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存分に撮り納めして歳暮るる [今日の暦]


大みそかです。
これにちなんで書こうと思った蘊蓄は、なんと一昨年のこの記事に、いっぱい書いておりました。
大晦日の蘊蓄 その他

この記事では、井原西鶴の「大晦日定なき世の定かな」という句をひき、『大晦日あはぬ算用』という文章を話題にしました。また、これを下敷きに、太宰治が『新釈諸国噺』の冒頭に、『貧の意地』という短編を書いたことにも触れました。その太宰が、『新釈諸国噺』を高く評価していたことも書きました。
もうネタ切れです。
ちと強引に、話題を転じます。

西鶴の作品を現代風にアレンジした太宰の小説集『新釈諸国噺』の一編に、わが故郷「美作」が登場します。
西鶴四十七歳の作品『日本永代蔵(にっぽんえいたいぐら)』をもとにした「破産」という作品です。
こんな書き出しです。

むかし美作の国に、蔵合という名の大長者があって、広い屋敷には立派な蔵が九つも立ち並び、蔵の中の金銀、夜な夜な呻き出して四隣の国々にも隠れなく、美作の国の人たちは自分の金でも無いのに、蔵合のその大財産を自慢し、薄暗い居酒屋でわずかの濁酒に酔っては、
 蔵合さまには及びもないが、せめて成りたや万屋に、
 という卑屈の唄をあわれなふしで口ずさんで淋しそうに笑い合うのである。この唄に出て来る万屋というのは、美作の国で蔵合につづく大金持、当主一代のうちに溜め込んだ金銀、何万両、何千貫とも見当つかず、しかも蔵合の如く堂々たる城郭を構える事なく、近隣の左官屋、炭屋、紙屋の家と少しも変らず軒の低い古ぼけた住居で、あるじは毎朝早く家の前の道路を掃除して馬糞や紐や板切れを拾い集めてむだには捨てず、世には何染、何縞がはやろうと着物は無地の手織木綿一つと定め、元日にも聟入の時に仕立てた麻袴を五十年このかた着用して礼廻りに歩き、夏にはふんどし一つの姿で浴衣を大事そうに首に巻いて近所へもらい風呂に出かけ、初生の茄子一つは二文、二つは三文と近在の百姓が売りに来れば、初物食って七十五日の永生きと皆々三文出して二つ買うのを、あるじの分別はさすがに非凡で、二文を出して一つ買い、これを食べて七十五日の永生きを願って、あとの一文にて、茄子の出盛りを待ちもっと大きいのをたくさん買いましょうという抜け目のない算用、金銀は殖えるばかりで、まさに、それこそ「暗闇に鬼」の如き根強き身代、きらいなものは酒色の二つ、「下戸ならぬこそ」とか「色好まざらむ男は」とか書き残した法師を憎む事しきりにて、おのれ、いま生きていたら、訴訟をしても、ただは置かぬ、と十三歳の息子の読みかけの徒然草を取り上げてばりばり破り、捨てずに紙の皺をのばして細長く切り、紙小縒を作って五十組の羽織紐を素早く器用に編んで引出しに仕舞い、これは一家の者以後十年間の普段の羽織紐、息子の名は吉太郎というが、かねてその色白くなよなよしたからだつきが気にくわず、十四歳の時、やわらかい鼻紙を懐に入れているのを見て、末の見込み無しと即座に勘当を言い渡し、播州には那波屋殿という倹約の大長者がいるから、よそながらそれを見ならって性根をかえよ、と一滴の涙もなく憎々しく言い切って、播州の網干というところにいるその子の乳母の家に追い遣り、その後、あるじの妹の一子を家にいれて二十五、六まで手代同様にしてこき使い、ひそかにその働き振りを見るに、その仕末のよろしき事、すりきれた草履の藁は、畑のこやしになるとて手許にたくわえ、ついでの人にたのんで田舎の親元へ送ってやる程の珍らしい心掛けの若者であったから、大いに気にいり、これを養子にして家を渡し、(中略) 

けちを見込まれたこの養子でしたが、環境が変われば人柄も変わります。


 やがて隠居夫婦も寄る年波、紙小縒の羽織紐がまだ六本引出しの中に残ってあると言い遺して老父まず往生すれば、老母はその引出しに羽織紐が四本しか無いのを気に病み、これも程なく後を追い、もはやこの家に気兼ねの者は無く、名実共に若大将の天下(以下略)

