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いかにしつつかながよはわたる、の巻 [趣味]

「いかにしつつかながよはわたる」というフレーズが、何かにつけて脳裏に浮かびます。

出典は、ほかでもない山上憶良の「貧窮問答歌」です 。

一昨年の記事になりますが、こんなことを書きました。

◇われもまた たずねあてたり とらつぐみ








 『貧窮問答歌』は、作者=山上憶良自身を投影した一人の貧者が、よりウルトラ・スーパー・ハード・スペシャルな極貧者に問いかけ、極貧者がそれに答えるという設定の長歌と、付属の短歌からなります。


『貧窮問答歌』 山上憶良  

風雑(まじ)り 雨降る夜(よ)の 雨雑り 雪降る夜は すべもなく 寒くしあれば 堅塩を 取りつづしろひ 糟湯酒(かすゆさけ) うち啜(すす)ろひ
て 咳(しはぶ)かひ 鼻びしびしに  しかとあらぬ 髭掻き撫でて 吾(あれ)をおきて 人はあらじと  誇ろへど 寒くしあれば 麻衾(あさふすま)
 引き被(かがふ)り  布肩衣(ぬのかたきぬ) ありのことごと 着襲(そ)へども 寒き夜すらを  我よりも 貧しき人の 父母は 飢ゑ寒からむ  
妻子(めこ)どもは 吟(によ)び泣くらむ   この時は いかにしつつか 汝が世は渡る  

天地(あめつち)は 広しといへど 吾(あ) が為は 狭(さ)くやなりぬる  日月は 明(あか)しといへど 吾(あ)が為は 照りやたまはぬ  人皆か 吾(あ)のみやしかる わくらばに 人とは
あるを  人並に 吾(あれ)も作るを 綿も無き 布肩衣の  海松(みる)のごと 乱(わわ)け垂(さが)れる かかふのみ 肩に打ち掛け  伏廬(ふ
せいほ)の 曲廬(まげいほ)の内に 直土(ひたつち)に 藁解き敷きて  父母は 枕の方に 妻子どもは 足(あと)の方に  囲み居て 憂へ吟(さま
よ)ひ 竈には 火気(けぶり)吹き立てず  甑(こしき)には 蜘蛛の巣かきて 飯(いひ)炊(かし)く ことも忘れて   ぬえ鳥の のどよひ居るに いとのきて 短き物を  端切ると 云へるが如く 笞杖(しもと)執る 里長(さとをさ)が声は  寝屋処(ねやど)まで 来立ち呼ばひぬ 
かくばかり すべなきものか 世間(よのなか)の道(892)

短歌   世間を憂しと恥(やさ)しと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば(893)



例のごとく、地方言葉に訳してみます。

【地方語訳】

《貧者の問い》 風 交じりの雨が降る夜で、雨交じりの雪が降る夜はどねーにもしようがのぅ寒いけぇ、固ぇ塩をなめちゃあ糟湯酒(かすゆざけ)をすすりすすりして、咳ぅしちゃ
あ鼻水ぅ垂らぇて、はっきりありもせん髭をなでて、「ワイをおいてマシな人間はおるまぁ。と自慢はしてみるんじゃが、寒うてしょうがねぇけぇ,麻のふとん
をひっかぶり、ぼろ着をあるだけ重ね着しても、寒い夜じゃのに、ワイよりも貧しい人の 父母は飢え凍えよぅるじゃろう。妻や子どもらぁは 力無ぅ泣きよぉ
るだろうに。この時ぁ、あんたらぁどねぇして暮らすんかのぉ。

