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「青頭鶏」川に潜る「牛留鳥」?、の巻 [折々散歩]

万葉仮名の話題の続きです。

「青頭鶏」というのはなんでしょう?

巻十二・3017、作者不詳の歌です。



足桧木之 山川水之 音不出 人之子垢 戀渡青頭鶏

【訓読】あしひきの 山川水(やまがはみづ)の 音に出(い)でず 人の子ゆゑに 恋(こ)ひわたるかも

【解釈】山の川の水の流れのように、音をたてずひそやかに、あの人は人の妻であるので、ひそかに恋し続けることですよ。

【解説】「あしひきの」は、山にかかる枕詞。「人の子ゆゑに」は「人妻ゆゑに」と同義。「恋ひわたる」の「わたる」は、時間的、空間的に同じ状況・動作が続くこと。

「青頭鶏」は「かも」と読み、詠嘆の終助詞。中国の文献に「青頭鶏者鴨也(青頭鶏は鴨なり)」と記したものがあることを踏まえています。

青い頭の鶏とは、どんな種類の鴨でしょうかね。

わが家の近くの用水路にやってきているコガモです。

これも、顔が青いと言えば青いですがね。



今日は午後から天気が崩れるとの予報でしたので、午前中に散歩。ちょっと距離をのばして、久しぶりに「鴨川」まで歩いてみました。

稲刈りが終わった田園風景に風情を感じます。

黒いのは、稲藁や稲株を焼いたあとです。



































苅田の向こうに、常山が見えます。



魚眼おもちゃレンズで写してみます。













「鴨川」の名に恥じず、鴨の群れが次第に渡って来はじめていますが、まだ端緒でしょうか。

ところで、万葉集には、「牛留鳥」という言葉が出てきます。何でしょう?
天平元年、攝津國班田史生丈部龍麻呂という人が自殺したのを、上司であった大伴宿祢三中(おおとものすくねみなか)が、追悼のために詠んだ長歌を見てみます。
古来難読とされ、「引く網の」「黒網の」「黒鳥の」、「しなが鳥」、「をし鳥の」、「にほ鳥の」等々の訓が当てられてきたようですが、現在「にほ鳥の」という訓が有力な説となっているようです。
該当箇所の前後を引用します。

 何在  歳月日香    茵花    香君之     牛留鳥   名津匝来与   立居而   待監人者    


【訓読】  何(いか)に在らむ 歳月日にか
  茵(つつじ)花 香(にほ)へる君(きみ)が
  にほ鳥(どり)の なづさひ来(こ)むと
  立ちて居て 待ちけむ人は
  
【解釈】いつの年のいつの月日にか、ツツジの花が香るような元気な貴方が、にほ鳥のように苦労を重ねながらも帰って来るかと、立ったり座ったして待ち焦がれておられにちがいないその人は

「鳰(にほ)鳥」はカイツブリのことで「にほ鳥の」は「なづさふ」(水にもまれている。水に浮かび漂っている。の意)にかかる枕詞だそうです。

「にほ」は、牛飼いの発する牛への合図の声だとも言われ、はたまた、「牛留」=「荷負ふ」から「にほ」と読む、などの説があるようですが、どうでしょうか?。
過去の拙ブログ記事にも、カイツブリ=「鳰(にほ)鳥」はしばしば登場しています。下に、1.2の例を紹介します。

◇ニオドリも問うらん私いい子でしょ

 カイツブリの子どもです。
カイツブリの古名はニオドリと言います。

私、いい子でしょ?





◇玉の如き小春日和に散歩かな (盗作)


 かいつぶりは、古くは「にお」「におどり」と呼ばれ、万葉集にも詠まれています。

 鳰鳥(にほとり)の、潜(かづ)く池水(いけみづ)、こころあらば、君に我(あ)が恋(こ)ふる、心(こころ)示(しめ)さね     坂上郎女(さかのうえのいらつめ)

