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彼岸過ぎのヒガンバナ、の巻 [折々散歩]

ヒガンバナは、毎年お彼岸の頃に決まったように咲いてくれ(これはほとんど全国一斉なのでしょうか?)、毎年のように写真に撮り、毎年のようにブログ記事にさせてもらっています。

一番古いところでは、続 今日の「これなあに?」(2013-09-16)

ヒガンバナというと新美南吉の「ごんぎつね」のワンシーンが浮かびます。「ごんぎつね」は南吉の17歳の時の作品といいます。
「ああ、葬式だ」
と、ごんは思いました。
「兵十の家のだれが死んだんだろう」
お昼が過ぎると、ごんは、村の墓地へ行って、六地蔵さんの陰に隠れていました。いいお天気で、遠く向こうには、お城の屋根瓦が光っています。墓地には、彼岸花が、赤い布のように咲き続いていました。と、村の方から、カーン、カーン、と、鐘が鳴って来ました。葬式の出る合図です。
やがて、白い着物を着た葬列の者たちがやって来るのが、ちらちら見え始めました。話し声も近くなりました。葬列は墓地へ入って来ました。人々が通った後には、彼岸花が踏み折られていました。
ごんは、伸び上がって見ました。兵十が、白い裃をつけて、位牌を捧げています。いつもは赤いさつま芋みたいな元気のいい顔が、今日は何だかしおれていました。
「ははん、死んだのは兵十のおっ母だ」
ごんは、そう思いながら、頭を引っ込めました。(「ごんぎつね」より)

ごんぎつね (日本の童話名作選)

ごんぎつね (日本の童話名作選)

  • 作者: 新美 南吉
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 1986/10/01
  • メディア: ハードカバーメディア: 大型本

彼岸の時期に咲くこと、墓地の周辺に群れ咲くことが多いなどから、死人花、地獄花、幽霊花などの不吉な別名も与えられています。剃刀花、狐花、捨子花、はっかけばばあなどの名も、wikiでは紹介されています。
その妖しい不吉さを北原白秋はこう歌います。
曼珠沙華 北原白秋
GONSHAN.(ゴンシャン). GONSHAN..何処へゆく
赤い御墓(おはか)の曼珠沙華(ひがんばな)、
曼珠沙華、
けふも手折りに来たわいな。
GONSHAN. GONSHAN. 何本か。
地には七本、血のやうに、
血のやうに、
ちやうど、あの児の年の数(かず)。
GONSHAN. GONSHAN.気をつけな。
ひとつ摘(つ)んでも、日は真昼、
日は真昼、
ひとつあとからまたひらく。
GONSHAN. GONSHAN. 何故(なし)泣くろ。
何時(いつ)まで取っても、曼珠沙華、
曼珠沙華、
恐(こは)や赤しや、まだ七つ。
(「思ひ出」より)

思ひ出 抒情小曲集

思ひ出 抒情小曲集


仏典に由来する「曼珠沙華」の名も一般に普及しています。法華経が説かれるとき天から訪れる「天上界の花、赤い花」をサンスクリット語で「マンジューサカ」と呼ぶそうです。
曼珠沙華と書いてマンジュシャゲと読むと思っていたら、山口百恵ちゃんは、マンジュシャカと謳いました。

曼珠沙華

曼珠沙華

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックレコーズ
  • 発売日: 1990/09/15
  • メディア: CD

この記事は、後にも何度か引用しましたっけ。

私の居住地のすぐ近くに、そのヒガンバナが、たくさん植栽されている場所があります。三年ほど前のこの記事でもご紹介しました。

児島湖花回廊のヒガンバナ、の巻(2017-09-23)

ほとんど地元ですのに、これまで行ったことがありませんでした。(中略)

ところで、上の記事にある「DOWAホールディングス」(旧社名「同和鉱業」)の前身が「藤田組」であり、児島湾干拓の担い手であったこと。岡山県南の「藤田」の地名もこれに由来すること。県内屈指の渡り鳥の飛来地「阿部池」も、その干拓の産物であること。現在は一部が埋め立てられてゴルフ場となっていることなどを、過去の記事でも折に触れて話題にしてきました。

岡南逆さ富士、の巻

縁は異なもの、「青頭鳥」再考、の巻

阿部池に師走の雨やミコアイサ

ムルデルの干拓堤防、の巻

ムルデルの樋門など、ご近所の干拓遺跡、の巻

縁は異なもの(2) 鉱山縮小・閉山の余波

病室雑話 2 縁は異なもの、の巻

病室雑話 藤田という地名

その「花回廊ゴルフコース」内の「自然緑地」に約40万株のヒガンバナが植栽され、見頃の時季に一般公開されているのだそうです。

今年の9月24日付地元紙「山陽新聞」では、55万株と報道されています。

児島湖近くの花回廊ゴルフコース(岡山市南区築港栄町)に隣接する緑地でヒガンバナが咲き始め、赤い花が秋風に揺れている。26日から一般公開が始まる。 4千平方メートルほどの緑地に、約55万株が育っている。今年は猛暑のため、例年より1週間以上開花が遅れ、20日ごろに咲き始めた。満開は今月末ごろに迎える見込みという。 DOWAホールディングス(東京)や地域住民でつくる「児島湖花回廊サポーターズクラブ」が児島湖を花の名所に、と2012年から育てている。

先日、年金者組合の県本部の新聞に、古くからの知己であるSさんがこの地のヒガンバナについて投稿されており、また、SNSでも話題にされていたので、今日私も行ってみました。

今年は、検温、手指消毒、住所姓名の記入、マスク着用など、入念なコロナ対策を施した上で入場できます。ありがたいことに、駐車料金も入場料も無料です。

ようやく秋らしい、すがすがしい晴天のもと、真っ赤な絨毯が見事でした。所々に純白な花も群生し、またクリーム色のものなども混じっています。大勢の見物客が、皆さん、カメラを携えて楽しんでおられます。

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KS_15691

PM186998

しかしそれにしても、いつ写しても、ヒガンバナは難しい。枚数ばかり重ねますが、なかなかものになりません。

マクロレンズで狙ってみたり、、

KS_15630

KS_15668

ワイド系レンズで接近撮影してみたり、

PM186999

仰角で狙ってみたり、

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

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KS_15681

KS_15653

PM187004

景色全体を鳥瞰してみたり、

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PM187024

KS_15677

いろいろやってはみるのですが、魅力を十分伝えるのは至難のワザ。今日はこの辺で諦めます。ではまた。


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はなだんご

先日墓参りに行きました。
 好物の銘柄ビール 彼岸花
by はなだんご (2020-09-29 06:55) 

kazg

はなだんご様
秀句頂戴。
頷きながら、一面の彼岸花咲く墓所を思い見ています。あるいは、彼岸花とともに、故人がお好きだったビールを手向けられたのでしょうか?深い青空と清澄な空気が、余計に、喪失の哀しさを募らせますね。

by kazg (2020-09-29 17:49) 

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