道の辺に思ひ思ひや思ひ草 [折々散歩]
2000人収容できるという会場ですが、一階スペースは満席、二階もほとんど満席、混雑を避けて私の座った三階も、空席は数えるほどでした。
直接挨拶できた方、遠目に確認できた方、などなど、嬉しく心強い出会いのひとときでもありました。
熱気あふれる、新鮮な演説会でした。民進党県総支部連合、社民党県連、津山市長、奈義町長など、多彩な方々からのメッセージ。登壇して挨拶された「おかやまいっぽん(安保法制の廃止と立憲主義の回復をもとめるおかやまいっぽんの会)」共同代表大坂さん、岡山弁護士会前会長の吉岡さんも、それぞれの切実な思いを発言。アベ政治の暴走に、居ても立ってもいられない「普通の市民」の思いが、全国三十二の選挙区で野党共闘を実現したのだと、改めて腑に落ちました。
野党共闘の実現により、選挙区予定候補者を辞して比例区に移ることになった共産党予定候補植本かんじさん。お子さんがこの春高校生になって、戦争と平和の問題がより切実に感じるようになったそう。定年退職された元自衛官の方が「日本が攻撃されたら命をはって国を守るつもりだったが、戦争法は米軍を守るもの。若者を米軍の戦争に送る訳にはいかない」と、今日の演説会にも参加されている、と。
続いて登壇の黒石健太郎野党統一候補(民進公認)は、まず「植本さんの思いをしっかり受け、2人分以上の奮闘をしたい」と決意を披瀝。学生時代に憲法を学んだ長谷部教授はじめ大多数の憲法学者が違憲と指摘する中、それを押し切って施行された安保法制=戦争法を許さないときっぱり。会場近くの商店街にあった生家は、戦争中B29による爆撃(岡山空襲)で一帯が焼け野原になり、親族も大きな被害を受けた経験から、二度と悲惨な戦争をしてはいけない、安保法制=戦争法は日本にあってはならないと強調します。
同じく比例区で、中国四国地方を中心に活動する春名なおあき元衆院議員。春名さんについては、以前こんな記事で触れたことがありました。
きょうもまた散歩せざるの記
「るみおばあちゃん」のうどん 続報、の巻
そこにこんな事を書きました。
ところで、本題とはなんの関係もない余談ですが、春名なおあきさんは、高校、大学ともに私にとっては後輩に当たります。年齢差もあって、リアルタイムで面識があるわけではありませんが、縁は感じますから、活躍に注目しています。 |
最後に共産党市田副委員長が登壇。初めからおわりまで、文字に起こしてご紹介したいおもしろさでしたが、メモもとらずに聞き流しましたので、記憶にとどまっている断片だけを備忘的に記しておくことにします。
・野党共闘を「民共合作」と揶揄する向きもあるが、中野晃一上智大学教授も指摘するとおり、「民共合作」とは過去の中国大陸における「国共合作」を参考にした表現。そう呼んだのは誰か、『大日本帝国』だ。やはり、大日本帝国を再興させたいと思っているから民共合作が怖いんだ。もう1つ、国共合作は大日本帝国の侵略をはねのけて追い出した!負けると自覚しているわけだ。
・「野合」というが、自公と補完勢力こそ野合。野党共闘は国家権力の暴 走を止める方向性では一致している。
・今度の選挙は「自公対民共」ではなく「自民とその補完勢力対4野党対プラス広範な市民・国民」の対決。
・「野党は共闘」の市民・国民の声に応えて、清水の舞台から飛び降りる覚悟で決断した。私も穀田国対委員長も京都出身で、「清水から飛び降りて死んだ人はない」と言ってきた。後で聞くと、死んだ人が4人あったらしい(笑い)。自己変革が求められるが、共同の力で政治を変える。
・アベノミクスの破綻は明白。1税金の集め方、2税金の使い方、3労働者の働き方の「3つのチェンジ」で格差をただし、経済にデモクラシーを貫くのが対案。
・消費税10パーセントは延期ではなく中止。税金は能力に応じて納める原則に転換し、大企業や富裕層に必要な負担を求める。「富裕層」と聞いて心配される向きもあろうが、ここにおられる皆さんは含まれない(笑)。たとえば、ユニクロ社長の年収、数字を見ただけではイメージしにくいが、1時間あたりに換算すると6000万円。6000円ではない。時給6000円でも夢のようだが、桁が違う。アベノミクスで恩恵を被っているこのような一握りの高額所得者や、不当に減免税されている大企業から応分の税金をいただく。
