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シリーズ故事成語クイズ(その1) [文学雑話]

こんなテスト問題を作ってみました。

次の1~5の故事成語の意味を後の語群から選べ。
1 虎の威を借る狐    
2 井蛙(井の中の蛙)  
3 杞憂  
4 漁父の利   
5 五十歩百歩 



【語群】
ア弱者が、自分の力を考えないで強者に立ち向かうこと。イ見聞・見識の狭いこと。
ウつまらぬ人物には大人物の遠大な心はわからないという意。 
エ本質的には同じであること。どちらもたいしたことのないこと。
オ不必要な心配。取り越し苦労。  
カ強大なものの後につき従うより、たとえ小さくとも頭になれということ。
キ他人の権勢を利用して、利益をはかること。  
ク人生の幸・不幸は予測しがたいこと。
ケ両者が争っているうちに、第三者が利を占めること。 コ苦労して学んだ成果。


いかがでしょうか?(答えは今日の記事の終わりにあります。)
これにかこつけて、故事成語の話題でしばらくお茶を濁すことに致します。

まず、シリーズ第一回。今日のネタは、「虎の威を借る狐」。出典は、古代中国の「戦国時代」に活躍した遊説家(ゆうぜいか)たちの活躍ぶりを、前漢の劉向がまとめた『戦国策』です。

高校の、漢文入門期の教材としてもおなじみです。

【原文】 

狐借虎威
   虎 求 百 獣 而 食 之 得 狐 狐 曰 子 無 敢 食
 我 也 天 帝 使 我 長 百 獣 今 子 食 我 是 逆 天
 帝 命 也 子 以 我 為 不 信 吾 為 子 先 行 子 随
 我 後 観 百 獣 之 見 我 而 敢 不 走 乎 虎 以 為
 然 故 遂 与 之 行 獣 見 之 皆 走 虎 不 知 獣 畏
 己 而 走 也 以 為 畏 狐 也

【書下し文】
狐(きつね) 虎(とら)の威(ゐ)を借(か)る

 虎(とら) 百(ひやく)獣(じう)を求(もと)めて之(これ)を食(く)らひ、狐(きつね)を得(え)たり。狐(きつね)曰(い)はく、「子(し) 敢
(あ)へて我(われ)を食(く)らふこと無(な)かれ。天帝(てんてい) 我(われ)をして百(ひやく)獣(じう)に長(ちやう)たらしむ。今(いま) 
子(し) 我(われ)を食(く)らはば、是(こ)れ天帝(てんてい)の命(めい)に逆(さか)らふなり。子(し) 我(われ)を以(も)つて信(しん)な
らずと為(な)さば、吾(われ) 子(し)の為(ため)に先行(せんかう)せん。子(し) 我(わ)が後(あと)に随(したが)ひて観(み)よ。百(ひや
く)獣(じう)の我(われ)を見(み)て、敢(あ)へて走(に)げざらんや。」と。虎(とら) 以(も)つて然(しか)りと為(な)す。故(ゆゑ)に遂
(つひ)に之(これ)と行(ゆ)く。獣(けもの) 之(これ)を見(み)て皆(みな) 走(に)ぐ。虎(とら) 獣(けもの)の己(おのれ)を畏(おそ)
れて走(に)ぐるを知(し)らざるなり。以(も)つて狐(きつね)を畏(おそ)ると為(な)すなり。


【kazg語訳】

キツネちゃんが、虎サンの威勢をバックに、自分を大物に見せかけるおはなし

虎サンは森の獣たちを捕まえて食べておりました。そんなあるとき、うまそうな狐ちゃんををつかまえました。
虎サンの生臭い、温かい息が鼻先にかかって、今にもパクリとやられそうになったちょうどその時、狐ちゃんは落ち着き払ったフリをして、こう言いいました、


「だめよ、だめだめ(古い)、私を食べてはゼッタイだめ。天のカミサマが、私を百獣のトップに任命されたんです。今もしあなたが私を食べたりなどしたなら
ば、天の神サマの命に逆らうことになりますぞ。もしも、私の言葉をうそだと思うのなら、証拠をお見せしましょう。ためしに、私が、先を歩いきましょう。あ
なたは私のあとについてきて、よおっくごらんなさい。私を見て逃げない獣がおりましょうか。皆、ゼッタイに逃げますぞ。」と。
虎サンは、よっしゃわかった、と合点して、そのまま一緒に歩いて行きました。獣たちはこれを見て、みんな慌てて逃げだしました。虎サンは、獣たちが自分を
怖がって逃げたとは知るよしもなかったのです。獣たちが怖がっているのは、狐ちゃんだと思い込んだのでした。