《極貧者の答え》  天地は広いゆうけど、わしにゃぁ狭うなってしも うた。お日さんやお月さんは明けぇというけど、わしのためには照らしちゃあつかぁさらんのかのお。ほかの人もみなそうなんじゃろうか。わしだけなんじゃろ
うか。人として生まれ、人並みに働きょうるのに、綿も入っとらん海松(ぬるぬるの海藻)みてぇにぼろぼろになって垂れ下がった衣ばぁ肩にかけて、つぶれか
けた、曲がった家の中には、地べたにわらをばらかして敷いて、父母は枕の方に、妻子は足の方に、ワシを中に囲んで座って嘆き悲しみよんじゃ。かまどには煙
も立たず、炊飯器にゃあにクモの巣がかかって、飯を炊くことも忘れて、ぬえ鳥のようにかぼそい声を出してうめきょうるとこへ、「短い物の端ぅ切る」ゆうよ
うに、鞭を持った里長の声が、寝床にまで大声を出ぇて何回も呼びかけてくるんじゃ。 こねぇにもどねぇしようようも無ぇもんじゃろうかのぉ、世の中いうもんは。
短歌 この世の中を「つらいのぉ」、「身もやせるようで生きるのも恥ずかしいのぉ、嫌じゃのぉ」と思うけど、飛んで往んでしまうわけにもいかんのんじゃ、わしぁ鳥じゃぁねえけぇ。 



「生活派歌人」、「社会派歌人」、「人道派歌人」としての山上憶良の面目躍如たる代表作で、心に残る名作といえるでしょう。




「年金生活者」になって、金欠の病に心身を脅かされています。

「年金生活者」といっても、基礎年金部分の支給がはじまるには、あと数か月かかりますので、「不完全年金生活者」とでもいうべきでしょうか?

数か月後、基礎年金部分が支給され始めたからと言って、決して生活が潤うわけではありません。それほどに基礎年金の水準は低劣です。

職域年金部分を得てさえ苦しい生活ですのに、基礎年金だけでやりくりしなければならない高齢者の方は、どうやって「健康で文化的な」生活を維持しておられるのでしょうか?さらに、その貧弱な支給水準をさえも、「短き物を  端切ると 云へるが如く」、無慈悲に削っていく年金カット方針は、高齢者からも若者からも、未来への希望をはぎ取っていく所業にほかなりません。



ところで、「いかにしつつかながよはわたる」のフレーズは、まったく脈絡もなく、こんな時にも浮かぶのです。デジカメの便利さに、口を挟むつもりはありませんが、フィルムカメラ時代の「資産」を、皆さんはどうやって活用しておられるのでしょう?

こんなことを思ったきっかけの一つは、常山・常山城跡の記事を書きながら、かつて常山にのぼった際に、確か女軍の墓などを撮影した写真があったはずだが、とアルバムを探ってみますが、見当たりません。整理しかけては何度も挫折している膨大なネガの中にきっとあるはずですが、砂漠に針を探すがごとき徒労感に絶望を禁じえません。

デジタル化しておけば、わずかながらも再利用に便利かと思い、これまでもいろいろな方法を試してみました。

専用のフィルムスキャナーは高価に過ぎたので、中古購入したフィルム対応のフラットベッドスキャナーで、ネガの読み取り、保存にチャレンジしました。しかし、この方法は意外に時間もかかり、てっもかかり、挫折。特に、プリンターをスキャナー機能搭載の複合機に変えたころから、スキャナー専用機の出番は各段に減りました。

もう少し手軽な方法として、「コンパクトフィルムスキャン」という選択肢を選んでみました。フラットベッドスキャナーの比べると読み取りが早く、パソコンなしでSDカードに記録できるのは便利でした。しかし、時代相応の画素数不足が、今となっては残念、起動ごとにファイル名がリセットされるという仕様は、ちょっと不便、などの不満が残りました。

CABIN CABIN コンパクトフィルムスキャン 35 CFS-2.5

CABIN CABIN コンパクトフィルムスキャン 35 CFS-2.5

  • 出版社/メーカー: キャビン工業
  • メディア: Camera


そんなこんなで、「フィルム資産」は利用されることもなく10年以上も眠っているのですが、この記事なども一つのきっかけとなって、銀塩写真への愛惜が萌すようになってきました。

小春日や古りたるフィルムいとほしむ

しかし、冒頭にも書きました通り、慢性の金欠病にさいなまれる身。新たな出費はご法度です。となると、既存の資産の有効活用が、至上命題となります。

そこで幾多の比較検討と、涙ぐましい試行錯誤の末(そんなに大げさなものじゃありませんが、全部書いても退屈至極の過程を経て)、一定の到達を得ましたのでご報告させていただきます。