・めざすのは、国民が栄えて、大企業もそこそこ設ける社会。
・書記局長時代、一度も勝利の記者会見をしたことがない(笑)。厳しい時代も正しいと信じる道を貫いたが、今は、がんばれば勝てるチャンス。今がんばらなければいつやるか、と言っていたら、断れなくなった。ここで引退の予定だったが、比例区9人目に立候補。もう一期務めると、80歳になる。
大腸がん手術をされたのは、十五年も前でしたか。無事回復されたようで、お元気そのもの。まったく衰えを感じない気力・精神力に脱帽です。
さて、前回予告の通り、歌人佐佐木信綱についてのあれこれを書き散らします。相当マニアックなお話になりそうですゆえ、退屈とお感じでしたら一気に飛ばし読みをしていただき、終わりの数行だけお読みください。
もともと私は、近代短歌や歌人の情報にはきわめて疎く、教科書に取り上げる歌人のうちでもわずか数人のわずか数首が頭に浮かぶ程度で、お恥ずかしいかぎりです。この佐佐木信綱についても、名前はおぼろに知ってはいましたが、業績についても作品についても、直ちには浮かんできません。
というわけで、困ったときの魔法のランプ、若い頃に奮発して月賦で買いそろえ、引っ越しのために重い荷物としてあちらに運びこちらに運び、今も今の書棚にほこりをかぶって鎮座している筑摩書房「現代日本文学大系」全97巻!もちろん、飾ってあるだけで、ろくに読んではいません(キッパリ!)しかも最近は、本棚の後列に隠れ、前列は近刊の軽い本や雑誌が占拠しています。要らないものなら処分したら?と言われますが、古本屋に持ち込んでも、運搬のためのガソリン代にもならないでしょう。
そういえば、以前こんな記事を書きました
断捨離に 草臥(くたび)れて候 秋の空
それぞれに愛着と思い入れのあるこれらも、他の人から見れば無用の長物でしょう。これまでにも、一念発起して、古書店に持ち込んだことはあります。 そうやって何度か決行した廃棄作戦によっても、本棚がいっこうに空かなくて、段ボールに詰まった本が押し入れや廊下を占拠しているのは、確かに気鬱ではあります。開封して、中を整理しようなどと思うと、もはや収拾がつかず、本棚に戻してしまうのが落ちですので、滅多なことでは触れません。 |
こうして大切に「死蔵」してきた全集です。せめてこんな時には役立ってもらわねば困る。
というわけで、全巻の背表紙を何度も確認してみました。全97巻の内訳は次の通りです。(出版元のこの記事参照)
政治小説 坪内逍遙 二葉亭四迷 他集 |
94巻に「現代歌集」というのがあります。掲載されている歌人をたしかめてみました。
現代日本文学大系94 現代歌集 尾上 柴舟 , 尾山 篤二郎 , 西村 陽吉 , 松倉 米吉 , 土田 耕平 , 石原 純 , 松村 英一 , 五島 茂 , 結城 哀草果 , 吉野 秀雄 , 岡山 巖 , 渡邊 順三 , 坪野 哲久 , 佐藤 佐太郎 , 山口 茂吉 , 前川 佐美雄 , 宮 柊二 , 近藤 芳美 , 木俣 修 , 大野 誠夫 , 中野 菊夫著 , 鹿兒島 壽藏 |
この探索はあきらめて、同じく「死蔵」本の「研究資料現代日本文学 第5巻 短歌」(明治書院)というのを開いてみました。すると、歌人の活動年代順に、佐佐木信綱/
与謝野鉄幹/ 与謝野晶子/ 正岡子規/ 窪田空穂らが紹介されており、奇しくも最後が佐佐木幸綱でした。
巻頭に「概説 近代から現代の短歌」という記事があり、こんな一節があります。
近代短歌の潮流をたどるならば、明治二十六年に創設された落合直文の「あさ香社」であろうl。ここに参じた若い人びとによって、新派和歌の黎明期がはじまる。与謝野鉄幹は明治三十二年に新詩社を結成し、伝統の枠にしばられることなく、自己の声を信じることを中心におこうとした。また、尾上柴舟や金子薫園は、短歌における前期自然主義の役割をにない、みずみずしい自然を純粋に描出しょうとした。近代の源流、いわば前近代をふまえた歌人は、あさ香社の流れをくむものばかりではなかった。明治三十一年に『心の花』を創刊した佐佐木信綱は、伝統との折衷を残しながらも<広く深くおのがじしに>を提唱する。また、明治三十二年に根岸短歌会をおこした正岡子規は、伊藤左千夫や長塚節とともに、<写生>によって対象をリアルに見ようとする機連を培っていた。 自然主義の動きと関連するものではなかったが、広い意味でのリアリズムにつながるところがあった。 こうした三、四の風潮が渦巻いていたことによって、そこから新しい世代が輩出されたことによって、 自然主義を十分に消化しうる状況を迎えることができたのである。明治の二十年代と三十年代というものは、短歌が私性をとらえる文学として近代化するまでの、輝かしい前近代とみなすことができる。 |
