この4月からは、仕事は週に一度のアルバイトという、「優雅」な生活になったはずですのに、なかなかそれが慌ただしくて、 悠々自適とはいきません。

この「悠々自適」という四字熟語を、私が最初に覚えたのは、佐藤春夫の『わんぱく時代』という作品中で、作者をモデルとする中学生の主人公が好んで用いた言葉であったと記憶しています。

うろ覚えでしたので、本棚を捜索してみますと、昭和三十九年発行、定価二百九十円と奥付にある偕成社の『ジュニア版日本文学名作選』〈2〉という、私が読んだその本が見つかりました。今ではすっかり黄ばんで、紙の劣化も痛々しいけれど、ちょっと凝った装丁の、子どもにとっては上等なハードカバーの本です。