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迷い道辿りし果ての夏の川 [折々散歩]

明け方の夢に、聞き覚えのある声で「具合はどうですか?」と柔らかい関西イントネーションの呼びかけが聞こえました。
脳動脈瘤手術時の担当看護師のI嬢が、いつもの通りに、にこやかに長身をやや折りまげて病床の私をのぞき込んで、朝の健康チェックをしてくれているのです。
徹夜勤務明けの常で、色白の目もとに幽かに隈が見て取れて、痛々しさと申し訳なさがぬぐえませんが、溌剌とした挙措と細やかな心遣いのこもった表情は、いつも心地よい安心感を与えてくれます。
食事が喉を通ったこと、久しぶりに便通があったことなど、他愛のない報告を誇らしげに語る私に、「ヤッタあ」とか「ヨシ!」とか、軽く声を上げては、はじける笑顔を惜しみなく与えてくれたものでした。
今朝も、その笑顔見たさに、「快調、快調。きわめて元気です。」と、報告した私でしたが、夢はそのあたりで、はかなく醒めたのでした。
思えば、7年近くも前のことです。退院後も、通院の機会にタイミングが合えば挨拶を交わすことができましたが、やがてI嬢も病棟が変わって集中治療室担当へと異動になり、私の方も通院が半年に一度、今では一年に一度と間遠になり、「いのちの恩人」の一人である彼女に、長くお会いしていません。
なぜ、こんなとりとめのない夢を見たのでしょう?
きっかけの一つは、肺の手術からおよそ一年がたって、転移の有無の確認のために、今日MRIとCTの検査を予約していることが、かつての入院生活を連想させたもののようです。
それと、もう一つは、風と桶屋の関係さながらに迂遠な脈絡ですが、昨日百間川を歩いたことが関係しているかもしれません。特別の意図や目的を持った思い立ちではなく、全く成り行き任せの、行き当たりばったりの結果なのですが。
実は昨日は、運転免許の更新に、山あいにある運転免許センターまで出かけました。どうせここまできたなら、ちょっと足をのばして、(地理をご存じのかたなら、「ちょっと」ではなく「かなり」だとおっしゃるでしょうが)吉備中央町のブッポウソウ観察ポイントを訪ねてみました。
雛がかえり、親鳥が餌やりのために頻繁に巣の周辺を行き来しているとM師匠に教えていただきながら、なかなか見に行く機会がなかったからです。
昔、釣りに出かける前の夜、あれこれ仕掛けを準備したり、餌を選んだりで、アドレナリンを亢進させる楽しみがありました。それと同様に、前夜は、時間をかけてカメラとレンズを選び、予備電池も抜かりなく準備し、遠足前夜の園児さながらに、リュックを枕元において寝たのでした。
ところが観察スポットに私が到着した頃には、そこはシルバーカメラマン(カメラウーマンも)で一杯で、入り込む余地がありません。駐車場には県外ナンバーの車もちらほら見えます。
巣箱の中の様子は、観察カメラが装着してあって、モニター画像で観察できます。ヒナは、もう随分大きくなっているようです。目当ての親鳥は、しばらく前に飛び去ってから、姿を見せないとのこと。真夏日の暑さの中、しばらくたたずんでいましたが、あきらめて、別の観察ポイントをのぞいてみようと思いました。初めて行くスポットですが、M師匠から、丁寧に地図まで描いていただいていますので、これを頼りに行けば簡単!だったはずなのですが、途中分かれ道を間違えたことに気づきましたが、どこかで修正できるだろうとズンズンすすむと、ますます険しい山道に入り込んで行きます、結局道に迷ったまま、森林浴ドライブを楽しんむことになりました。
でも、これだけで帰るのも欲求不満が残るので、思いついて、別の対象を目ざして車を進めました。目的地や迷い道の詳しい経路は、人様に知られると非常に恥ずかしいので、秘匿させていただきますが、気づいたら、くねくねととんでもない細道に入り込んでしまっていました。川と谷と緑に囲まれた、車一台がやっと通り抜けられる、絶景と言えば絶景の小径を長々と走り、やがて鄙びた民家や建造物に挟まれた隘路を抜けて、やっとの思いで大通りに出ることができました。
そのスリリングなドライブの間、ラジオからは、参院予算委員会の中継がずっと流れており、いくつもの政党・党派、何人もの議員さんの質問が聞こえていました。
その印象の第一は、安倍さんのお達者なこと。前日の中継のときもそう思いましたが、よくも休みなく、滔々と同じ調子で答弁が続けられるものと感心するしかあません。声にもハリがあり、一点の曇りも気後れも感じさせない確信に満ちたおしゃべり。みごとです。
その安倍さんの自信たっぷりの答弁が、ひたすら「言い逃れ」に終始するようになったのはこの質問に対するやりとりでしたね。
都合の悪い指摘には、①正面から答えず、②下品な野次と、③恫喝的な高笑いで押し切って、「少数派」の声をかき消そうとするのが、この国のあいも変わらぬ政治風土らしい。都議会の「セクハラ」野次よりも、もっと不潔で忌まわしい品性ではないか、と思えてなりません。
しかも、事柄が事柄だけに、不誠実が際だちます。
「閣議決定」は、これまで長年、政府自身が「憲法上できない」としてきた、集団的自衛権(自国のみならず他国が攻撃された場合にも参戦する権利)の行使を「新三要件」を満たせば可能だというのです。そして、自衛隊の派遣先について、「戦闘地域に行かない」としてきた「歯止め」を外して、「戦闘現場」にまで拡大し、しかも「任務遂行」での武器使用まで容認するというのです。これほど大きく、一歩も二歩も踏み出した憲法解釈の改変を、これまでと大きくは変わらないと強弁し、しかも姑息なことに、「国民の生命、自由及び幸福追求の権利」を御旗に押し通そうとする安倍内閣の強靱な意思の源はどこにあるのでしょうか?
かつて、ハンナ・アーレントは、ユダヤ人虐殺に直接関与したチスドイツの官僚アドルフ・アイヒマンの裁判を傍聴し、彼が怪物的な悪の権化ではなく、思考の欠如した官僚であったことを衝撃的に暴き出しました。いわゆる「悪の陳腐さ」「凡庸な悪」の空恐ろしさをえぐり出したのです。紋切り型の決まり文句や官僚用語を繰り返すアイヒマンの言語能力の欠如は、考える能力、「誰か他の人の立場に立って考える能力」の欠如と結びついている、とアーレントは指摘しました。無思考の紋切り型の文句は、現実から身を守ることに役立った、と彼女は述べています。

