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ふたつの菜の花忌??の巻 [今日の暦]

今日は「菜の花忌」


「デジタル大辞泉」などによると「司馬遼太郎の忌日」とあります。


菜の花忌(読み)ナノハナキ

デジタル大辞泉の解説

なのはな‐き【菜の花忌】

司馬遼太郎忌日2月12日菜の花を好んだこと、また作品「菜の花の沖」があることによる。


他方、「デジタル大辞泉プラス」には、上記にプラスしてこう解説されています。


菜の花忌
浪漫派の詩人、伊東静雄の忌日。3月12日。
菜の花忌
歌人、前田夕暮の忌日。4月20日。

前田夕暮はおくとして、司馬遼太郎と伊東静雄、同じく今日が忌日で、ともに「菜の花忌」と称するそうです。


司馬遼太郎の没年は1996年(平成8年)、伊東静雄は1953年(昭和28年)ですから、元祖は伊東静雄ということになりますか(笑)


伊東静雄を紹介するHPに、菜の花忌についての記事があります。


詩人伊東静雄が没したのは、昭和28年3月12日であった。
郷土諌早では、上村肇を中心とした文学関係者が、伊東静雄の詩風の典雅と人格の高風を欽慕して詩碑の建立が計画され、全国の文化関係者に詩碑建設の趣意書が発送されたのは、昭和29年1月である。
その趣意書に名前を連ねた主な賛助者は、林富士馬(詩人)、蒲池歓一(詩人)、野田宇太郎(詩人)、桑原武夫(京大教授)、保田与重郎(作家)、富士正晴(詩人)、小高根二郎(詩人)、庄野潤三(作家)、佐藤春夫(作家)、三好達治(詩人)、川副国基(早大教授)、田中克己(詩人)、清水文雄(詩人)、北村徳太郎(代議士)を始めとする25名であった。
やがて全国から浄財が寄せられ、昭和29年11月23日建立の除幕式が挙行された。除幕式には、伊東花子未亡人、令姉江川ミキ氏、蒲池歓一氏、松永伍一氏、丸山豊氏他多数の文学関係者の来席を見た。
「菜花忌ーさいかきー」第1回が始まったのは、昭和40年3月、伊東静雄13回忌からであり、その後「菜の花忌」とやさしく呼ばれるようになった。


伊東静雄についてウィキペディアは詩人としての出発点をこう記述しています。


1935年(昭和10年)処女詩集であり代表作『わがひとに与ふる哀歌』を発行し、萩原朔太郎から「日本にまだ一人、詩人が残っていた」と賞賛を受け一気に名声を高めた


同時代作家達からの評価や、影響を受けた作家達への興味は尽きませんが現代作家の第一人者大江健三郎の短編「火をめぐらす鳥」(1991年)では、伊藤静雄の詩「鶯」高校時代に読み《身体の芯に火の玉があり、その熱でシュッシュッと湯気のたつような涙が噴出するのに、茫然と》した思い出を語っています。「火をめぐらす鳥」はまさしくこの詩に触発された作品で、その締めくくりの部分に、伊東静雄のこの詩から次の一節を引用しています。
「私の魂」といふことは言へない
その証拠を私は君に語らう


私も、伊東静雄の詩は高校時代読んだ記憶はありますが、「鶯」という作品は、あいにく印象に残っていません。私の記憶に残っているのはこの詩です。


自然に、充分自然に


草むらに子供は※(「足へん+宛」、第3水準1-92-36)く小鳥を見つけた。
子供はのがしはしなかつた。
けれども何か瀕死に傷いた小鳥の方でも
はげしくその手の指に噛みついた。

子供はハツトその愛撫を裏切られて
小鳥を力まかせに投げつけた。
小鳥は奇妙につよく空を蹴り
翻り 自然にかたへの枝をえらんだ。

自然に? 左様 充分自然に!
――やがて子供は見たのであつた、
礫のやうにそれが地上に落ちるのを。
そこに小鳥はらく/\と仰けにね転んだ。

(青空文庫より)


司馬遼太郎は、はるかにポピュラーでしょう。テレビドラマや映画の原作としても、沢山の有名作品が残っています。


司馬遼太郎記念館のHP菜の花忌について書かれたページがあります。


2月12日は司馬遼太郎の命日「菜の花忌」です。司馬遼太郎は野に咲く花、とりわけタンポポや菜の花といった黄色い花が好きでした。『菜の花の沖』という長編小説があることにも由来します。

記念館の書斎の前には、直径1メートルほどのヒューム管があります。司馬遼太郎はここに菜の花を植え、春の開花を楽しみにしていました。このあたりは、小さいながら雑木林風の庭になっていて、今も同じようにボランティアの皆さんが菜の花を植え、来館者をお迎えしています。

また、この日の前後には、1997年以来、毎年、東京と大阪交互にシンポジウムや講演会を開いています。会場に全国から贈られる菜の花約3500本が飾られ、終了後、入場者にお配りするのが恒例になりました。記念館やその周辺の道路にも菜の花が飾られ、この日の来館者にプレゼントしています。


二つの「菜の花忌」は、創始者争いに陥ることなく、平和的に共存しておられるようです(笑)。前掲の伊東静雄HPの菜の花忌のページの続きです。


時は流れ第34回の「菜の花忌」には一つのメッセージが寄せられた。「ようやく司馬遼太郎の書斎の前の庭にも菜の花が咲き始めました。同じ野花を愛された詩人の魂にこの花をささげます。」発信者は司馬遼太郎夫人、福田みどりさんだった。


今日のプチ散歩で見かけた菜の花です。(正確には野菜の花)


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梅の花。


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野の花。タネツケバナ?


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ムクドリ。


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ハクセキレイ。


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コガモ。


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コガモの群れがほとんどいなくなりました。


今日の付録。スズメです。


IMGP1779


今日の画像は、PENTAXK30+KENKO ミラーレンズ 400mm F8。少しでもコンパクトなお散歩カメラを探る、果てなき実験はつづきます。


きょうはこれにて。


nice!(37)  コメント(4) 

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コメント 4

mwainfo

いつもお寄り頂き有難うございます。
司馬遼太郎さん、この偉大なる作家の「菜の花忌」に捧げた、
「ようやく司馬遼太郎の書斎の前の庭にも菜の花が咲き始めました。同じ野花を愛された詩人の魂にこの花をささげます。」福田みどり夫人の言葉に感動します。
by mwainfo (2019-03-13 17:55) 

kazg

mwainfo様
ご訪問&コメントいただきありがとうございます。
そう言えば、mwainfo様のプロフィール画像、一面に咲いているのは見事な菜の花ですね。
by kazg (2019-03-13 21:24) 

アヨアン・イゴカー

>自然に、充分自然に

この詩は、子供の心理と小鳥の命の悲しさが見事に描かれていると感じました。映画の一場面としては、特に印象的だろうと。

by アヨアン・イゴカー (2019-03-15 10:11) 

kazg

アヨアン・イゴカー様
印象に残る場面です。
by kazg (2019-03-15 16:36) 

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