも)
④大王・大君(おほきみ)
⑤筏(いかだ)
⑥し     2×2=4
⑦しし    4×4=16
⑧憎く(にくく) 2+9×9(=81)
⑨む
⑩い
⑪ぶ
⑫ささ     
例 ささなみの志賀津(しがつ)の浦の船乗りに乗りにし心常に忘らえず
 解釈】ささなみの志賀の湊であの人は船に乗った。それを見送った私の心は、いつも忘れられないよ。   
⑬出(いづ)      
例 見るごとに 恋はまされど 色に出でば 人知りぬべみ

⑬の歌の蘊蓄を書き始めて、ふと、以前書いた同趣旨の私の記事がネット検索でヒットしました。お恥ずかしや、自分で書いたことさえ忘れていました。

ここにも書きましたが、「奈泥之故」の読み方は?
高校生に尋ねてみると、案外正解が出ます。
音読みで、ナ デイ シ コ=撫子(なでしこ)です。昨今、女子サッカーで一躍ブームです。


万葉集では、他にも「瞿麦」「奈弓之故」「石竹」「牛麦」などの表記が用いられています。

例【原表記】奈泥之故我 花見流其等尓 乎登女良我 恵末比能尓保比 於母保由流可母
 【読み】なでしこが花見るごとに娘子らが笑まひのにほひ思ほゆるかも
 【解釈】撫子の花を見るたびに、愛しい乙女のほほえみの美しく輝く様子が思われることだよ。
 【解説】越中国守であった家持が詠んだ歌とされます。「娘子(をとめ)」とは、奈良の都に残した妻の大伴坂上大嬢(おおとも の さかのうえ の おおいらつめ)のことだそうです。

次も、家持が同じ坂上大嬢に贈った歌です。
我がやどに、蒔(ま)きしなでしこ、いつしかも、花に咲きなむ、なそへつつ見む
【解釈】 私の庭に蒔(ま)いた撫子(なでしこ)は、いつになったら咲くでしょうか。(咲いたら)あなただと思って見ようと思っています。

大伴家持は撫子の花を愛し、歌にもよく詠んでいます。

家持が二〇歳を過ぎたばかりの頃、「亡妾」を傷んで一連の歌を詠んだうちの一つが次の歌です。
【原表記】秋去者 見乍思跡 妹之殖之 屋前乃石竹 開家流香聞
【読み】秋さらば、見つつ偲(しの)へと妹が植ゑしやどのなでしこ咲きにけるかも
【解釈】「秋になったなら、これを見て私を偲んでくださいね」と言って妻が植えた、家の撫子(なでしこ)が咲いたことだよ。

正妻以外の妻を「妾」とよびます。この「亡妾」が誰かは不確かですが、深い悲しみをもって哀悼しています。

ところで、前述のクイズ⑬の歌の作者 笠金村(かさのかなむら)の娘かとも言われる女性に、笠郎女(かさのいらつめ)がいました。万葉集でも屈指の女流歌人で、集には計29首が収められています。その歌は、いずれも、大伴家持に贈った歌だそうです。
そのひとつ。
【原表記】毎朝 吾見屋戸乃 瞿麦之 花尓毛君波 有許世奴香裳
【読み】朝ごとに見る我が屋戸の撫子が花にも君はありこせぬかも
【解釈】毎朝見るわが家の庭先のなでしこの花が、あなたであってくださらないかしらねえ。「ありこす」は、あつらえの意の助動詞。


家持への熱烈な贈答歌の一つ一つが、切々として胸を打ちますが、なぜか家持はすげない対応で、笠郎女の思いだけが空回りを続けた様子です。

次に紹介する郎女の歌は、片思いのやるせなさが高じて、苦い自嘲へと至る、きわどいバランスの歌です。
中島みゆきの恨み節に、通うところがありやなしや?

【原表記】  不相念 人乎思者 大寺之 餓鬼之後尓 額衝如
【読み】相思はぬ 人を思ふは 大寺の 餓鬼の後(しり)へに 額(ぬか)つくごとし
                                                                     

【解釈】
  私がこんなに思っているのに、私のことを思ってもくれない人を思うのは、大寺の餓鬼像のうしろから地に額づいて拝むようなものです。仏様の像ではなく餓鬼の像の、しかも正面からではなく後ろ姿を。なんという愚かしく、滑稽な我が身の姿でしょう。

今日の記事の主旨は、鉢植えのカワラナデシコが咲きました、というご報告です。ずっと昔、何かのイベントでプレゼントされた種から育った苗が、細々と毎年花を咲かせます。

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コメント 4

johncomeback

全く同感です。
中国は本来、大人(たいじん)の国ですよね(-_-;ウーン
by johncomeback (2014-06-04 20:44) 

kazg

johncomeback様
ありがとうございます。まさしく、まさしく。
by kazg (2014-06-04 22:23) 

森田惠子

せっかく手に入れた「河原撫子」が幼虫に根を食べられてしまって枯れてしまいました・・・。
うらやましいなぁ~! 可愛い花!

by 森田惠子 (2014-06-05 10:15) 

kazg

森田惠子様
大切に育てていると、弱ってしまったり、ほったらかしているとしぶとく花を咲かせたり、、、難しいものですね。
by kazg (2014-06-05 20:06) 

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