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20年前のベトナム訪問記(10)  [木下透の作品]

現在、新ブログ「ナードサークの四季vol.2」 をメインブログとして更新していますが、こちらの初代ブログも、時々更新しないと、希望しない広告がふんだんに表示されます(PC版の場合です。スマホ版は常に広告が表示されているらしい)ので、それを避けるため、時折更新を続けています。

20年ほど前に体験したベトナム訪問旅行での撮影写真と、記録文をもとに、当時作っていたプライベートホームページのdataから、少しずつ小分けにして.再掲しています。今回は(その10)です


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5 四日目のベトナム
国立人道企業に立ち寄る
 
 ベトナム滞在4日目にして、かつ最終日の8月10日。この日のメインは、ハロン湾見学です。
 ハロン湾へは、首都ハノイから南東へ、約150km。日本資本の協力で出来たという、ベトナム随一の高速道路をひたすら走ります。高速道路とはいっても、バイクや自転車も併走し、途中には横断歩道や信号があり、生活圏と密着した車窓光景が目を楽しませてくれます。
 途中休憩も兼ねて立ち寄った場所は「国立人道企業」。枯葉剤の影響その他による障害者・児の授産施設であるようです。
 「刺繍」の制作(実演)や、商品の販売に携わっている青年たちの障害は軽度のようですが、実に勤勉に立ち働き、また観光客への応対においても柔和で、微笑を絶やさないようすは、健気で頭が下がります。刺繍の仕上がりも実に丁寧かつ絢爛で、一つ仕上げるのに何十日、何ヶ月という労苦を聞くにつけても、その辛抱強さに感心させられます。
 売り子役の少年少女も、実に一生懸命で、私の求めたささやかな土産物のほかに、さらに一つ、さらに一枚と、別の品物を勧め、なかなか諦めようとしません。昨日も、路上販売のおばさんから、白檀の小板で編んだ扇子と例の三角菅笠を各一ドルで買い「もういらない」といっても、決して諦めず、次々に品物を手提げ籠の中から取りだしては、「これとこれで一ドル、安いよ」と粘られたのには閉口しましたが、ここの若い売り子さんたちも、同様の粘り強さです。日頃から、商売においても人付き合いにおいても「淡きこと水のごとき」ほど良さを快く感じる私ですので、断っても断っても商交渉を諦めない執拗さには、がめついまでの図々しさを感じて、いささか気が滅入ってしまったのですが、後でよくよく考えてみますと、このねばり強さも、使命感に燃えてのそれに相違ありません。艱難辛苦を乗り越えて、長期にわたる戦争に勝ち抜いた「英雄的ベトナム人民」の、ねばり強さ辛抱強さを脈々と受け継ぐものと見れば、腑に落ちる気もするのです。
 いずれにしても、障害者・児の自立に向けてのサポートについては、他産業への進出機会や教育機会において多大な困難・遅滞がうかがえること、とりわけ重度の障害児・者へのケアは決して十分とはいえないらしいことが、ヴェトさんの説明によっても、感じ取れたことでした。
 
刺繍作業中の少女たち
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ハロン湾クルージーング
 ベトナムきっての景勝地とされるハロン湾は、南シナ海につながる面積 1,553 平方キロメートルの内湾。
 約 2千もの島々が沖へ向かって延々と連なっている幻想的な光景が魅力です。
 ハロンとは「龍の降りたところ」という意味で、その昔、外敵の侵略からこの地を守るために空から龍の親子が現われて敵を打ち破り、その時吹き出した宝玉が幾千もの島々になったという伝説が残されています。
 中国・桂林にも、日本の松島にもたとえられるハロン湾の景観を、貸し切り船から展望します。石灰岩質の奇岩が、海上に無数に(岩山の数は、ホーチミンの没年と同じ1964であるそうな)屹立する様は、壮観であり、世界遺産に数えられるのもむべなることと思えます。
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 また、湾内を小舟で往来する海上生活者たち(少数民族の人々でしょうか)が、時に観光船に伴走し、観光客相手に海鮮物や果物を差し出して物売りに励んでいます。私たちの船の横でも、四歳前後かと思える幼児を舳先に遊ばせ、(その衣服は、ちゃんと船に紐でくくりつけてあります)夫は櫓を操り、若い妻が精一杯手を伸ばして、船客の鼻先に、商品の入った籠を押しつけるように示しています。籠の中には、ドラゴンフルーツ、ライチほかのトロピカルフルーツや、生きたエビ、シャコ、カニ、魚などなどが、新鮮そのものの姿で盛られています。観光船が、クルージングを始めるまでのわずかな徐行の時間に、ちょうど駅弁売りの風情で、しきりに声をかける、その懸命な姿も、幾代にわたって繰り返されてきたであろう生活が偲ばれて、印象深く思われます。
 ハロン湾は、例のトンキン湾ともつながっており、ベトナム戦争当時は、軍事的な要衝として、機雷が敷設されたり、空爆を受けたりで、のどかに景観を楽しむなど論外だったでしょう。
 「この方向に海南島があります」と、ヴェトさんが言うので、「今日のクルージングで海南島の姿がみえますか?」と尋ねてみると、ヴェトさん、あきれた表情を隠さず、「何日もかかります」と答えてくれました。
 つづく
 

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