「nikon スライドコピーアダプター ES-1」なる物を使う方法です。


Nikon スライドコピーアダプター ES-1

Nikon スライドコピーアダプター ES-1

  • 出版社/メーカー: ニコン
  • メディア: 付属品

 



注文していた品物が、昨日届きました。

行き当たりばったりで、OLYMPUS PEN E-P2+OLYMPUS OMアダプター マイクロフォーサーズシステムマウント用 MF-2 +ZUIKO
DIGITAL 35mm F3.5 Macroにスライドコピーアダプター ES-1を装着してみました。ほぼ完璧に使えそうです。ルンルンで成功体験記事を書きつつあったある瞬間、テーブルの上に置いていたカメラ一式が、ガチャンと床に落ちてしまったのです。見たところ無傷と見えたのですが、どうも動作がおかしい。よく確かめると、レンズの鏡筒部分が破損して、正しく動作しません。

つまらぬことで大事なマクロレンズを台無しにしてしまった。とほほです。

とりあえず、ほかの組み合わせはないか?Olympus、PENTAXの持ち合わせの機材をあれこれ試してみましたが、どうも今一つのところでうまくいきません。

そんな時、ふとやってみた組み合わせは、ricohGX200を用いる方法。







案外使えるかもしれません。

とりあえず、かなり昔、リバーサルフィルムで写していた後楽園の写真を、デジタル化してみました。















デジカメ写真とは一味違う味が出ているように思いますが、いかがでしょう?

この先、少しずつ、フィルム写真のデジタル化を試みて、気が向けば掲載させていただこうかと考えています。

リバーサルフィルムのポジ画像は、比較的容易にデジタル化できることがわかりましたので、次にはネガフィルムも試してみるつもりです。

年賀状が、まだまだ仕上がりません。

孫とのお付き合いも少しはしておかなければなりません。

その合間をかいくぐって、フィルム写真低価格デジタル化という禁断の果実と戯れたクリスマスでした。

今日はこれにて。


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コメント 6

馬爺

フイルのデジタル化は私も現在までやっているんですが今はフラットベットスキャナーを使っております。
あの機械はポジフイルムが出来ないので止めたんです。
確かにフイルムは楽しいですね。
by 馬爺 (2016-12-26 10:38) 

hatumi30331

今週は毎日ゆらのお出まし。
今も、何やらダンボールで作っております。^^:
頑張らなきゃ!私・・・
パズル大好きな小学3年生は、工作も大好きなんです。(笑)
by hatumi30331 (2016-12-26 15:42) 

kazg

馬爺様
仕上がりの美しさでは、フラットベットスキャナーですかね。ただ、スキャニングに時間がかかるので、枚数が多くなるとつらい、、、かも。
by kazg (2016-12-26 19:32) 

kazg

hatumi30331 様
パズルに工作、熱中できるからよいですね。集中力も創造力も構想力も、人生の質を高めるおおもとですね。
by kazg (2016-12-26 19:38) 

Enrique

フィルムからのデジタル化は,私はかつては,フィルムスキャナーを使っていましたが,古いものは処分してしまいました。今はあまり手に入らないですね。フラットベッドスキャナーでも解像度的には十分なのですが,メーカーもあまり真面目に対応していません。専用のフィルムホルダーを使っても,ピントがずれてフィルムの解像度ギリギリまではとれません。フラットベッドスキャナーのガラス面に乳剤側を直接置いて無反射ガラスで押さえるのが最も良いようですが,裏焼き状態になるので画像編集ソフトで反転させないといけません。これいちいちやると手間ですね。
昔,リバーサルフィルムをフィルムデュプリケーターを使ってネガ撮影したように,現在では(ポジ・ネガ)フィルムをデジタル撮影するのが一番手取り早いですね。
過去にこんな記事を書いています。
http://classical-guitar.blog.so-net.ne.jp/2011-07-31
by Enrique (2016-12-26 20:17) 

kazg

Enrique 様
>現在では(ポジ・ネガ)フィルムをデジタル撮影するのが一番手取り早い
行きつくところはそこでしょうかね?
ご紹介いただいたリンク記事拝読し、「合点ガッテン」しました、

by kazg (2016-12-26 20:55) 

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