【解釈】 鳰鳥(にほとり)が潜(もぐ)る池水よ、あなたにもしも心があるのならば、私がお慕(した)いする心を示してくださいな。 

 にほ鳥の 息長川(おきながかは)は 絶えぬとも 君に語らむ 言(こと)尽(つ)きめやも     馬史国人 


【解釈】息長川はたとえ絶えてしまうことしても、あなたに語りたい言葉は尽きることがあるでしょうか、いや決してありはしません。


◇睦まじく鳰鳥遊ぶ秋の川

 ここでも書いたとおり、カイツブリの古名は「鳰鳥(におどり)」と言います。

また「鳰鳥(におどり)の」は、枕詞として、次の二つの用法を持ちます(goo辞書による)。

    1 鳰鳥が水に潜 (かず) き、長くもぐる意から、「葛飾 (かづしか) 」「息長 (おきなが) 」に掛かる。
        「―葛飾早稲 (わせ) をにへすとも」〈万・三三八六〉

    2 鳰鳥が雌雄並んで水に遊ぶ意から、「なづさふ」「二人並びゐ」に掛かる。
        「―なづさひ来しを人見けむかも」〈万・二四九二〉


潜ったり水面に姿を現したりしているのは、どうやら夫婦だけではなく、子を交えた家族のようです。睦まじい姿を、時間を忘れて眺めておりました。画像はかなりトリミング・レタッチしています。





















 「フォト蔵」のアルバムを少し編集しなおして、散在していたカンムリカイツブリとカイツブリの写真を集めてみました。お立ち寄りいただけたらうれしいです。

カンムリカイツブリ、カイツブリ



今日の鴨川でもカイツブリの姿は目にしましたが、すぐに遠くへ逃げ去ってしまい、みるべき画像がありません。

これは先日、児島湖で撮影。キンクロハジロの手前に泳いでいます。





こちらは、自然環境体験公園。





ところで、鴨川には、カンムリカイツブリの姿を、何羽も見ることができました。今シーズン初めてのカンムリカイツブリでした。



鴨川のカンムリカイツブリ(2016.11)

鴨川のカンムリカイツブリ(2016.11) posted by (C)kazg 鴨川のカンムリカイツブリ(2016.11)

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鴨川のカンムリカイツブリ(2016.11) posted by (C)kazg 鴨川のカンムリカイツブリ(2016.11)

鴨川のカンムリカイツブリ(2016.11) posted by (C)kazg



きょうはこれにて。
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コメント 10

Enrique

最初の写真に写っているコガモ,私のデコイの色になっていました。
http://classical-guitar.blog.so-net.ne.jp/2016-06-12
こちらの写真には無いですが,マガモのオスは青首とか言いますが,首から上がつるんつるんのグリーンです。それを言っているのではないでしょうか。
by Enrique (2016-11-09 07:12) 

馬爺

冠カイツブリは始めてみますね、こちらの河川には今水鳥といえば鷺や鴨ぐらいですね。
by 馬爺 (2016-11-09 08:55) 

yakko

お早うございます。
いろいろな鳥が見られて楽しいですね !
by yakko (2016-11-09 09:11) 

kazg

Enrique様
精巧なデコイですね。微妙な色がそのままです。
マガモの♂、今年はまだ撮っていないので載せませんでしたが、確かに青首ですよね。納得です。
by kazg (2016-11-09 09:41) 

kazg

馬爺様
カンムリカイツブリ。こちらでは、これから数が増えていくかと思います。沖の方にいると、姿がはっきり写せません。射程距離にいてくれると、うれしいです。
by kazg (2016-11-09 09:43) 

kazg

yakko様
そうなんです、この季節、鳥の種類が増えて、嬉しいです。でも、冷たい川風に吹かれて凍える季節も近いですね。
by kazg (2016-11-09 09:45) 

足立sunny

カイツブリ、面白い声で鳴きますよね。
うちのほうの公園では、ミミカイツブリが来たというので皆喜んでいるようです。
by 足立sunny (2016-11-09 21:11) 

kazg

足立sunny様
ミミカイツブリ、未見です。
カワセミはじめ、いろいろな鳥に会える公園ですね。うらやましいです。
by kazg (2016-11-09 22:23) 

じゅんじい

マガモはアオクビ(青首)と呼ばれますので、
もしかすると、マガモの事かもしれませんね。
by じゅんじい (2016-11-10 20:21) 

kazg

じゅんじい様
ありがとうございます。確かに青首の名のごとく、マガモのオスの頭部は目を引くの緑色ですね。今シーズンはまだマガモにお目にかかっていません。
by kazg (2016-11-11 04:12) 

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