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梅雨の後楽園追記、の巻 [折々散歩]

先日,妻のアッシーついでに早足で見学した後楽園の写真の追加です。


曲水と呼ばれる水路の途中に橋が架かっています。


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「八橋」と掲示があります。この橋のことは,たびたび話題にしました。最近編集したkindle版ブログ本にも、こんな初期の頃の記事を載せています。


 



ナードサークの折々散歩⑩: 四季の田園風景と折々の思い

ナードサークの折々散歩⑩: 四季の田園風景と折々の思い

  • 作者: 木下 透
  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2020/05/22
  • メディア: Kindle版



お名前は?しらん!(2014-05-07)


下の写真は、昨年、岡山市後楽園で写したものです。「八橋」と案内表示がありましたので「カキツバタ」なのだろうと勝手に推測しています。

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もとネタは、伊勢物語の有名な「東下り」の段。

昔、男ありけり。その男、身をえうなきものに思ひなして、京にはあらじ、東の方に住むべき国求めにとて行きけり。もとより友とする人、ひとりふたりして行きけり。道知れる人もなくて、惑ひ行きけり。三河の国八橋といふ所に至りぬ。そこを八橋といひけるは、水行く河の蜘蛛手なれば、橋を八つ渡せるによりてなむ、八橋といひける。その沢のほとりの木の陰に下りゐて、乾飯食ひけり。その沢にかきつばたいとおもしろく咲きたり。それを見て、ある人のいはく、「かきつばたといふ五文字を句の上に据ゑて、旅の心をよめ。」と言ひければ、よめる。
唐衣きつつなれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ
とよめりければ、みな人、乾飯の上に涙落として、ほとびにけり。

【解釈】
昔、男がいたんだってさ。
その男は、自分を世の中の役に立たない不要人物だと独り決めに思い込んで、「都にはもういねえつもりだ。オイラみたいのものでも受け入れてくれる住みよい国を求めて、遠く東国地方を訪ねていこうじゃないか。カールブッセも”山のあなたの空遠く、幸い住むと人の言う、、、”と歌ってるじゃないか。」と言って、旅立って行ったってさ。
古くからの友人、一人二人と一緒に、行ったんだってさ。道を知ってる人もいなくて迷いながら旅して行ったんだって。
そうするうちに、はるか愛知県は三河の国の八橋というところに到着したんだ。そこを八橋と言ったわけは、流れる川が四方八方に分かれて蜘蛛の手のようだったから、橋を八つ渡していたんで、八橋と言ったんだってさ。
その水辺のほとりの木の陰に馬から下りて腰を下ろして、携帯用乾燥メシを食ったんだ。。その水辺にかきつばたがチョーイイ感じに咲いていたんだなあ。それを見て、ある人が言うのに、「かきつばたといふ五文字を句の上に据ゑて、旅の心をよめ。」と言ったので、男が詠んだ歌がこれなんだ。
唐衣きつつなれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ(唐衣を繰り返し繰り返し着て、糊がとれて体にぴったりなじんだみたいに、慣れ親しんだ妻が(都に残って)いるので、着物をピンと「張る」のと語呂が同じ、はるばる(遙々)、三河くんだりまで、着物を「着た」みたいに「来た」旅の長い道のりを、しみじみ思って感無量だよ。)
と詠んだもんだから、居合わせた人はみんな、携帯用乾燥メシの上に涙を落として、乾燥メシがふやけてしまったんだってさ。塩味がきいて、さぞおいしかっただろうよ。とっぴんぱらりのぷぅ。