さて安倍さんの饒舌は、果たして、考える能力=「誰か他の人の立場に立って考える能力」に立脚しているのでしょうか?心許ない限りです。
先日のこの記事で、地元山陽新聞が紹介していた内橋克人さんの言葉を引きました。
「戦争はある日ここからといって始まるのではない。いつしらず、せせらぎの流れのように始まる。」
私はふと思うのですが、戦争を始める人も、「ある日ここからといって始める」わけではなく、「いつしらず、せせらぎの流れのように」始めているのかもしれませんね。

その無自覚の故に、誰も責任を取らない!のではないでしょうか?
為政者が責任を取らなくとも、背負いきれない責任に懊悩する人々は、無数に存在します。
この記事に引用した高知の元教師竹本源治さんの慟哭を再録します。

戦死せる教え児よ
竹本源治

  逝いて還らぬ教え児よ
  私の手は血まみれだ
  君を縊ったその綱の
  端を私も持っていた
  しかも人の子の師の名において
  嗚呼!
  「お互いにだまされていた」の言訳が
  なんでできよう
  懺愧 悔恨 懺悔を重ねても
  それがなんの償いになろう
  逝った君はもう還らない
  今ぞ私は汚濁の手をすすぎ
  涙をはらって君の墓標に誓う
  「繰り返さぬぞ絶対に!」



ふたたびこんな懊悩を抱える人を生み出すことがあってはならないでしょう。



話がそれました。百間川とI嬢の夢との関係についてでした。
百間川は、旭川の氾濫から岡山城下を守るため、江戸時代初期に岡山藩主池田光政の命により、岡山藩郡代の津田永忠が中心となって設計・築造した人工河川です。「二の荒手」(中島竹田橋直下流)の幅が堤防を含め百間(約180m)あったことから名付けられました。
百間川には、国指定天然記念物アユモドキをはじめ、多くの動植物が生息しています。また、中流域の河川敷からは、弥生時代・古墳時代の竪穴住居から、中世(鎌倉・室町時代=12世紀末~16世紀中頃)の橋の基礎部分や脚橋など、「百間川遺跡」と呼ばれる遺跡が発掘されています。
ところで、漱石の弟子に内田百間(ひゃっけん)という人がいます。岡山市生まれの小説家、随筆家で、 陸軍士官学校ドイツ語学教授、海軍機関学校ドイツ語学兼務教官、陸軍砲工学校教、陸軍士官学校教授、法政大教授などを歴任しています。
号の「百間は、「百閒」とも書き、故郷を流れる百間川から名付けました。別号の「百鬼園(ヒャッキエン)」は、百間を生涯「借金」の語呂合わせとする説もあるそうですが、ヒャッケンの岡山弁なまりというのが、妥当なところでしょうか?
さてこの内田百閒をモデルにした映画に、黒澤明の「まあだだよ」があります。
お迎えが来ても「まあだだよ」と言ってお帰り願うというのです。入院中、私はこの「まあだだよ」を何度も口ずさんだことでした。
そのあたりのことは、過去のこの記事でものべました。
http://kazsan.blog.so-net.ne.jp/2013-12-18
その内田百閒が愛した百間川に、どういう訳か行き着いてしまったので(地理をご存じの方は、あきれておられることでしょう)ちょっと散歩したのです。

シオカラトンボ

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 イトトンボ
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 トノサマバッタ
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 ニゴイ。子どもの頃はイダゴイと呼んでいました。カマツカの近縁種だそうで、地方によって、ミノ(青森県)、セータ(関東地方)、アラメ(長野県)、マジカ(滋賀県、京都府)、キツネゴイ(大阪府)、ヒバチゴイ(奈良県)、イダゴイ(岡山県)などの呼び名があるそうです。

 
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ミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)
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ヌートリア
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ジャノメチョウ
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ウシガエル
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鉄橋の上を新幹線が走ります。

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 夏の橋
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johncomeback

記事の冒頭を拝読して、入院されたかと驚きました(^^)ニコ
by johncomeback (2014-07-16 22:33) 

kazg

johncomeback様
人騒がせなことで、申し訳ありませんでした。
ご心配いただきありがとうございます。
体はいたって元気です。間が抜けたドジは、かぞえきれませんが、、(笑)、
by kazg (2014-07-17 05:05) 

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