郷愁という名のメルヘン カルロス爺さんの思い出 連載第4回 [木下透の作品]
このカテゴリーの文章は、おおむね、私自身の回想に関わるので、常体(だ・である調)で書くことにする。
木下透は、私の高校時代の筆名である。彼の作品を紹介するのが、趣旨である。未熟さは、その年齢のなせる業なので、寛容な目で見てやっていただきたい。
高三の時に書いた「短編小説」を、連載で紹介したい。今日は、その第4回目。
郷愁という名のメルヘン
カルロス爺さんの思い出
連載第4回
「ぼくら仲良しだね。ぼくら友だちなのかい?ねえ、おまえ。ぼくんちへおいで。」
そう言って子犬を両手で抱き上げた時だった。ぼくはいやな奴の来るのを見つけた。
いたずらっこのニールスだ。そう、地主の息子で、この辺のガキ大将のあのいやなヤツ。
ぼくより三つ四つ年上で、そばかすだらけの顔には、もう一人前に濃いひげがうぶ毛にとってかわろうとしていた。そして、言葉つきも、ぼくらとはかけ離れて大人っぽくて、ぼくらをふるえあがらせたあいつが、いつもの仲間たち五、六人とやってくるのだった。
ぼくは真底彼らをきらいだった。おそろしかった。彼らはどんないたずらも平気でやった。すごく残酷な――大人たちでも尻ごみするような――行為を平気でした。
たとえば、カマキリに竹串を差し込んで火あぶりにしたり、カエルの腹に火薬を詰め込んで爆発させたり、皮をはいだヘビを生きうめにしたり。――それら善良な小動物のもだえ苦しむのを見るのが、彼らのとっておきの楽しみであるかのようだった。
そのニールス達が、棒っ切れやムチを振り回しながら、いたずらの種をさがしにやってきたのだった、
ぼくはとまどった。とっさに逃げだそうと考えた。両手に抱いていた子犬を、胸におし当てて、背をかがめて逃げようとした。
「おい待てよ
ニールスの仲間の一人が叫んだ。
「おい、何をかくしているんだい。」
「みせろよ。おい」
「おれ達からにげるのかい?」
彼らは、ぼくを取り囲んで、口々にそう言った。ぼくはふるえながら顔を赤くして、泣き声でつぶやいた。
「いえ・・・なにも・・・かくしちゃいません・・・・ぼく・・・。」
「おい、その手に持っているもの、オレタチに見せなよ。さああ。」
ぼくはうつむいて、しきりにしきりに首を横に振った。
「いやだっていうのか。おい、オレタチの言うことを聞けないって。いつからおまえ、そんなにエラクなったんだ?オイ、チビ。」
仲間の一人が、ぼくから子犬を奪い去った。
ぼくは手向かいもできないで、ただ泣きふした。
奴ら、手に持っていた荒縄で、子犬の首をしばり、そこらを引き回した。
子犬はうなりながら、あるいは悲鳴を上げながら抵抗したが、それを彼らは、容赦なくけとばした。
ぼくは何もできず、ただ泣いているだけだった。
「おねがい。ぼくの・・・ぼくの子犬を・・・。」泣きじゃくりながら、そうくり返すだけだった。
ぼくは、奴らの非情さと、それ以上にぼくのだらしなさに腹を立てて泣きじゃくるのだった。
そう言って子犬を両手で抱き上げた時だった。ぼくはいやな奴の来るのを見つけた。
いたずらっこのニールスだ。そう、地主の息子で、この辺のガキ大将のあのいやなヤツ。
ぼくより三つ四つ年上で、そばかすだらけの顔には、もう一人前に濃いひげがうぶ毛にとってかわろうとしていた。そして、言葉つきも、ぼくらとはかけ離れて大人っぽくて、ぼくらをふるえあがらせたあいつが、いつもの仲間たち五、六人とやってくるのだった。
ぼくは真底彼らをきらいだった。おそろしかった。彼らはどんないたずらも平気でやった。すごく残酷な――大人たちでも尻ごみするような――行為を平気でした。
たとえば、カマキリに竹串を差し込んで火あぶりにしたり、カエルの腹に火薬を詰め込んで爆発させたり、皮をはいだヘビを生きうめにしたり。――それら善良な小動物のもだえ苦しむのを見るのが、彼らのとっておきの楽しみであるかのようだった。
そのニールス達が、棒っ切れやムチを振り回しながら、いたずらの種をさがしにやってきたのだった、
ぼくはとまどった。とっさに逃げだそうと考えた。両手に抱いていた子犬を、胸におし当てて、背をかがめて逃げようとした。
「おい待てよ
ニールスの仲間の一人が叫んだ。
「おい、何をかくしているんだい。」
「みせろよ。おい」
「おれ達からにげるのかい?」
彼らは、ぼくを取り囲んで、口々にそう言った。ぼくはふるえながら顔を赤くして、泣き声でつぶやいた。
「いえ・・・なにも・・・かくしちゃいません・・・・ぼく・・・。」
「おい、その手に持っているもの、オレタチに見せなよ。さああ。」
ぼくはうつむいて、しきりにしきりに首を横に振った。
「いやだっていうのか。おい、オレタチの言うことを聞けないって。いつからおまえ、そんなにエラクなったんだ?オイ、チビ。」
仲間の一人が、ぼくから子犬を奪い去った。
ぼくは手向かいもできないで、ただ泣きふした。
奴ら、手に持っていた荒縄で、子犬の首をしばり、そこらを引き回した。
子犬はうなりながら、あるいは悲鳴を上げながら抵抗したが、それを彼らは、容赦なくけとばした。
ぼくは何もできず、ただ泣いているだけだった。
「おねがい。ぼくの・・・ぼくの子犬を・・・。」泣きじゃくりながら、そうくり返すだけだった。
ぼくは、奴らの非情さと、それ以上にぼくのだらしなさに腹を立てて泣きじゃくるのだった。
つづく
昨日の夕日を写しました。
連載第1回の掲載写真に追加してみて下さい。
↓訪問記念にクリックして下さると、励みになります。
コメント 0