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棄てかねしフォルダにあまたのファイルあり ふるき切なき恋文のごと [文学雑話]

昔(二〇世紀です)、夜間定時制高校に務めていた頃、4年生(最上級学年)で出題したテスト問題を、ファイル庫から見つけました。18歳もいれば、成人もいる多彩な顔ぶれでした。定型詩の調べは、彼らの胸に響くようでした。
相当昔のこと故、個人情報とか、「学習指導要領」との整合性などなど、ややこしいことは、もう「時効」でしょうし、なにか特段の差し障りはないものと思い、紹介することにします。

  次のA~Fの短歌を読んで後の問に答えなさい。

A 髪五尺ときなば水にやはらかき少女ごころは秘めて放たじ        1   

B 夕焼空焦げきはまれる下にして氷らんとする湖の静けさ       島木 赤彦

C 友がみなわれよりえらく見ゆる日よ                                
  花を買ひ来て
  妻としたしむ                                                                  2  
                         
D 「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ    俵  万智
                                               
E 牛飼ひが歌咏む時に世の中のあらたしき歌大いにおこる       伊藤 左千夫

F おりたちて今朝の寒さを驚きぬ露しとしとと柿の落ち葉深く      長塚  節

問一  空白部 1   2  に作者名を漢字で入れなさい。
問二 ア次の説明文は、のどの歌の作者についての説明文ですか。解答欄に、記号で答えなさい。
      イ空白部  ~  にあてはまる語句を、後のア~オから選んで番号で答えなさい。
 
(1)
初め政治家を志し、明治法律学校に入学したが、眼病のため中退し、やがて牛乳搾取(さくしゅ)業を始めた。この頃から和歌を志していたが、明治33年正岡
子規(まさおかしき)の「歌よみに与ふる書」に感動して初めて子規を訪ね、門人となった。子規の写生的詠法を発展させ、短歌の本質は「叫び」、すなわち全
精神を傾けた忘我(ぼうが)の表現にあると主張。主情的な中に荘重味(そうちょうみ)のある歌風を示した。歌誌「馬酔(あしび)木」、その後「」を主宰
(しゅさい)し、斉藤茂吉、島木赤彦らを育てる一方、小説も著(あらわ)した。
        
(2)明治31年に正岡子規の「歌よみに与ふる書」を読んで傾倒(けいとう)し、子規の教えを受けた。子規没後、伊藤左千夫らと「馬酔木」を創刊、「」にも参加し、短歌や歌論を発表したが、彼は左千夫とは対照的に「冴(さ)え」を主張し、清澄(せいちょう)な自然観照(しぜんかんしょう)が歌風である。純粋な客観写生を重んじた多くの短歌作品
のほか、長編小説「土」などがある。
        
(3)昭和三七年生まれ。大学二年生で歌誌「心の花」に参加。第一歌集「サラダ記念日」は青春の感覚と新しい愛・風俗を大胆な口語的発想で表現し、空前のベストセラーとなった。
        
(4)長野県で教師をしながら写実的な歌を作り、雑誌に詩を発表したりしていた。歌誌「馬酔木」「」に参加し、伊藤左千夫の指導を受けた。左千夫の死後は上京し「」を編集した。諏訪(すわ)湖をはじめ、彼が終生(しゅうせい)愛した故郷=長野県の自然に題材をとった写生の歌も多い。彼は、内面描写(ないめんびょうしゃ)を写生の中核とし、東洋的な清澄美を重んじた。 
        
(5)大阪堺(さかい)の商人の家に生まれ、少女時代から古典、特に源氏物語を読みふけり、雑誌「文学界」などを通じて文学に触れた。鉄幹と出会い、激しい恋に落ちた末、実家の反対を押し切って、彼のもとに走る。大胆、奔放(ほんぽう)に恋愛を賛美し、人間の本性を肯定(こうてい)した自我解放の喜びを歌い上げることによって、近代歌壇に強烈な影響を与えた第一歌集「みだれ髪」は、この頃発刊されたものである。夫鉄幹とともに雑誌「」の中心として活躍した彼女は、豊富な語彙(ごい)や比喩(ひゆ)を用いた巧
みな技巧と、流れるような美しい調べによって浪漫的(ろうまんてき)な心情をうたい上げ、唯美的立場から古い封建道徳や因習(いんしゅう)に対抗した。日
露戦争出征中の弟の無事を祈念した長詩「」は、国を挙げての戦争遂行気運のなか、率直な人間的真情から非戦を歌い、非難・共感の論争を呼んだ。
        
