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ゆるるかに滴る雨や風信子 [今日の暦]

今日は「風信子忌」。
雑誌『四季』(第二次)に拠った詩人立原道造の忌日で、「ヒヤシンス忌」と読むそうです。

立原道造の生涯は、1914年(大正3年) - 1939年(昭和14年)のわずか24年間。この間、抒情豊かな詩作品を多数残すとともに、「ぼくの半身は詩を考へ、もうひとつの半身は建築を夢見る」 (1971 ユリイカ所収「立原道造の建築」生田勉)とみずから書いているとおり、若き建築家としても活躍しました。その彼が、自らの週末住宅として別所沼湖畔に建築を夢見ていたのが「ヒアシンスハウス(風信子荘))だったことから、その命日が「風信子忌」と名づけられたとの由。

以下のサイトを参照させて戴きました。

「立原道造記念館」

「軽井沢高原文庫」

詩人の夢の継承事業 「ヒアシンスハウス」

こんなことを書きながら、ふと自分の過去記事を検索しておりますと、なんと昨年の今日の記事(「亡き友を偲ぶ会あり燕来る」を、同じく立原道造ネタで書いておりました。とんだオソマツ(汗)。

ほかにもこんな記事で、立原道造に触れています。

「風よお前は」

「風立つや寂しき村の水引草  パクリでしょう」

今朝の散歩で、路傍のヒヤシンスが雨に濡れていました。



春雨に濡れるヒヤシンスの花 posted by (C)kazg

春雨に濡れるヒヤシンスの花

春雨に濡れるヒヤシンスの花 posted by (C)kazg

春雨に濡れるヒヤシンスの花

春雨に濡れるヒヤシンスの花 posted by (C)kazg

立原道造が拠った雑誌『四季』(第2次)は1934-1935年(昭和9-10年)の間、第13号まで発行されました。
高校生向けの文学史の記述では、この前後の詩の流れが、おおよそこんな風に概説さます。

「詩と詩論」  
一九二八年(昭和三)、雑誌「詩と詩論」が発刊、芸術派の詩人たちが、詩の純粋性を取り返し、主知的な詩法を実践するために結集した。
『三半規管喪失』の北川冬彦(一九〇〇─一九九〇)、『軍艦茉莉』の安西冬衛(一八九八─一九六五)、『月の出る町』の春山行夫(一九〇二─一九九四)、『測量船』の三好達治、『若いコロニイ』の北園克衛(一九〇二─一九七八)、『黄蜂と花粉』の竹中郁(一九〇四─一九八二)、『体操詩集』の村野四 郎、『帆・ランプ・穰』の丸山薫(一八九九─一九七四)、『Ambarvalia』の西脇順三郎(一八九四─一九八二)など、その後の昭和詩形成の基幹をなす人々であった。
「四季」派
 「詩と詩論」で新しい詩の洗礼を受けた人たちは、各自の個性に従って進路を決めていった。三好達治らは雑誌「四季」(一九三三年創刊)によって、主知派やプロレタリア派から離れた、新しい叙情派を結成した。『山羊の歌』の中原中也、『萱草に寄す』の立原道造らがいる。
 「四季」よりやや硬質な叙情詩をめざした雑誌に「コギト」(一九三二年刊)があり、『わがひとに与ふる哀歌』の伊東静雄(一九〇六─一九五三)らがいた。
「歴程」派  
詩誌「歴程」(一九三五年創刊)は一党一派に片寄らず、詩そのものの創造をめざして、各人の個性を伸ばそうとするものであった。『第百階級』の草野心平を中心として、『鮫』の金子光晴など多様な詩人が集まった。
(第一学習社版『新訂総合国語便覧』より)


『四季』(第2次)は、三好達治・丸山薫・堀辰雄の3名の編集とされていますが、実質の編集は、「風立ちぬ」で知られる小説家、堀辰雄が中心だったようです。
同誌各号には、拾い上げただけでも、堀辰雄、室生犀星、佐藤春夫、三好達治、桑原武夫、津村信夫、丸山薫、宮澤賢治(追悼)、堀口大学、萩原朔太郎、斎藤茂吉、中原中也らの顔ぶれが並んでいます。

私のブログタイトルは、決してこの雑誌名にちなんだわけではありませんが、少年の頃に愛読した詩人・作家の名前を『四季』誌中に多く見いだし、感慨を覚えます。
編集の中心であったという堀辰雄に関して、私は以前、 この記事でも触れました。
その堀辰雄を、立原道造が深く敬愛していた様子を、室生犀星は、『我が愛する詩人の伝記』の中でこう書いています。

彼はいつも軽井沢の私の家に先き廻りして、追分から出て来ると、次ぎの列車で堀さんも今日は出て来るといい、それがその日の一等愉しい事であるらしかった。
列車が着く時間になると、表の通りに出て行ってもうそろそろ来る時分だが、お客でもあったのかと独り言をいい、落ち着かずそわそわしていた。そうして堀の姿が丘の上に現れると、嬉しそうに、来た、来た、と言って私に知らせる時なぞ、まれに見る子供っぽい友情のこまやかさがあった。そして堀と私とが話をしていても何も言わずに、邪魔をしないで一人遊びするように、娘なんぞと遊んでいた。
そんな日の帰りには堀の買い物を持ってやり、一緒に追分村に夕方には連れ立って帰って行った。絶対に堀を好いていた彼は、堀辰雄のまわりを生涯をこめてうろうろと、うろ付くことに心の張りを感じていたらしかった。