注「から衣 着つつなれにし つましあれば はるばるきぬる 旅をしぞ思ふ」の歌は「修辞」に凝った歌です。
①まず「縁語」。
「衣」に縁のある言葉を揃えています。
衣 → き(着) → なれ(糊がとれて柔らかくなり身体になじむ) → つま(褄) → はるばる(張る) → きぬる(着ぬる)
②「掛詞(かけことば)」一種の駄洒落、親父ギャグのルーツでしょうか。
き(着・来) 、なれ(糊がとれて柔らかくなり身体になじんだ・慣れ親しんだ)、つま(褄・妻)、 はるばる(張る・遥々)、 きぬる(着ぬる・来ぬる)
③「唐衣」は「き(着)」の枕詞(まくらことば)=五文字の飾りの言葉。
④「唐衣きつつ」は「なれ」を導くための序詞(じょことば)=任意の長さの飾りの言葉。
⑤五・七・五・七・七の各句の頭に「か・き・つ・ば(は)・た」が読み込まれています。このようなのを、「折り句(おりく)」の歌と呼びます。言葉遊びの部類ですがね。
さらに凝ったものに、「沓冠(くつこうぶり)の歌」というのがあります。
兼好と頓阿(とんあ)の「沓冠の歌」の贈答は有名です。
兼好法師が頓阿に宛ててこんな歌を送ります。
よもすずし ねざめのかりほ た枕も ま袖も秋に へだてなきかぜ
歌の内容は無視して、五七五七七の各句の頭と末尾(冠と沓)を拾ってみましょう。
冠 よ・ね・た・ま・へ(米給へ=米を譲ってください)
沓 ぜ・に・も・ほ・し(銭も欲し=出来ればお金も支援していただきたいな)
この無心に対して、頓阿はこう返します。
よるもうし ねたくわがせこ はてはこず なほざりにだに しばしとひませ
冠 よねはなし (米は無し=米はないんだよ、ごめんね)
沓 ぜにすこし (銭少し=お金を少しだけ送るからこれで辛抱してね)


現代っ子にも、この遊びはおもしろいんじゃないでしょうかね。
大昔(まだ「昭和」の終わり頃でした。)、高校生と折り句の歌を作って遊んだことがありました。古いデータを探してみると、ありましたありました。学校名が出てくるお題の作品は省略し、「秋深し」と、フリーのお題の作品のなかから、個人情報に障らないものをピックアップしてみます。
著作権に抵触するかもしれないけれど、ごめんなさいね。営利目的ではないので、許して、、、。万一の抗議、クレームは、kazgまでお寄せください。誠意をもって対処いたす所存でありますので。
注:作品の下に添えた「評」は、当時kazgが寄せたものです。

