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いや高に凍空翔(かけ)ん鳥のごと [私の切り抜き帳]

年の瀬も押し迫りました。 大掃除のシーズンですが、決まって古い新聞や本、冊子や手帳など、長く放置していた持ち物に目が止まり、ついつい時間を費やしてしまう、という経験をお持ちの方もおありでしょう。
引っ越しの時の大掃除などは、特にそうですね。 パソコン内の物探しや、ファイルの整理をしていると、同じ事が起こります。
昨日も実は、記事を書いている途中で、「みんな違ってみんないい(金子みすゞ)」の詩句や「異質共存」について触れた文章を探しているうちに、ついつい一連の文章を辿り読みしてしまい、思わぬ時間を消費しました。
少し思うところもありましたので、ごくごくプライベートな話題で失礼いたします。
以前、ある教育関係の雑誌にこんな投稿をしたことがありました。夜間定時制高校に勤務しはじめた頃で、記録には1996年とあります。

人間を幸福にしない学校?

 公園の砂場であろうか。四、五歳の子どもが何人か、しゃがんで遊んでいる。
後ろ姿の一人は、見まがうはずもなく、長男だ。
「そうか、お前はまだ、そんなに幼かったのか。よかった、それなら、やり直せる。抱いてあげるから、こっちへおいで。」
声をかけても、振り向こうとしない。遊びに夢中なのか、反発して頑なに体をこわばらせているのか。
砂遊びを切り上げた様子で、一人、二人と子どもたちが立ち上がり、向こうへ駆け去っていく。長男も、後を追って駆け出そうとする。「待ってくれ!」小さな背中に呼びかけようとして、目が醒めた。
その日、私たち夫婦は、彼の在籍する高校へおもむき、休学届けを提出した。二学期の初めのことだ。
彼は、高一の冬休み補習からまったく学校へ行けなくなった。辛うじて二年への進級は許されたものの、朝ごとにすく みと取り乱しを繰り返しながら、教科書通りの登校拒否症状を呈し、ずーっと家に閉じこもったきり。次第に生気も薄れ、音楽、TV、マンガ、ファミコン三昧の、昼夜逆転の日々。
「三年寝太郎って、きっと実在したのよね」という妻の言葉にリアリティがあった。
学校の対応、特に担任、カウンセラーの先生のご援助には、感謝のほかはない。だが、私自身、長年「進学普通科」に勤務して熟知しているつもりだが、進学校の生理は、子どもの自立のあがきを大らかに見守り援助するどころか、立ちすくみ逡巡する者をも追い立て蹴散らして、ひたすら走り続けることを強迫的に求めがちだ。
ましてや、岡山県では、ここ二、三年、小学区・総合選抜解体の動きに呼応して、学校間の不毛な「生き残り」競争があおられていて、余裕のない業績主義が学校全体を包む空気となっている。
それだけに、子どもにとって学校は、常にせかされ競わされ、万事に過度の緊張を強いられる息苦しい場となっているようだ。
息子も、中学半ばから、腹痛、下痢、めまい、耳鳴りに悩みながらも、ほとんど欠席なしに走り続けた。高校入学当初、みずから相談室や保健室を訪ね、呼吸法や自律訓練法を習って試みていたようだが、今思えばその心境が哀れである。休日も長期休業中も、四六時中くつろぐことなく、些細なことで家族とも衝突した。
ヘッセの「車輪の下」を読んで、「ハンス・ハンゼンギーベンラート(注;発表後、誤記憶に気づきました)は僕だ。僕も学校の犠牲者だ。」と訴えることもあった。
「いやな学校ならやめてしまえ。自力で乗り越える以外に解決の道はない。」などと追い詰めずに、「休み休みやったら?」と、なぜその時言ってやらなかったのだろう。
彼は言う。「苦しんでいる者を追い詰めるのが教師か。お父さんは家でも教師をやっている。」「教師はなぜ威張るのだろう、 少したくさんモノを知ってることのどこが偉いの。」「勉強自体を嫌いじゃないけど、僕がわかりたいことと、学校が教えたいことは全然違っている。勉強すればするほど、何もわからなくなる。」「未来なんて見えすいている。思いがけない出来事なんか、起こりはしない、地震やオウムみたいな悪いこと以外は。人生なんて、何の楽しみもない。そんなもののために、毎日我慢 して、努力する価値があるの。」彼を納得させる反論を、私はいまだに用意できないでいる。
 ウォルフレン著「人間を幸福にしない日本というシステム」 は、内容もさることながら、タイトルが秀逸だ。
ふと「人間を幸福にしない日本の学校というシステム」と語呂あわせをやってみて、その説得力にゾッとした。
子どもから学校を取ったら抜け殻しか残らない、という現状自体不幸だが、その学校が人間を幸福にする場でないとすれば、どこに子どもの救いはあるのだろう。
息子は、縁あってこの夏からオーストラリアにホームステイして、外国人学校に通っている。近所の店に買い物に行くことさえ億劫であった彼には、大きな一念発起であったろう。
朝六時に起きて、夕方まで授業。宿題もたっぷりあって、夜は十時就寝。「これでは日本にいる時以上の窮屈さだ」と嘆きながら、今の所、皆勤を続けている。タイ、香港、台湾、韓国・朝鮮、アフリカ、ギリシアなど、多彩な級友と知り合えたことは、収穫であったらしい。「みんなすごい」と賞嘆する。こちらでは聞けなかった言葉だ。
上か下か、勝ったか負けたかが支配する一元的価値の世界では、「みんなちがってみんないい」(金子みすず)という発想が生まれにくいせいだろうか。
私自身はこの春から、全校八十人弱の夜間定時制に転勤した。そのアットホームさに、私自身が癒されている。
中学時代ほとんど学校へ行けなかった生徒が、 無欠席で登校している。他校を続けられず、やり直しをかけて転入した生徒が「今が一番幸せ」と語っている。
山田洋次監督の言う、母のように暖かい「母校としての学校」が、海外か夜中にしか存在しないと、言いたいわけではないのだが----。

