SSブログ
<

巴の姿しばしとどめむ、の巻 [雑話]

先日のこの記事で、木曾殿(源義仲)の最期の場面を話題にしました。
源義仲は、源頼朝の従弟にあたり、幼時、父・義賢が甥の源義平(悪源太)に殺されたあと、乳母(めのと)の夫である中原兼遠により、木曾の山中にかくまわれ成長したと伝えられます。
治承四年(1180)、後白河天皇の第三皇子である以仁王の令旨により、平家追討の挙兵をし、北陸道を経て真っ先に入京します。
その功績をたたえて、後白河法皇は、義仲に「朝日将軍」の称号を与えますが、次第に、軋轢が生じてきます、田舎者丸出しの粗暴な振る舞いが京の公家達の反感を買ったうえ、皇位継承問題にも口を出すなどに立腹した後白河法皇は、義仲平家追討の院宣与えて都から遠ざけ、一方で、密かに鎌倉の源頼朝に義仲追討を命じます。
寿永三年(1184)、義仲は、頼朝が派遣した源範頼・義経の軍勢に追われ、悲劇的な負けいくさの末、粟津の松原(滋賀県大津市)で最期を遂げました。それに先立つワンシーンに、こんなくだりがあります。
〔原文〕 


木曾三百余騎、六千余騎が中を、縦様・横様・蜘蛛手・十文字に駆け割つて、後ろへつつと出でたれば、五十騎ばかりになりにけり。そこを破つて行くほどに、
土肥次郎実平二千余騎でささへたり。それをも破つて行くほどに、あそこでは四、五百騎、ここでは二、三百騎、百四、五十騎、百騎ばかりが中を、駆け割り駆
け割り行くほどに、主従五騎にぞなりにける。五騎がうちまで巴は討たれざりけり。
〔テキトー解釈〕
木曾義仲が率いる300騎余りの軍勢は、義経方の軍勢6000騎余りの中を、縦横無尽に馬を疾走させながら奮戦し、敵の大集団の背部へツッっと走り出た時には、目減りして50騎ほどになってしまっていた。


さらにそこを討ち破って行くうちに、土肥次郎実平の軍勢が2000騎余りで応戦してきた。それも討ち破っていくうちに、あちらでは4、500騎、こちらで
は2、300騎、また、140~150騎、100騎という敵部隊の塊の中を、馬を勢いよく疾走させ、敵を掻き分け掻きて分け進んでいくうちに、ついには、
主人と従者合わせて5騎になってしまった。
その5騎のうちまで巴は討ち取られることはなかった。

名場面の一つです。
巴は、一般に「巴御前」とも呼ばれ、義仲の妻とされることも多いですが、「平家物語」ではこう紹介されています。
 木曾殿は信濃より、巴・山吹とて、二人の便女を具せられたり。山吹はいたはりあって、都にとどまりぬ。中にも巴は色白く髪長く、容顔まことに優れたり。強弓精兵、一人当千の兵者(つわもの)なり」(ウキペディアより引用)
「便女」とは、「びんじょ」と読み、辞書にはこう説明してあります。
 びんじょ[美女・便女]
■「 美女(びじよ) 」に同じ。 「つぼねの中に,まことに気高き-一人おはします/御伽草子・厳島縁起」
■〔多く美人を用いたところから。「便女」は当て字〕 召し使いの女。 「文持たる-がまゐて,五条大納言どのへとてさしあげたり/平家


「美しい召使いの女」というほどの意味でしょう。巴の素性については定かではありませんが、一説によると、中原兼遠の娘とも、あるいは兼遠の次男である樋口(中原)兼光の娘とも言われます。ちなみに、義仲と最期をともにした今井四郎兼平は、樋口(中原)兼光の弟に当たりますから、巴はその妹、もしくは姪ということになります。いずれにしても、義仲とは子どもの時から、兄妹同様に育った間柄と考えられます。
武芸に秀で、そのエピソードは、感嘆を交えて様々に語られています。
物語の続きはまた回を改めて話題にすることとして、今日ご紹介するのは、こちらの「トモエ」殿。


深山公園のトモエガモです。







これがホントの三つどもえ。


先週、二度ほど撮影しましたが、暗くてぶれたり、露出やホワイトバランスに失敗したりで、お見せするには不適な写真ですが、証拠写真として掲載しておきます。
今日のタイトルは、 僧正遍昭の歌のパクリです。
天つ風雲の通ひ路吹きとぢよ 乙女の姿しばしとどめむ
僧正遍昭
〔歌意〕
天を吹く風よ、天女たちが帰っていく雲の中の通り道を吹き閉ざしておくれ。乙女たちの美しい舞姿を、もうしばらくこの目にとどめておきたいのだ。  

この冬最大の冷え込みをもたらした寒風は、優美なトモエガモの舞姿を、しばしとどめてくれるでしょうか。
今日はここまでです。

 


追伸 緊急訂正

 

上で紹介したカモの写真は。「トモエガモ」ではなくて、「ヨシガモ」でした。M師が教えてくださいました。訂正してお詫びいたします。次回の記事は、「ヨシガモ」をネタにしたいと思います。

 

 

 


nice!(32)  コメント(0)  トラックバック(1) 

nice! 32

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

フォト蔵にアップしている私の写真はこちらです。

写真販売サイトにも画像を掲載しています。
写真素材 PIXTA