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鴻鵠のこころ知らずも春のどか [文学雑話]

 昔、漢文で「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」という句を習いました。
「えんじゃくいづくんぞこうこくのこころざしをしらんや」と読みます。
「燕雀」とは、燕と雀。取るに足りないちっぽけな存在の象徴です。
鴻鵠」とは、「鴻(おおとり)」と「鵠(くぐい)」だそうです。
同じく「おおとり」と呼ばれる「鵬」(ホウ)、「鳳」(ホウ)「凰」(オウ)が、伝説上の霊鳥をさすのに対して、「鴻(コウ)」は、一般的に「大きな鳥」を意味するようです。オオハクチョウをさしたり、ガンの一種の「ヒシクイ」をさすこともあるそうです。
「クグイ」は、聞きなじみがありませんが、白鳥の古名だといいます。

従って、「鴻鵠の志」とは、大きな鳥の大きな志、つまり、大人物が抱く気宇壮大な志のことを指します。 

この成句の出典は、『史記』の「陳渉世家」の一節ですが、ダイジェスト版である『十八史略』から、該当の部分を引用しておきます。

 

 

【本文】
陽城人陳勝、字渉。
少与人傭畊。
輟畊之隴上、悵然久之曰、
「苟富貴、無相忘。」
傭者笑曰、
「若為傭畊、何富貴也。」
勝大息曰、
「嗟呼、燕雀安知鴻鵠之志哉。」

至是、与呉広起兵于蘄。
時發閭左、戍漁陽、勝・広為屯長。

会大雨道不通。
乃召徒属曰、
「公等失期、法当斬。
壮士不死則已、死則挙大名。
王侯将相、寧有種也。」
衆皆従之。

乃詐称公子扶蘇・項燕、称大楚。
勝自立為将軍、広為都尉。

【書き下し】
陽城(ようじょう)の人陳勝(ちんしょう)、字(あざな)は渉(しょう)。
少(わか)きとき人と傭畊(ようかう=畊は耕に同じ)す。
畊(かう)を輟(や)めて隴上(ろうじゃう)に之(ゆ)き、悵然(ちゃうぜん)たること久しうして曰はく、
「苟(いやし)くも富貴(ふうき)とならば、相(あ)ひ忘るること無からん。」と。
傭者(ようじゃ)笑ひて曰はく、
「若(なんぢ)傭畊を為(な)す、何ぞ富貴とならんや。」と。
勝大息(たいそく)して曰はく、
「嗟呼(ああ)、燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや。」と。

是(ここ)に至りて、呉広(ごこう)と兵を蘄(き)に起こす。
時に閭左(りょさ)を發(はっ)して、漁陽(ぎょよう)を戍(まも)らしめ、勝・広屯長(とんちょう)と為(な)る。

会(たまたま)大雨して道通ぜず。
乃(すなは)ち徒属を召(め)して曰はく、
「公等(ら)期を失し、法(ほう)斬(ざん)に当たる。
壮士死せずんば則(すなは)ち已(や)む、死せば則ち大名(たいめい)を挙(あ)げんのみ。
王侯将相(おうこうしょうそう)、寧(いづ)くんぞ種(しゅ)有らんや。」と。
衆皆之に従ふ。

乃(すな)ち詐(いつは)りて公子(こうし)扶蘇(ふそ)・項燕(こうえん)と称し、大楚(たいそ)と称す。
勝は自立して将軍と為り、広は都尉(とい)と為る。

【解釈】
陽城の人、陳勝は呼び名を「渉」と言った。
若いとき、人と一緒に、雇われて農作業をしていた。
ある時、仕事の手を休め、畑の中の小高い場所に行き、しばらく我が身を嘆く様子で、こう言った。
「もし私が富貴な身の上になったら、あなたを忘れないだろうよ。」
雇い主は、笑って言った。
「お前さんは雇われ仕事で暮らしている身の上だ、どうして富貴になんぞなれようか、ジョーダンキツイヨ!」
陳勝は大きくため息をついて、こう言った、
「ああ、ツバメやスズメのようなちっぽけな鳥に、どうしておおとりの壮大な志がわかろうか、わかりはしない。」
このあと、陳勝は、呉広と蘄県で挙兵した。
時に、貧民達をも徴兵して、漁陽郡の守備に動員することになっており、渉と呉広はその集団を率いて漁陽に連れて行く班長になっていた。

