独り寝の寝覚めの朝や合歓の花(フィクションです) [今日の「これなあに」?]
今日の散歩で写しました。これなあに?豆科の実ですね。
そうです。合歓(ネム)の実です。
合歓の花は、梅雨の頃には咲きます。
その淡くはかなげな、薄紅色の花は印象的です。葉はオジギソウに酷似していますが、触ってもお辞儀をして垂れることはありません。ども、夜間は閉じて垂れ、眠るように見えることから「ねむ」と呼ばれます。
以前鉢植えを育てておりましたが、大きくなりすぎたので庭におろしましたら、生育がさかんで大樹になりそうでしたので、思い切った剪定を何度もしました。それにもめげず。毎年初夏には優美な花で楽しませてくれましたが、幹を虫に食われて枯れました。
残念ながら、花の写真は残っていません。
他の場所で目にする度に、カメラを向けてみますが、どうも難しい被写体で、満足に写せません。
これは、6月下旬の写真。
合歓の花というと、芭蕉のこの句を思い出します。
象潟や雨に西施がねぶの花 芭蕉
過去のこの記事 で、「奥の細道」の該当部分に触れましたので、今日は引用はしません。
若山牧水のこの歌などは、今時分の季節感覚に通じるでしょうか?
いつ知らず夏も寂しう更けそめぬほのかに合歓の花咲きにけり 若山牧水
ところで、合歓の花を歌った歌は、万葉集にも登場します。
紀女郎が大伴宿禰家持に贈る歌二首
1460 戯奴(わけ)がため我(あ)が手もすまに春の野に抜ける茅花ぞ食(め)して肥えませ
1461 昼は咲き夜は恋ひ寝(ぬ)る合歓木(ねぶ)の花我(あれ)のみ見めや戯奴(わけ)さへに見よ
右は、合歓木花(ねぶのはな)を折り攀(よ)ぢて、茅花(ちばな)と贈れるなり。
【解釈】
1460 そなたのために、我が手を休めず春の野で抜いた茅花ぞよ、さあ召し上がってお肥りなさいな。
1461 昼は咲き、夜は恋に焦がれて寝る合歓の花を、私だけが見ようか?いや、そなたも見よ!
戯奴(わけ)とは、主人が下男などを呼んだ語だといいます。ここでは、戯れに、親愛とある種の甘えを込めて家持をこう呼んでいるのでしょう。合歓木は、夜は葉を重ねて閉じることから、共寝の象徴ともいい、昼は明るく振る舞い夜は独り寝する紀女郎(きのいらつめ)自身の姿を詠んだとも言われます。
年長の恋人であった紀女郎からの、謎めいた贈歌に対して、大伴家持はこう返しています。
1463 我妹子が、形見の合歓木(ねむ)は、花のみに、咲きてけだしく、実にならじかも
1462 身体に良いという茅花を食べても、私は痩せるばかりです。あなたを恋しているせいらしい。
1463 あなたがくださった合歓木(ねむ)は、花だけで、咲きてもおそらく、実にならないのであろうよ。
合歓木は、実ができにくいとされていたようです。
俳句の世界では「合歓の花」は 夏(晩夏)の季語、「合歓の実」は秋(晩秋)の季語だそうです。
そんなことを斟酌して。フィクション(でっち上げ)の一句。
独り寝の寝覚めの朝や合歓の花
どんな詩情が込められてるの?ですって??
いえ、別に・・・。御免なさい。
稲葉の朝露。
今朝のキノコ。
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