中国の「戦国時代」は、「戦国の七雄」と呼ばれる秦・楚・斉・燕・趙・魏・韓の国々が覇を競っていました。そのひとつ、南方に位置する楚の宣王は、あるとき、群臣にむかって、こう尋ねます。 

「北方の国々が、わが宰相の昭奚恤(しょうけいじゅつ)を恐れているというのはまことか?」

これにたいして、江乙(こういつ)という者が、上記のたとえ話をもって答えたといいます。

「王さまの治めておられる楚の国は、五千里四方の土地を有し、百万の軍勢を擁する強国です。宰相の昭奚恤はこれを自由に動かすことができます。上の喩え話と同様に、北の国々が奚恤を恐れるのは、実は王さまの威勢を恐れているのです。」

ここから「虎の威を借る狐」「虎の威を借る」という故事成語がうまれました。

「ジャイアンの威を借るスネ夫」をイメージすれば、現代社会でもそこここに見られる「アルアル」現象と言えましょうか。「アメリカの威を借るアベ」は、キツネではなくて、別名「アメリカのポチ」と呼ばれるイヌだそうですな。ポチをトップにいただく国民としては、返す返すも情けなく、恥ずかしいことですわい。


ところで、黒を白と言いくるめ、カラスをサギと言いくるめるのは、政治の世界の常套手段。

これがサギです。↓



これがカラスです。ホントです、サギではありません。↓



「平和安全法制」とは、「地球のどこまでもアメリカの戦争のために馳せ参じる法制」のことで、「国民の命と平和な暮らしを守り、国の存立を全うする」とは、「アメリカの世界戦略と、日本の独占企業の自由な利潤追求が最大限に保たれる限度の内において、国民の命と平和な暮らしを騙(かた)り、米国と日本の独占企業の存立を全うする」ことですからね。

「ウソつかない、TPP断固反対。ブレない。」(自民党選挙ポスター)と言った舌の根も乾かないうちに、「TPPは私たちの生活を豊かにしてくれます。」(10月6日安倍首相記者会見)と言ってのけられる厚顔さも、為政者たるべき基礎的素養であるらしい。「君子豹変」という言葉もありますから。それにつけても、お粗末な「君子」ですがね。
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「秘書のせいと責任転嫁することはできない、それは政治家の美学、人間の生きざまに反する」(甘利経済再生相自認記者会見)と涙ぐみながら秘書のせいにする迷演技。ちまたには「潔い」「現代の武士」との評価もあるそうですが、隠しおおせる自信がなくて、追及を受ける前にスタコラ退散しただけにも見えますね。
「潔い」どころか、金銭への意地汚さは人後に落ちない様子で、どちらかというと「不潔」と言うべきでしょうし、武士は武士でも、臣下にとっても領民にとても迷惑千万な「愚君」と呼ばねばなりますまい。いや、「愚君」の称号はアベさんに差し上げるべきだとすれば、さしずめ「現代の愚臣」ですかな。

それにつけても、跡継ぎが、「最後は金目でしょ」発言はじめ、父親譲りの失言(放言)癖でならす石原ジュニアと来ては、ますます気が滅入ってしまいます。それでも支持率は落ちない怪。( BrerRabbit様の2月2日付記事に「世論調査、甘利の不祥事があっても内閣支持率が上がる怪」という項があり、いたく納得しました。)

さて、余談はほどほどにして(ちっとも、ほどほどではありませんが)、「戦国策」によりますと、黒を白と言いくるめ、カラスをサギと言いくるめようとしたのは、実は江乙(こういつ)のほうでした
この時代、楚の宰相昭奚恤(しょうけいじゅつ)は、楚の国の政治と軍事の実権を握る名将として、近隣の国々から恐れられていました。そこで近隣諸国は、奚恤の失脚を謀るため、魏(ぎ)の遊説家=策略家、江乙を楚に送り込んだのでした。
讒言(ざんげん)によって昭奚恤を陥れ、楚の力をそごうとしての江乙の弁舌。それが「狐借虎威」のたとえ話だったのです。
江乙と昭奚恤、どちらが正義の士であるかは、資料薄弱で、私には判断しかねますが、、、、。


なお、冒頭のクイズの答えは、次の通りです。
1キ
2イ
3オ
4ケ
5エ

 

 今日はここまでです。


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トックリヤシ

日本を壊します、自民党!!
by トックリヤシ (2016-02-06 11:30) 

kazg

トックリヤシ様
正直にそう言ってくれればよろしいのに。
by kazg (2016-02-06 17:32) 

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