今朝の朝ドラでは、終戦の「玉音放送」が流れ、暗く悲惨な戦争の日々が終わりを告げます。

一方、花子の労作「ANNE of GREEN GABLES」の翻訳が、ようやく完成します。いわく「『神は天にあり。世は全てよし』と、アンはそっとささやいた」。

ところが、「蓮様」のもとに、長男純平の戦死公報が届きます。終戦のわずか四日前、鹿児島で爆撃を受けて戦死したというのです。とても信じることが出来ない「蓮様」は、衝撃と悲しみの余り一夜で髪が真っ白になってしまいます。

この場面は、モデルの柳原白蓮=燁子の実際のエピソードに基づいているそうです。

以前もこの記事で触れましたが、柳原白蓮=燁子の愛息の香織氏は、早稲田大学政経学部在学中に学徒出陣し、1945年(昭和20年)8月11日、所属基地が米機の攻撃を受け、機銃掃射により戦死します。享年23。終戦のわずか4日前でした。

柳原白蓮は、その悲しみを、こう詠んでいます。

たった四日生きていたらば死なざりし
いのちと思ふ四日の切なさ

幼くて母の乳房をまさぐりしその手か軍旗捧げて征くは

英霊の生きて帰るがあると聞く子の骨壷よ振れば音する

写真(うつしえ)を仏となすにしのびんや若やぎ匂ふこの写真を 

 先ほどのこの記事にも書きましたが、「蓮様」が、意に染まぬ結婚話への悩みを抱えて花子の実家を訪ねた場面で、軍人志望の吉太郎に、与謝野晶子「君死にたまふ事なかれ」の載った『明星』を渡す場面がありました。

皮肉なことに、 吉太郎は憲兵として白蓮夫妻を排撃する立場になり、最愛の息子は、彼女がかくも厭うた戦争によって命を奪われます。無数の白蓮、無数の母たちの嘆きを、今の世に再現させることがないように、「君死にたまふ事なかれ」を再録し、ちょっと現代語訳を試みてみました(グリーンの文字が原詩、灰色文字が訳詩)。

「君死にたまふ事なかれ」

あゝおとうとよ、君を泣く
君死にたまふことなかれ
末に生まれし君なれば
親のなさけはまさりしも
親は刃をにぎらせて
人を殺せとをしへしや
人を殺して死ねよとて
二十四までをそだてしや


ああ、わたしのおとうと!あなたのためにわたしは泣くわ。
あなた、しんじゃだめ!
すえっこのあなただから、
とうさまもかあさまもあなたをとてもかわいがったわ。
そのとうさまやかあさまはあなたに軍刀を握らせて、
ひとをころせとおしえたかしら?
ひとをころしてしねとおもって、あなたを二十四歳までそだてたかしら?

堺の街のあきびとの
旧家をほこるあるじにて
親の名を継ぐ君なれば
君死にたまふことなかれ
旅順の城はほろぶとも
ほろびずとても何事ぞ
君は知らじな、あきびとの
家のおきてに無かりけり

じゆうなまち堺の商人の、
代々ほこりたかい旧家のあるじで、
あととり息子のあなたなのだから、
あなた、しんじゃだめ!
ロシアの旅順がほろびても、
ほろびなくてもかまわないわ。
あなたはしらないでしょうね!商人の
わがやの掟にはないことよ!


君死にたまふことなかれ
すめらみことは戦ひに
おほみずから出でまさね
かたみに人の血を流し
獣の道で死ねよとは
死ぬるを人のほまれとは
おほみこころのふかければ
もとよりいかで思されむ

あなた、しんじゃだめ。
へいかはいくさに、
ごじしんではおいでになりませんが、
おたがいにひとの血をながして、
あさましいけものの道でしね、とか、
しぬことがひとの名誉だ、とかは、
へいかの慈愛はふかいので、
もとより、どうしておぼしめしましょうかしら?

あゝおとうとよ戦ひに
君死にたまふことなかれ
すぎにし秋を父ぎみに
おくれたまへる母ぎみは
なげきの中にいたましく
わが子を召され、家を守り
安しときける大御代も
母のしら髪はまさりぬる

ああ、わたしのおとうと!
あなた、しんじゃだめ!
そのむかし、いとしいとうさまに、
さきだたれなさったかあさまは、
深いかなしみなげきの上に、
わが子をいくさに召し上げられて、ひとりでいえをまもりぬき、
安泰と聞くご治世なのに、
かあさま白髪が増えました。

暖簾のかげに伏して泣く
あえかにわかき新妻を
君わするるや、思へるや
十月も添はで 別れたる
少女ごころを思ひみよ
この世ひとりの君ならで
ああまた誰をたのむべき
君死にたまふことなかれ


お店ののれんに隠れて泣く、
可愛い若いにいづまを、
あなたお忘れ?それとも愛してる?
わずかとつきの新婚ぐらし、はなればなれに引き裂かれた
おとめごころを思ってご覧。
この世にひとりのあなたをおいて、
ああ!他のどなたを頼りにしよう。
あなた、絶対、しんじゃだめ!

この記事や、この記事も、改めて思い出したことでした。

今日の写真は、平和のキジバト。今朝、我が家の窓から写しました。

 

 500mmレフレックスレンズ(ミラーレンズ)で、まずまずピント合わせができましたので、報告(自慢)がてら、掲載します。