心の花 (創刊の契機)明治三十一年一月、竹柏会の機関誌『いさゝ川』を終刊した佐佐木信綱は、同年二月『心の花』を創刊した。(創刊号の表紙は「古々露の華」。初期には「こゝろの華」、「ココロのハナ」等とも表記したが、第八巻以後「心の花」に統一した)。創刊号の奥付には、編集人石博辻五郎(千亦)、発行人井原豊作(義矩)とある。二人とも竹柏会の会員であった。新派和歌革新運動のさ中の時期である。新派と旧派の橋渡しの役を.、それには単なる竹柏会の機関誌から脱皮すべきである、という考えが創刊の契機であったようだ。翌三十二年、鶯蛙吟社の『詞林』と合同し、正岡子規をはじめ根岸派の歌人たちにも場を提供したのもそのためであった。誌名は、創刊号掲載の信綱の「われらの希望と疑間」に、<花てふものなからましかば、春秋のながめもいかにさびしからまし。歌てふものなからましかば、人々のおもひをいかでかやらむ。歌はやがて人の心の花なり。>による。 |
このHP内の心の花の歌人2のページから代表歌を引用させていただきます。
願はくはわれ春風に身をなして憂(うれひ)ある人の門(かど)をとはばや 幼きは幼きどちのものがたり葡萄(ぶどう)のかげに月かたぶきぬ 春の日の夕べさすがに風ありて芝生(しばふ)にゆらぐ鞦韆(ゆさまり)のかげ うつらうつら眠(ねむり)催す馬の上に見えては消ゆる古さとの庭 大門(だいもん)のいしずゑ苔(こけ)にうづもれて七堂伽藍(がらん)ただ秋の風 野の末を移住民など行くごときくちなし色の寒き冬の日 虻(あぶ)は飛ぶ、遠いかづちの音ひびく真昼の窓の凌霄花(のうぜんかづら) 山の上に初春きたる八百(やほ)あまり八十(やそ)のみ寺は雪に鐘(かね)打つ 誰(たれ)と知らず何処(いづこ)と知らずつくづくと冷たき眼して我を眺(なが)むる ぽつかりと月のぼる時森の家の寂しき顔は戸を閉(と)ざしける ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔の上なる一ひらの雲 まつしぐら駒(こま)走らして縦横(じゆうわう)に銀の鞭(むち)ふる秋風の人 万葉集巻二十五を見いでたる夢さめて胸のとどろきやまず 現実の暴露(ばくろ)のいたみまさやかにここに見るものか曼珠沙華(まんじゆしやげ)のはな 人の世はめでたし朝の日をうけてすきとほる葉の青きかがやき 敷島のやまとの国をつくり成(な)す一人とわれを愛惜(をし)まざらめや うぶすなの秋の祭も見にゆかぬ孤独の性(さが)を喜びし父 いつまでか此のたそがれの鐘はひびく物皆うつりくだかるる世に 道の上に残らむ跡(あと)はありもあらずもわれ虔(つつし)みてわが道ゆかむ 山の上にたてりて久し吾(われ)もまた一本(いつぽん)の木の心地するかも 白雲は空に浮べり谷川の石みな石のおのづからなる 山にありて山の心となりけらしあしたの雲に心はじまる 何をかもいきどほろしみこれの埴輪口くひしばり太刀(たち)ぬかむとする 少女なれば諸(もろ)頬につけし紅(べに)のいろも額(ひたひ)の櫛(くし)も可愛(かな)しき埴輪 春ここに生るる朝の日をうけて山河草木(さんかそうもく)みな光あり あき風の焦土(せうど)が原に立ちておもふ敗(やぶ)れし国はかなしかりけり あまりにも白き月なりさきの世の誰(た)が魂(たましひ)の遊ぶ月夜ぞ 人いづら吾(わ)がかげ一つのこりをりこの山峡(やまかひ)の秋かぜの家 花さきみのらむは知らずいつくしみ猶(なほ)もちいつく夢の木実(このみ)を |
幼き日の孫、幸綱を詠んだ歌もあります。
余談はこれくらいにして(笑)、次が本題。