(6)本名は一(はじめ)。岩手県に生まれる。岩手県日戸村の曹洞宗常光寺の住職の子として生まれる。父が渋民村(しぶたみむら)の宝徳寺に転じたので、彼もこ
こで成長し、渋民小学校を経て盛岡中学校に入学。在学中、上級生のⅣ  らに刺激され雑誌「Ⅱ」に傾倒(けいとう)、詩歌を志す。一六歳の秋中途退学して上京するが、病で帰郷。渋民小学校の代用教員をしながら小説「雲は天才である」などを書くが、免職(めんしょく)となり、北海道に渡る。函館、小樽、釧路などを転々とした後上京、小説などを書くが成功せず、朝日新聞社の校正係となる。生活苦・結核の進行などの現実の中で、初期の浪漫的傾向から、実生活の感情を日常語で歌う生活派へと変貌した。第一歌集「Ⅴ」は、上京以後の短歌551首を収録。自然や季節の描写といった、それまでの短歌形式から離れ、故郷の渋民村や北海道生活の感傷的回顧、窮乏生活の哀感、時代への批判意識など、生活に即した実感が三行分かち書きという新形式によって表現されている。死後に出版された第二歌集「悲しき玩具(がんぐ)」は、貧困と病苦、生後間もない愛児の急逝(きゅうせい)、重苦しさを深める時代・社会状況など、深刻な現実を見据えながら、「新しい明日」の到来を願う思いを歌った。彼の歌は、そ
の平明さと切実さによって広く親しまれ、今も愛唱されている。

    【語句】

①平凡  ②明星  ③アララギ  ④奥の細道  ⑤君死にたまふことなかれ     ②失楽園  ⑦羅生門  ⑧一握の砂  ⑨金田一一 ⑩金田一耕助    ⑪金田一京助  ⑫金田正一  ⑬金田正太郎  ⑭明智小五郎  
                                          
問三 次の鑑賞文はA~Fのどの歌についてのものか、記号で答えなさい。
   ア 音のない色彩の動と静を対照させて、まるで印象派の絵を見るような一首。
   イ 自負心とはうらはらの羨望と悲哀を感じる日の一ときのなぐさみと安らぎの歌。
   ウ 女性賛美、青春の純潔性を誇示したもので、大胆率直な自己陶酔の歌。

問四 次の歌は、それぞれA~Fのどの歌の作者の作品か。記号で答えなさい。
   ア その子二十(はたち)櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな
          やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君
          清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢ふ人みなうつくしき
      イ 東海の小島の磯の白砂にわれ泣き濡れて蟹とたはむる
          たはむれに母を背負ひてそのあまり軽きに泣きて三歩あゆまず
          己(おの)が名をほのかに呼びて 涙せし 十四の春にかへる術(すべ)なし
          はたらけど はたらけど猶(なお)わが生活(くらし)楽(らく)にならざり ぢっと手を見る
          わが抱(いだ)く思想はすべて 金なきに因(いん)するごとし 秋の風吹く
          真白なる大根の根の肥ゆる頃 うまれて やがて死にし児のあり
          かなしくも 夜明くるまでは残りゐぬ 息きれし児の肌のぬくもり
          猫を飼はば、 その猫がまた争ひの種となるらむ。 かなしきわが家。
          子を叱る、あはれ、この心よ。熱高き日の癖とのみ 妻よ、思ふな。
          その親にも 親の親にも似るなかれ-- かく汝(な)が父は思へるぞ、子よ。
          児を叱れば、泣いて、寝入りぬ。口少しあけし寝顔にさはりてみるかな。
          ひとところ、畳を見つめてありし間の その思ひを、 妻よ、語れといふか。
           呼吸(いき)すれば、胸の中にて鳴る音あり。凩(こがらし)よりもさびしきその音!
          病院に来て、 妻や子をいつくしむ まことの我にかへりけるかな。
          新しき明日の来るを信ずといふ 自分の言葉に 嘘はなけれど-
   ウ  「また電話しろよ」「まっていろ」いつもいつも命令形で愛を言う君
        今日までに私がついた嘘なんてどうでもいいよというような海
        「嫁さんになれよ」だなんてカンチューハイ二本で言ってしまっていいの
         ぎこちない父との会話 茶柱が立てばしばらく茶柱のこと
        男とはふいに煙草をとりだして火をつけるものこういうときに
        「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

