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20年前のベトナム訪問記(5) [木下透の作品]

現在、新ブログ「ナードサークの四季vol.2」 をメインブログとして更新していますが、こちらの初代ブログも、時々更新しないと、希望しない広告がふんだんに表示されます(PC版の場合です。スマホ版は常に広告が表示されているらしい)ので、それを避けるため、時折更新を続けています。

20年ほど前に体験したベトナム訪問旅行での撮影写真と、記録文をもとに、当時作っていたプライベートホームページのdataから、少しずつ小分けにして.再掲しています。今回は(その5)です


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3.二日目のベトナム (2)

クチ地下トンネル
 この日の午前中の主な見学先は、ベトナム戦争当時、解放戦線の拠点が置かれたクチ地方の地下トンネル・歴史遺跡地区。サイゴンの中心部をやや離れ、水田や水牛の姿も見える農村部を経て、ゴム樹林を通過する頃、ガイドのゴァンさんは、車窓から見えるゴム林をはじめ周囲の樹林が痩せて貧相なことを指摘します。すなわち、悪名高い枯葉剤投下の影響が、いまも残る場所だというのです。解放戦線がひそんでいるとして、焼き尽くし枯らし尽くそうとした、狂気の蹂躙のあとなのです。
 クチ地区には地下何層にも及ぶトンネルが蜘蛛の巣のようにはりめぐらされ、空爆や砲撃、戦車、火炎放射器による襲撃にも耐えて、守りぬかれた要塞だったのです。地下トンネルは、小柄な人がやっと通れそうな狭い出入り口、通路で結ばれているのですが、内部は複雑な構造となっていて、会議室、台所、戦闘参謀室もおかれていたそうです。
 私たちは、まず、解放戦線の抵抗ぶりや、地下トンネルでの生活ぶりを記録した当時の記録映画(ビデオ)を視聴します。ナレーションは、ちゃんと日本語です。
 その後、手作りの罠や、地雷が至る所に仕掛けてあって、米兵にとっては恐怖の難所であったに違いない森林内を見学、併せて、地下トンネルの内部もほんの一部体験してみます。それは、スコップとモッコで堀広げられた精妙なラビリンスで、「アリと象の戦争」とたとえられるこの戦争において、アリが勝利した秘密をかいま見た思いがします。
 私たちのグループのほかにも、日本からの観光客の姿が見えますし、ヨーロッパからの訪問者らしい一行も、感嘆の声を上げながら、進みます。観光客の便宜のために、一定広げられて整備されたトンネルだと言いますが、その狭さ息苦しさと圧迫感はたまりません。四六時中ここに生活しながら、恐怖と戦いつつこの陣地を守りぬいた少年、少女を含む解放戦線兵士の苦痛は、並大抵ではなかったろうと想います。わが水島の、亀島山地下壕や、ひめゆりの乙女たちをはじめ多くの少年少女が戦い生活した沖縄のあれこれの壕のことも想われて、いま、やすやすと明るい日差しのもとに立ち戻ることのできる幸福を、改めてかみしめたく思います。そして、アフガンであれイラクであれ、世界中のどの地域の若者も、永遠にこの幸せを享受できるようにと、願わずにはいられません。
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戦争証跡博物館
 続いての見学地は、戦争証跡博物館
 科学の粋を集めた近代兵器を駆使し、物量に飽かして展開された、アメリカの威信をかけた戦争のすさまじさが、実物の兵器、武器、爆弾、記録写真その他の展示物を通して実感的に伝わってきます。枯葉剤による奇形児の遺体がホルマリン漬けされて展示されているのも、痛ましく重苦しいかぎりです。
 石川文洋氏をはじめとする日本および世界の写真家・ジャーナリストたちが、命がけで記録・報道した写真や記事も、確かに見覚えのあるものを含めて数多く展示されており、改めてその衝撃的なメッセージ性に目をとらえられます。沢田教一氏や一ノ瀬泰造氏など、戦場で行方を絶った日本人カメラマンたちの遺作も多く展示されています。真実の報道に命を捧げた写真家・ジャーナリストの多さも、ベトナム戦争のもう一つの側面であったことを改めて思い起こします。
 また、館内には、ベトナム人民の抵抗闘争に対する、世界的な支援の運動についても実資料や写真が展示されており、日本での支援運動の模様も、相当のスペースを割いて紹介されています。その中には、ベトナム人民支援ポスターやカレンダーなど、確かに見覚えのあるもの、自身、実際に下宿の自室の壁に貼った覚えのあるものもあり、一瞬30年前にタイムスリップしたような感慨にとらわれました。そして、同時に、このベトナム戦争で、わが日本国民が、侵略の加担者としてのみではなく、平和、解放、国際連帯と人類の進歩の方向への寄与者としての栄誉ある役割を、辛うじて果たし得たことへの感謝と誇りを、改めてかみしめることができたことは、大きな喜びでした。
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 展示室のなかには、私たち外国人観光客に混じって、熱心にノートを取りながら、展示を食い入るように見つめている、白いアオザイのベトナム少女がいました。たしか、白いアオザイは、高校生の制服と聞きました。この聡明そうな少女の胸にどのような思いが去来しているかを思うと、痛ましい思いにこちらの胸がふさぎます。彼女の悲しみと心の痛みを、同時代・同世代のアジア人、いや、地球人として共感できるだけの感受性と基礎的歴史認識を、いまの日本の高校生に育ててやれているか、考えさせられました。
 過去の過ちを粉飾・糊塗する「国民の歴史」流のゆがんだ歴史認識ではなく、戦争による被害と加害の両面を直視し、あわせて、民衆の抵抗の歴史にも光を当てる歴史学習こそが、自国・自民族への誇りを真に育て、アジア諸国の人々と、真に友好的な関係を取り結んでいく基礎となるはずです。
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つづく

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