佐佐木信綱の第一歌集は「思草(おもいぐさ)」でした。
ところで、彼は、万葉集の研究家としても知られますが、その万葉集に「思い草」を詠んだ歌が一首あります。
道の辺の尾花が下の思ひ草今さらさらに何をか思はむ (巻十2270)
【解釈】道端のススキの根もとで、うつむいて物思いしているような思い草のように、今さら改めて何を思い悩んだりしましょうか。
「さらさらに」は、風にそよぐススキの葉音であり、今更の「さら」でもあります。「さらに」という副詞は、下に打ち消し語を伴って「いっこうに、少しも、決して~ない」の意を表す事も多いおきまりの表現です。何をか思はむ」は、「何をもの思いしようか、いやしない」の意の反語表現です。「恋人の愛を信じているが故に、物思いはしない」との解釈がある一方で、「失恋の痛手を振り切って、きっぱりあきらめようとけなげに決断している」との解釈もされます。
ススキの根本で物思いにふける「思い草」とは?いろいろな植物が推定されていますが、最も有力とされるのはナンバンギセル(南蛮煙管)だそうです。この植物名は、寄生植物として、理科で習いましたっけ。
本居宣長『玉勝間』の、この記述が典拠とされます。
お も ひ 草 十三 末ひろくしげりけるかな思ひ草 を花が本は一もとにして かくよめるこゝろは、戀の歌につねに、尾花がもとの思ひ草とよむなるは、そのはじめを尋ぬれば、萬葉集の十の卷に、「道のべのをばなが本の思草、今さらに何物か思はむ、といへる歌たゞ一(ツ)あるのみにて、これをおきては見えぬ事なるを、此一本によりてなむ、後にはひろくよむことゝなれるよしをよめるにぞ有ける、そも/\此思ひ草といふ草は、いかなる草にか、さだかならぬを、一とせ尾張の名兒屋の、田中(ノ)道麻呂が許より、文のたよりに、今の世にも、思ひ草といひて、 すゝきの中に生る、小き草なむあるを、高さ三四寸、あるは五六寸ばかりにて、秋の末に花さくを、其色紫の黒みたるにて、うち見たるは、菫(すみれ)の花に似て、すみれのごと、色のにほひはなし、花さくころは、葉はなし、此草薄(すすき)の中ならでは、ほかには生ず、花のはしつかたなる所の中に黒大豆ばかりの大さなる実のあるを、とりてまけば、よく生る也、されどそれも、薄の下ならでは、まけども植れども、生ることなし、古の思ひ草もこれにやあらむ、 |
若杉原生林で、道の辺にひっそりとたたずんで、物思いにふけっていました。
図鑑などでは紫色のものがよく紹介されていますが、白いものもあるようです。
名前を忘れてしまわないように、イチローさんのメモを写して帰りました。
今日はこれにて。
いよいよ選挙ですね。
18,19才の人の投票率がどれ位になるのでしょうね・・・(^O^)
by ken (2016-06-12 21:44)
参院選、結果がどう出るかドキドキです。
by 長友 (2016-06-13 15:08)
野党共闘の統一が出来て演説会だったのですね
これからは政治は市民が作るものだと思います
市民が政党を動かしたのだと思っています
ところでユニクロは海外でも酷い搾取をしています
不買運動というものが流れています。
私は買うのが多いので悩みます。
柳井さん、そんなに稼いで幸せなの?
by majyo (2016-06-13 21:24)
ken 様
若者が希望を持って、国政に直接関与し歴史を動かしているという実感をもって選挙にも参加してこれるような国であってほしいですね。
by kazg (2016-06-13 21:40)
長友様
ほんとに、ドキドキです。
by kazg (2016-06-13 21:42)
majyo様
ユニクロといえば、リーズナブルな価格設定で、庶民の味方と錯覚していましたが、、、。
by kazg (2016-06-13 21:52)
こんにちは、はじめまして。
ナンバンギセルについての記述をめぐっていてたどりつきました。
上げておられる白い花は、ギンリョウソウといい、ナンバンギセル(思い草)とは別種になります。
by V (2017-09-09 19:06)
V様
ご指摘ありがとうございます。
そうなのですか。
今後ともどうぞよろしくお願いします。
by kazg (2017-09-09 20:26)