先日、ひと月以上も前でしたでしょうか、元同業者の親しい何人かが寄った機会に、H女史が、白い花をたわわに咲かせた一抱えの枝を、花瓶に挿しながら「これ何かわかる?』とみんなに聞きました。

花に見覚えはありましたし、既知の情報として認識していたはずですが、最近、海馬の耄碌が進んだせいか、脳内情報を的確に取り出す回路が滞っているらしく、知悉の記憶もぼんやりとして思い出せないことがしばしばあります。

確信が持てないもどかしさを伴いながらも、「今の季節を象徴する花」というヒントに誘引されて、「卯の花」と答えました。ほぼ当てずっぽうでしたが、あたりでした。

奥の細道の「卯の花をかざしに関の晴着かな」という句なども話題に出て、一瞬文学同好者の集まりのような、芳しい空気が漂うのも、好ましいひとときでした。

卯の花の話題はそれで切り上げて、本来の実際的・実務的な方面へと主題が移ったのですが、最近続けざまに、卯の花と出会う機会がありました。