  あなたの好きな短歌を一首書き、鑑賞文を書きなさい。なお、その際、右の問題文中の短歌、及び次の参考資料の中から引用してもよろしい。また、「好きな」短歌がない場合も、いずれかの歌についての鑑賞文を書くこと。
   【正岡子規】
くれなゐの二尺伸びたる薔薇(ばら)の芽の針やはらかに春雨のふる
   【斉藤茂吉】
みちのくの母のいのちを一目見ん一目見んとぞただにいそげる
しんしんと雪ふるなかにたたずめる馬の眼(まなこ)はまたたきにけり
あかあかと一本の道とほりたりたまきはる我が命なりけり
   【佐々木信綱】
ゆく秋の大和の国の薬師寺(やくしじ)の塔の上なる一ひらの雲
牛かひて庭鳥かひて諸共(もろとも)にわれも住まばや君が山里
   【木下利玄】
街をゆき子供の傍(そば)を通る時蜜柑(みかん)の香(か)せり冬がまた来る
牡丹花(ぼたんか)は咲き定まりて静かなり花の占めたる位置のたしかさ
   【前川佐美雄】
胸のうちいちど空にしてあの青き水仙の葉をつめこみてみたし
あたたかい日ざしを浴びて見てをれば何んといふ重い春の植物
   【北原白秋】
昼ながら幽(かす)かに光る蛍(ほたる)一つ孟宗(もうそう)の藪(やぶ)を出でて消えたり
春昼のあめふりこぼす薄ら雲ややありて明る牡丹の花びら
   【若山牧水】
白鳥(しらとり)は哀(かな)しからずや空の青海のあをにも染(そ)まずただよふ
幾山河(いくやまかわ)越えさり行かば寂しさの終(は)てなむ国ぞ今日も旅ゆく
   【近藤芳美】
傍観を良心として生きし日々青春と呼ぶときもなかりき
いつの間に夜の省線にはられたる軍のガリ版を青年が剥ぐ
   【栗木京子】
観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日(ひとひ)我には一生(ひとよ)
春浅き大堰の水にこぎ出だし三人称にて未来を語る
卵白を泡立てること上手くなり結婚の日は具体となりゆく
   【松平盟子】
君の髪に十指差し込み引き寄せる時雨の音の束のごときを
ただ一度我が名を呼べよ奪はるるもっとも浄きものと思へば
   【河野裕子】
青林檎与へしことを唯一の積極として別れ来にけり
たとへば君 ガサッと落葉すくふやうに私をさらって行ってはくれぬか
我が頬を打ちたるのちにわらわらとなきたきごとき表情をせり
夕闇の桜花の記憶と重なりてはじめて聴きし君が血の音
君を打ち子を打ち灼けるごとき掌よざんざんばらんと髪とき眠る
子がわれかわれが子なのかわからぬまで子を抱き湯に入り子を抱き眠る
しらかみに大き楕円を描きし子は楕円に入りてひとり遊びす
   【小池光】
アパートの隣は越して漬物石一つ残しぬたたみの上に
遮断機のあがりて犬も歩きだすなにごともなし春のゆふぐれ
こずゑまで電飾されて街路樹あり人のいとなみは木を眠らせぬ
   【佐々木幸綱】
なめらかな肌だったけ若草の妻と決めてたかもしれぬ掌(て)は
泣くおまえ抱けば髪に降る雪のこんこんとわが腕(かいな)に眠れ
俺らしくもないなないなとポストまで小さき息子を片手に抱いて
父として幼きものは見上げ居りねがわくは金色(こんじき)の獅子とうつれよ

解答はまたの機会に、気が向きましたらアップすることにしたいと思います。

 今日のオマケ。「ゆとり」時代の反動からか、孫たちの夏休みは、宿題が豊富です。

「計画を立てることが苦手」(本人談)で、マンガ三昧(マンガは我が家の3人の子が残していった本棚に、どっさりあります。)で時間が過ぎる小5の孫が、今日も我が家にやってきて、今日はドリルの他に、家庭科の宿題を片付けることにしました。調理の実習です。
パスタに挑戦。アシスタントは私。
いただきもののズッキーニを切ります。あと、ニンニク、タマネギ、なすび、をいっしょに炒めます。

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スパゲッティをゆでて、秘伝の味付けでできあがり。

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 結構美味しくいただきました。

 


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