長男の不登校経験について、このブログでも何回か書いたつもりでいましたが、検索してみると、それはどうも錯覚で、この記事くらいしか見あたりませんでした。

今度はもっと

↑この記事でも紹介した黒田三郎さんの詩、2編を再掲します。

「紙風船」   黒田三郎

落ちてきたら
今度は
もっと高く
もっともっと高く
何度でも
打ち上げよう
美しい
願いごとのように


ある日ある時  黒田三郎

秋の空が青く美しいという
ただそれだけで
何かしらいいことがありそうな気のする
そんなときはないか
空高く噴き上げては
むなしく地に落ちる噴水の水も
わびしく梢をはなれる一枚の落葉さえ
何かしら喜びに踊っているように見える
そんなときが


今日は、「高く高く」の連想から、飛ぶ鳥シリーズといたします。

最初は、、、「低く低く」ですが、アオサギ。



 




 

 



ユリカモメ。

 



 


 
カモの群れ。
飛翔するカモの群れ
飛翔するカモの群れ posted by (C)kazg
 



 

 

おなじみのミサゴ。 


 


 

 



 



 



 

  今日の附録。 菜の花が咲いています。


 


日本水仙は、あちらこちらで花盛りです。

 


タンポポの綿毛。 

いつも機材棚に眠っているケンコーミラーレンズ 500mm F6.3DXは、超望遠レンズですが、なぜか遠くを写すと精細度が乏しいような気がします。こんな風に、マクロ的な使い方をすると、意外に楽しめます。
でも、それならマクロレンズを使えば?と突っ込みたくなりますが、それは言わない約束。
視力の衰えが、マニュアルフォーカスを敬遠させます。若い頃なら、もっと違った使い方ができたかもと悔やむのは、後の祭りというヤツです。
元気な頃に、満足できる機材と時間のゆとりが備わっていたなら、もっとマシな「作品」が撮れたかも知れません。でも、その頃は、別の興味関心が君を動かしていたのでしょ、とまたまたツッコミが入ります。
はい、そのとおり。決して後悔はしていませんとも。
きょうはここまでです。

追伸;アップ直後表示が乱れておりご迷惑をおかけました。10:10現在、何とか修正できたと思います。


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コメント 12

BrerRabbit

「紙風船」て黒田三郎さんの作とは知りませんでした。
昔々赤い鳥というグループが好きで彼らがこの詩に
曲をつけていたのでしょうか、詩を読んで思い出しました
いい曲でしたよ~
by BrerRabbit (2015-12-30 23:02) 

YUTAじい

おはようございます。
佳いお年をお迎えください。
by YUTAじい (2015-12-31 08:15) 

kazg

BrerRabbit様
そうなんです。
「赤い鳥」の曲。好きで、音楽テープ買いました。レコードでも、もちろんcdでもなく(笑)
by kazg (2015-12-31 08:36) 

kazg

YUTAじい様
来年もよろしくお願いいたします。
by kazg (2015-12-31 08:37) 

doudesyo

おはようございます。
野鳥の飛翔シーンは難しいです。
佳いお年をお迎え下さい。^^;
by doudesyo (2015-12-31 08:59) 

トックリヤシ

飛翔する鳥は美しいですね~。
望遠レンズ、欲しいなと思う時もありますが
海の中では役立たずですのでどうも手を出せません^^;
佳いお年を・・・
by トックリヤシ (2015-12-31 11:33) 

kazg

doudesyo様
まったく。AFは間に合わず、MFは老眼のためピントが合わず、、、、皆様方の飛翔写真をうらやましく拝見するばかりです。
よいお年を。

by kazg (2015-12-31 15:58) 

kazg

トックリヤシ様
海の中では、どのくらい遠くまでうつせるものでしょうか?
地上の生き物のなかにも、少々近寄っても逃げないでいてくれる被写体がいてくれるとありがたいのですがね。
よいお年を。
by kazg (2015-12-31 16:04) 

sarusan

今年1年お付き合い頂き有難うございました。
来年も宜しくお願いします。
佳いお年をお迎えください。

by sarusan (2015-12-31 17:51) 

kazg

sarusan様
ありがとうございます。こちらこそ、来年もよろしくお願いいたします。
by kazg (2015-12-31 19:57) 

momotaro

日本人は緊張の連続が好きですよね。
夏休みを学期の中に入れて宿題をいっぱい出したり、休み明けテストをしたり…
リラックスすることを恐れますよね。スケールが小さいんですかね?
真面目にやっていると、どこかで糸が切れちゃうんでしょうね。
日本人は寿命は長いけれど、時間感覚は短いのではないでしょうか?
「ゆったり育てる」という理念が欲しいですよね。
飛翔シリーズ、機材と腕がないととてもできませんね。楽しみにしております。
by momotaro (2016-01-04 06:39) 

kazg

momotaro 様
> 日本人は寿命は長いけれど、時間感覚は短い
まったくそのとおりですねえ。
意地でも、「ゆったり」を広げたい」のですが、ついついせわしく孫に接している自分を感じます(汗)
飛翔写真、、、偶然射程に入ってくれたら、たま~に写せることがありますが、私の機材と技量では、大きな被写体でないと無理です。無理とわかっていて試みているうちに、いつか奇跡を期待しています(笑)
by kazg (2016-01-06 05:16) 

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