1「秋深し」
朝が来て 霧雨降りて 冬深し 風は冷たく しもやけできる M
評 「冬深し」とはあまり聞きません。一考の余地あり。
あらだめだ 今日も寝坊 二日目だ 母さんも寝てる しょうがないなあ U
評 お気の毒。                                             
秋の空 季節はずれの 冬景色 垣根の角の 白髪じじい Y
評 出だしは格調高いのに、下の句が興ざめ。
朝寒く 木々が枯れたら 冬はじめ から風吹けば 白き雪降る Y
評 そのとおりでしょう。
青々と 木も茂ってる フランスの 川のほとりで 知る人の愛 M
評 セーヌの岸辺でしょうか。国際的!
あっつあつ きりきり舞いの ふかしまん かりかりしてる しんがあるかな I
評 Oh! my god!
秋の友 きれいな月を ふと眺め 感慨深く 静かに過ごす H
評 古典的な、もの思う乙女の図。
秋の木に 青い光が ふり注ぎ 枯れていくのを しんみりと見る T
評 魔法の光?
あの声と 気ままな顔が ふりむくと 金縛り来て 知らん顔する O
評 どんな声と顔?いえ、見たいわけではありませんがーーー。
朝霧の 岸辺に立って 船みれば かすかにみえる しろの幻影 F
評 これも本歌取り。「しろ」は白?城?犬の名(まさか)?どこか夢幻的な世界。
青空に 今日もあしたも ふわふわと 風に流れる 白っぽい雲 N
評 あの雲は、青春のただ中を漂泊する自己の投影でしょうか?しみじみとして味のある歌です。
あかあかと きたる夕暮れ ふと見れば からすの声も 親しみ深し              H
評 古典的情趣。
ああ眠い 気持ちきりかえ 筆を執り 考えぬくが しかし浮かばず O
評 よくわかりますとも、その気持ち。
秋の夜に きらめく星を ふりちらし 語り継がれし 神話の世界 O
評 きれい。「ふりちらし」がやや難。
秋の夜に 街の明かりを のんびりと ガラスの向こうに 私は見てる(あまのがわ) N
評 青春のサンチマンタリスム(センチメンタリズム)。
あしたには 今日したことを 振り返る かえりみても しかたなけれど O
評 思い当たる感慨です。
秋になり 黄色や紅(あか)の 服を着た 可憐な木の葉 しっとりと積もる O 
   評 きれいです。
ああまたか きのうもたべた 太る素 悲しすぎるわ 食欲の秋
評 おみごと
あの時に 嫌いだからと 二人して 考えなしに してしまったこと H
評 悔恨の日々。
赤トンボ 黄色い花に ふととまる 母さんトンボ 静かに見たり N
評 カワユイ。
秋が過ぎ 冬になったら かじかんだ手に しもやけの足 N
評 あれ、ちょっと足りないぞ。
足音に 来たと息のみ ふと見ると 顔の恐ろし しかる母立つ
評 スリル。四句目「顔おそろしや」とでも改めては?
あら不思議 きれいな人が ぶすになる 過去の姿が 幸せな時 A
評 身につまされたりして。
朝顔や 霧雨の中 ふかぶかと 可憐な舞で しんみりしみる A
評 下の句のあいまいさが惜しい。
秋の稲 金の穂風に 吹かれゆく 変わらぬ景色 四季の表れ N
      評 これも格調高い。下の句に、もう一考。
赤トンボ 清き夢見し ふるさとの 川下におり しみじみ想ふ F
評 郷愁さそう叙情の歌。
赤色や 黄色い葉らを 吹き飛ばし 風が吹きける 静かな日かな K
評 秋ですね。
朝風で 気温が下がり 震えては カイロを使い 事態をしのぐ
評 「写生」の歌?
秋になり 木々も色づく 深々と からすも飛び交い 四季を感じる 詠み人知らず
評 二句目は「色づき」でしょうかね。深々と飛ぶ烏ってどんなの?
あら不思議 きれいに汚れが 拭き取れて から拭き済ませて 仕上げは完了 K
評 お見事。洗剤のコマーシャルコピー?
秋が過ぎ 北の風が 吹くたびに 体がふるえ しもやけ痛む M
評 出だしと結びのアンバランス!
あと少し きっと来るよ 冬休み 家族と一緒に 正月を K
評 よい子の歌!
あっと言う間に 季節が変わり 冬景色に 感動しつつ しみじみ思う             K
評 大胆な字余り。
赤色や 黄色に染まり 深まるる 感動する秋を しみじみ思う               Y
評 「深まる」は四段活用だから、連体形は「深まるる」とはなりません。
朝焼けに 昨日のことを ふと思い 帰りたいと 静かに思う M
評 「昨日」に帰りたいのですか?でも、未来を見つめましょう。
秋の空 ふと見上げれば 烏の親子 幸せ一杯 S
評 なんか、リズムがおかしくありません?
赤色や 黄色の花が ふんわりと かすかに香る 神秘の香り O
評 どんな花でしょうね。色っぽい花なんでしょうかね。
秋が来て 木々も色づき 烏らも 北に帰って たそがれている F
評 「たそがれている」が斬新。山頭火みたい?
明日からは きっと始めます 復習を、と 考えるだけでは 信じがたいけれど
評 徹底した字余り。
明日とは 希望の夢が 福連れて 家族も喜ぶ 幸せの日々 N
評 「明日」という字は明るい日と書くのね。

(以下略)


後楽園の「八橋」がこの「東下り」の逸話にちなんだものであることは、公園自体の案内文に記述してあることを確認しましたので、間違いありません。そして、この「八橋」のたもとに植えてあるのが杜若(カキツバタ)であることも確認できました。


