病窓を吹き入る真夏の風ゆかし

見晴らしの良い病室です。

日頃、通勤やら買い物やらで行き来する生活圏を俯瞰すると、また新鮮な眺めです。

今朝は、看護師さんが窓を少し開けて換気する方法を教えてくださいました。数日ぶりに外気を吸って、清々しさを堪能できました。

 

 

 

 

全国のお天気ニュースを見ておりますと、凄まじい酷暑だそうで、エアコンのよく効いた部屋の窓を開けて快適を楽しんでたりすると、罰が当たりそうですがね。

窓のブラインドを開け放つ方法もマスターしましたので、湧いては流れる雲の有り様や、道路を往来する車の流れ、遠くに見える鉄道線を緩やかに滑り去っていく
連結車両など、日ごろは一瞥するだけですぐさま視界から消えるあれこれのものを、 ただただじっと、 眺めております。

方角を変えてみると、遠くに地元の常山が望めます。

これで、時折温泉の湯にでも浸かって、冷えたビールの一本でもあれば、これにまさる極楽はありますまい。

いえ、贅沢は申しません。それこそ罰が当たりましょうから。

ありがたいことに、昨日の夕食から、五分粥になっています。固形物のおかずも添えられており、食の喜びを取り戻せました。

 

「今、何が一番食べたいですか？」と看護師さんが訪ねます。

「いや、おかゆでもなんでも、とにかく、口から食べられることが嬉しい」と殊勝に答えてみましたが、後でいろいろ、ごちそうを思いうかべて楽しんでいます。

わが内田百閒が、戦時中の食物難の時代、好物だが食べることのできない食べ物の名前を、 ひたすらノートに
書き連ねたエピソードがあったと思いますが、空想上の美食こそ最上の美食かもしれません。