前線へ赴く途中、たまたま大雨が降って道を通れなかった。
そこで、仲間を呼んでこう言った、
「この大雨によるアクシデントで、お主らは、もはや到着の期日に間に合わいません。これは秦の法律では斬殺の刑に相当します。意気盛んなお主らが、死にたくないというのなら、これまでです。だが、死ぬ覚悟があるならば、大きな名声を上げる事もできましょうぞ。王や諸侯、将軍や宰相に、どうして血統がありましょう、チャンスは我らにありますぞ。」
人びとは、みな陳勝の言葉に従った。
そこで、偽って公子扶蘇と項燕の名を名乗り、また、国を大楚と称した。
陳勝は自ら立って将軍となり、呉広は都尉(地方軍事長官)となった。


古代中国秦末期の、大規模な農民反乱「陳勝・呉広の乱」をめぐるエピソードです。

 

 




ところで、我が地方にもツバメが飛来し、桜の開花と相前後して、思い思いの場所に巣作りを始めています。
散歩道の農業用水路などは、粘りけのある田んぼの土が泥となって堆積していて、格好の巣材調達場所となっているようです。
巣材の泥を集めるツバメ

今朝方の雨の中、わが家の目の前の電線に、ツバメのつがいが一休みしていました。

 

わが家の軒下で、巣作り(古い巣の修復)に精を出しているカップルのようです。
この電線は、先日の記事でキジバトのカップルを盗撮下のとほぼ同じ場所です。
使用機材は、ちょっとした思いつきで、olympusE620+デジボーグ。間にテレコンOLYMPUS EC-14 ZUIKO DIGITAL 1.4x を挟んでいます。フォーサーズカメラが、35mm換算で2倍の望遠効果がある上に、テレコンの効果もプラスされて、いつものAFボーグよりも望遠効果が高いはず、、、なのですが、完全マニュアルフォーカスですので、ピント合わせが難儀です。

たくさんシャッターを切った中の、わずかに上出来と思える写真です。ピントがあって手ぶれが抑えられてさえいれば、やはり画質は上々でです。

ノートリミング画像です。

雨の中の電線のツバメ

 

雨の中の電線のツバメ



散歩中に会った雀たち。


春を迎えて、「欣喜雀躍」しておりました。

春の日のスズメ
春の日のスズメ

春の日のスズメ

 山雀と書いてヤマガラです。

 

深山公園のヤマガラ



四十雀はシジュウカラ。
岡山後楽園のシジュウカラ

雲雀はヒバリです。
畑の中のヒバリ


畑の中のヒバリ

燕も、雀も、はたまた山雀も、四十雀も、ヒバリも、あるいは、鴻鵠の志は知らないかも知れませんが、皆それぞれに、のどかな春をよろこび、「平和が一番」と、精一杯の囀りを奏でています。

 

 


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コメント 4

johncomeback

拙ブログへのコメントありがとうございます。
コンデジはアルコールで丁寧に拭いたら復活しました(^^)ニコ
by johncomeback (2015-04-06 09:54) 

mimimomo

こんにちは^^
いろんな〇〇雀…よく見つけられますね^^
ほんと小さくても大きくても、皆平和に暮らすのが一番だわ。
by mimimomo (2015-04-06 10:16) 

kazg

johncomeback 様
復活おめでとうございます。
スウィーツもアルコールも嗜む、「両刀遣い」のデジカメさんでしたか、
by kazg (2015-04-06 17:30) 

kazg

mimimomo様
スズメとヤマガラは、かなりの頻度で出会えますが、シジュウカラもヒバリも、なかなかカメラにおさめることが難しいです。シジュウカラは枝の陰にばかりいますし、ヒバリは近づくと逃げます。ま、彼らの平和を脅かしているのは私なのかもしれませんが、、、。
by kazg (2015-04-06 17:38) 

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