ここで、「娘なんぞと遊んでいた。」とあるのは、犀星の作品「杏っ子」のモデルでもある長女室生朝子さんの事でしょう。

室生朝子さんは、立原道造の名前を音読みして「ドウゾウさん」と呼んで親しんでいたそうで、のちにこんな文章を残しておられます。 

ある夏休み、ドウゾウさんは大森馬込区の家を留守番してくれたことがあった。私は大事なビーズのブローチを、鏡の引き出しにおき忘れて来たことを、軽井沢に着いてから気がついた。マッチ箱よりやや小さい、紺地に燕脂の花が浮き出している、ビーズのブローチである。このブローチはなくなりもせず、今でも私の少女の頃の唯一の思い出として、小引出しの綿の中に沈んでいる。浅間山の絵葉書に、ブローチを送ってほしいと、ドウゾウさんに書いて送った。
四、五日して私宛の小さい小包を、父は目の前で開けなさいと言った。何故ドウゾウさんから私に小包が届いたか、父はわからないのである。几帳面に紐でゆわかれている小包をほどく私の手元を見る父の顔は、少々こわい表情であった。見馴れているブローチひとつだけが出てきたので、父は機嫌が悪かった。
「小包を作る手間がどれほど煩わしいかということも考えずに、君は勝手にドウゾウ君に小包を頼んだことは、よくないことだ、早速お礼の返事を出しておきなさい。」
 と言った。
私はドウゾウさんのおかげで、ひと夏中ブローチを胸に飾り、得意であった。

室生犀星については,以前 この記事「春露にしたたりやまぬ日の光」などで触れたことがありましたし、 この記事「お名前は? お玉?お筆?八重?杏?」は、室生朝子さんを話題にしました。

また、三好達治を話題にした この記事「達治忌やわが身の影は雨に濡れ」で、犀星の詩に触れたこともありました。

ところで、岡山市後楽園にある標準木の観察によって、昨日開花宣言が発表されたようです。
私の居住地近辺では、 3月14日付のこの記事付で、ソメイヨシノのフライング開花かと書いたのは早とちりでした。この木の現在の状態はこんな様子です。花弁を残しているのは数輪にすぎませんが、咲き終えた花弁も散りきらずに、色あせた姿で枝に残っています。これはソメイヨシノではないですね。

 

ソメイヨシノの開花について、昨年の春こんな記事を書いています。
3月27日付「さくらの日」 3月28日付「西行の碑を抱くかに咲き初めし」 4月9日付「春の日や花鳥虫も雀躍す」
昨日の朝散歩で、桜並木のソメイヨシノの蕾が、ちらほらほころび始めているのに気づきました。


開花し始めたソメイヨシノの花 posted by (C)kazg

 



ソメイヨシノのつぼみ posted by (C)kazg

 



開花し始めたソメイヨシノの花 posted by (C)kazg

 

 

路傍の花も、春の装いです。

 



路傍のラッパ水仙 posted by (C)kazg

 


 

オウバイの花 posted by (C)kazg

 


オウバイの花 posted by (C)kazg

 

 

 


ハナニラ posted by (C)kazg

路傍のカラスノエンドウ

路傍のカラスノエンドウ posted by (C)kazg

 



路傍のピンクの辛夷の花 posted by (C)kazg

 



路傍のピンクの辛夷の花 posted by (C)kazg

 



孫たちは、昨日はほぼ一日、パパ・ママと行動を共にしたようですが、夕方、じじ・ばばを訪ねてきました。土曜日は、近所のスーパーがアイスの半額セール日ですので、みんなで歩いてアイスを買いに行き、桜の木の下で食べました。
ちょうど、 3月28日付「西行の碑を抱くかに咲き初めし」の記事で書いた場所です。
あいにくカメラを持っていませんでしたので、写真は残せませんでしたが、やはりこの場所が、付近では一番開花状態が進んでいるようです。
一足早い花見を楽しみ、上機嫌の子ども達は、近所の土手で芝滑りに興じました。



今朝は、予報通り、雨が降り始めていましたが、傘を差して、この場所の桜の様子を見に行ってきました。
今朝の桜の状態は、こんな具合です。

 

開花し始めたソメイヨシノの花

開花し始めたソメイヨシノの花 posted by (C)kazg



開花し始めたソメイヨシノの花 posted by (C)kazg

 



開花し始めたソメイヨシノの花 posted by (C)kazg
開花し始めたソメイヨシノの花


 




開花し始めたソメイヨシノの花

開花し始めたソメイヨシノの花


一番下の3枚が、修理から帰ったfinpix s1の画像です。





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コメント 4

johncomeback

拙ブログへのコメントありがとうございます。
機材は充実してきましたが、腕が伴っていません(*´∇`*)
by johncomeback (2015-03-29 20:10) 

kazg

johncomeback様
ますます機材を駆使され、腕前を発揮されますことを期待しております。(うらやましい)。
by kazg (2015-03-29 20:36) 

まるメガネ

ご訪問 & nice ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
by まるメガネ (2015-03-31 09:35) 

kazg

まるメガネ様
こちらこそ、よろしくお願いします。
by kazg (2015-03-31 13:15) 

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