思うがままの散財の挙げ句、蔵の金が底をつきます。
内蔵はからっぽでも、この年の瀬さえしっぽを出さずに、やりくりをすませば、来年になれば何とかなると、待ちかねた除夜の鐘を聞き、ほっとして女房に酒の支度を言いつけた時、眼光鋭い浪人が訪ねてきて、「さいぜん、そなたの店から受け取ったお金の中に一粒、贋の銀貨がまじっていた。取かえていただきたい。」と迫ります。
「もう店をしまいましたから、来年にしていただけませんか。」と切り抜けようとしますが、浪人は聞き入れず、大声を挙げて、「百両千両のかねではない。たかが銀一粒だ。これほどの家で、手許に銀一粒の替が無いなど冗談を言ってはいけない。おや、その顔つきは、どうした。無いのか。本当に無いのか。何も無いのか。」と近隣に響きわたるほどの高声でわめきます。万屋の窮状はすっかり知れ渡るところとなり、「わずか銀一粒で大長者の万屋ぐゎらりと破産。」
どこぞの国の末路を見るようです。もはやお蔵は空っぽ、借用証文ばっかりうずたかく積み上げられているけれど、らいねんになったら消費税引き上げで、なんとかやりくりしてみせると、庶民の財布を当てにして、法人税引き下げと史上空前の軍事費大盤振る舞いのお大尽。「ぐゎらりと破産。」の前に、放蕩息子にはお引き取り願いたいですな。

ところで、今日の本題はここから。
去年の大晦日関連の記事はこちらです。
大晦日のカワセミ
大晦日の散歩で、今年の撮り納め(鳥納め)。去年と同じような鳥に出会いました。
朝の光の中のコガモです。


どぶ川のような農業用水路にシラサギたち。









モズ。



しきりに高鳴きしています。



ツグミ。







ムクドリ。





ゴイサギ。幼鳥=ホシゴイ。(ご指摘ありがとうございました)



ゴイサギ♂。







アオサギ。



これは?チョウゲンボウでしょうか?



ナノハナ。









朝露を宿した綿毛。



撮りおさめは、カワセミでした。




















皆様、よいお年をお迎え下さい。
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コメント 10

水郷楽人

今年もいろいろお付き合いいただきまして有難うございます。ここに御礼を申し上げるとともに、新年以降もよろしくお付き合いくださいますようお願い申し上げます。
佳いお年をお迎えくださいね。(*^^)v。。

by 水郷楽人 (2015-12-31 21:18) 

トックリヤシ

ここんとこ、ヤツガシラの姿をたびたび見ます。
ちょっと早いような・・・、例年になく暖かい年末ですし・・・
佳いお年を・・・
by トックリヤシ (2015-12-31 21:39) 

ぼっこ

どうぞ佳いお年をお迎え下さいませ^^
by ぼっこ (2015-12-31 21:55) 

kazg

水郷楽人様
ありがとうございます。
こちらこそよろしくおねがいいたします。
by kazg (2015-12-31 22:07) 

kazg

トックリヤシ様
ヤツガシラ、見たことがありません。おしゃれな鳥ですよね。
新年もよろしくお願いいたします。
by kazg (2015-12-31 22:13) 

kazg

ぼっこ様
新ブログ、おめでとうございます。
ますます佳き年でありますよう。
by kazg (2015-12-31 22:16) 

johncomeback

今年一年拙ブログにご訪問いただき、ありがとうございます。
来年も宜しくお願い致します。佳いお年をお迎え下さい(^▽^)/

by johncomeback (2015-12-31 22:28) 

doudesyo

こんばんは。
撮り納めでこれだけ撮影できるんですね。いいところですね。ホシゴイにはここ数年お会いしてないです。
来年も楽しみにしています。佳いお年をお迎えください。^^;
by doudesyo (2015-12-31 23:00) 

シラネアオイ

あけましておめでとうございます!
新年もよろしくお願い致します!!
by シラネアオイ (2016-01-01 00:54) 

kazg

>johncomeback様
> doudesyo様
> シラネアオイ様
いつも、ありがとうございます。新年も、どうぞよろしくおねがい申し上げます。
by kazg (2016-01-01 05:40) 

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