ただ、冒頭の写真の八橋は、この記事のものとは違い、かけ直されたものであることは、朝顔とカキツバタと八つ橋と、の巻(2015-09-02)の記事に書いたとおりです。


追記
去年のこの記事で紹介していた「八つ橋」は、今年の春には新しく架け直されていました。



上は菖蒲でしょうか?カキツバタの画像を探しましたがどこかに埋もれて肝心な時に見あたりません。
と書きかけて、去年の五月のこの記事で、カキツバタの写真も載せていたことに気づきました。


今の時期、杜若の花はもう咲き終わっているようでした。カキツバタ、アヤメ、ハナショウブ、、、。「いずれあやめかかきつばた」の言葉どおり、(いずれもすぐれていて)見分けにくいものの代表ですが、咲く時期に若干の違いがあるようです。


それぞれの花期は、アヤメ 5 月上旬。 カキツバタ 5 月中旬。ハナショウブ 5 月中旬~ 6 月下旬。だそうです。


シタの花も、曲水に植えられてはいるのですが、ハナショウブなのでしょう。


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いろいろな色の花が咲き競うハナショウブ畑。今が見頃のようです。


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梅雨の季節。どんより垂れ込めた雲に光は遮られていますが、公園の植栽や芝生も水も、瑞々しく潤って、好ましい眺めです。


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しっとり濡れたかやぶき屋根の茶室も、風情を増


して感じられます。


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井田(せいでん)に、つい最近田植えが終わったのでしょうか?


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ネット上でたしかめてみますと、こんな記事がありました。


後楽園のお田植え祭り
「後楽園のお田植え祭り」とは岡山県岡山市北区にある後楽園で、毎年6月の第2日曜日に行われるお祭りです。
岡山後楽園は、約300年前に岡山藩の2代藩主である池田綱政が、藩主がやすらぐ場として作らせた庭園です。

そんな歴史ある後楽園のお田植え祭りは、1962年(昭和37年)から始まりました。園内の「井田」で、「さげ」と呼ばれる男衆の田植歌と太鼓に合わせ、「早乙女」がテンポよく田植えを行います。
当日は小学生以上の一般の方も田植えに参加することができます。(祭りの日より)


そして、今年はコロナ感染症のために中止になったことが、案内してありました。すると、園の関係者で田植えをなさったのでしょうか?異例なことではあります。


さて、私の目当ては、この井田の一部に植えられている、古代ハス(大賀ハス)の花。


見事に咲き始めていました。


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古代ハス(大賀ハス)については、kindle版のこの巻に



ナードサークの折々散歩⑫: 四季の田園風景と折々の思い Kindle版

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  • 作者: 木下 透
  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2020/05/25
  • メディア: Kindle版

今年の大賀ハス(岡山後楽園)(2014-07-11)という記事を載せています。





 


大賀ハス(古代ハス)について、過去の記事でも何度か触れたことがありました。

蓮の花あれこれ

蓮の花あれこれ vol2 大賀博士の故郷に咲く純粋種の古代ハス

蓮の花あれこれvol3 岡山後楽園の蓮の花

蓮の花あれこれvol4 古代ハスに咲く優曇華?

今年も、早朝観蓮会が催されたという報道があり、遅ればせながら大賀ハスを見てみようと、台風接近のなか、昨日の午後仕事帰りに、後楽園を散歩してみました。

蓮の花が開花するのは早朝で、午後になると閉じているのだそうですが、なかなか午前中は時間が合いません。

空は曇り、風は強くて花が揺れ、撮影には不向きですが、とりあえず証拠写真を残しておくことにします。


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蓮の植わっている井田の全景。正面奥は築山(唯心山)で、小高い丘から園内が展望できます。
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正門近くの「花葉の池(かようのいけ)」には、「一天四海(いってんしかい)」(通称・大名蓮)が、白い大輪の花を咲かせています。

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 こんなほんのり赤い花も、交じっています。
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花葉の池も行ってみましたが、まだ固い蕾でした。


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