美ら海の碧籠めたるか海葡萄（ちゅらうみの あをこめたるか うみぶだう）

妻が珍しい食材を買い求めてきました。
これはなんでしょう？

 

 

 

 

魚卵？果樹？
いえいえ、正解は「海ブドウ｣。

 

 

 

「海ブドウ｣は、イワズタ科イワズタ属の海藻で、クビレズタ（括れ蔦）とも呼ばれるそうです。
英語でSea grapes､フランス語でRaisins de la mer。
沖縄や南西諸島の沿岸部浅海域に生育し、その形状がブドウに似ている事から「海ブドウ」の名で知られ、また、グリーンキャビアとも名付けられているようです。

沖縄では古くから食用とされてきましたが、天然物は激減し、今では、主として養殖ものが流通しているそうです。
プチプチとした触感が癖になります。中からふわーっと磯の香りが広がり、淡泊ながら濃厚な魚卵のような味が、口に広がります。美味です。
ここで駄句を二句、

美ら海の碧籠めたるか海葡萄（ちゅらうみの　あをこめたるか　うみぶだう）

海葡萄噛めば美ら海匂い立つ（うみぶだう　かめば　ちゅらうみ　にをひたつ）

 

勢いで、迷短歌まで詠んじゃいました。

 

ジュゴン住む　南の海の　光浴び　揺蕩（たゆと）うならん　碧（あを）き珠の緒

ジュゴン住む　南の海の海葡萄（うみぶだう）　念じをるらん　基地なき海を

１首目

珠は丸い宝石です。

この記事で、少し触れたことがありました。

珠の緒（玉の緒）は、宝石をつなぎ合わせる大切な糸・ひも。珠が魂に通じることから、魂をつなぎ止める糸、すなわち生命をあらわしました。

新古今和歌集に載っている式子内親王のこの歌は、小倉百人一首でもおなじみです。

 

玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば　忍ぶることの弱りもぞする　式子内親王

【解釈と能書き】

私の生命よ、絶えるのならば絶えておしまい！このまま生きながらえていると、私の恋を心の中に秘めておく力が弱って、露見してしまいはしないかと心配ですもの。

 

式子内親王（しょくしないしんのう）は、後白河法皇の皇女で、この歌は、「忍ぶる恋」という題で詠まれたものです。自己の真実の秘密の告白というよりは、「お題」に合わせての創作という要素を持つ歌なのでしょう。

「絶えなば絶えね」の「な」は完了の助動詞「ぬ」の未然形。「ね」は同じ完了の助動詞の「ぬ」命令形です。未然形に接続助詞「ば」続くと、もし～ならば、という仮定条件をあらわします。「もし仮にいのちが絶えてしまうのならば、いっそ絶えてしまえ！」という、聞くものをたじろがせるほどの思い切った言明です。

「忍ぶる」は、上二段活用の動詞「忍ぶ」の連体形で、堪え忍ぶという意味です。恋心を胸に秘めて打ち明けることを、堪え忍び我慢する力が、もはや限界に近づいているというのです。

「弱りもぞする」という表現も、「～もぞ～連体形」で用いられる慣用表現で、悪い結果が起こることを恐れる、心配する表現です。

よく似た表現に「～もこそ～已然形」の言い回しがあります。

有名な「源氏物語」の｢若紫｣の巻で、一八歳の光源氏が一〇歳の少女であった若紫を、初めて垣間見（のぞき見）する場面で、「可愛がっていた雀を犬君（いぬき）という侍女が逃がしてしまった」と泣いて訴える若紫に、女房の一人が、「烏などもこそ見つくれ」と心配します。　（逃げた雀を）烏などが見つけて襲ったりしては大変だというのです。

式子内親王については、以前、この記事でも書きました。

私の歌は、最初深い美ら海の海底深くたゆとう美しい海藻をイメージしたのでしたが、調べてみると、海ブドウは沿岸の浅い砂地に生育するそうで、思いっきり南国の太陽の光を浴びたエメラルドグリーンの浜辺を想い描くのがふさわしいのでしょう。

 

２首目

ジュゴンに海ブドウ。
平和で穏やかな沖縄にこそ生きられる希少な生物です。

辺野古の海を埋め立てたり、事故頻発のオスプレイが飛びかったり、殴り込み部隊の海兵隊がいっそう活躍する事態とは、決して相容れない存在と思えます。

オスプレイについては過去のこの記事や、またこの記事でも触れました

最近の報道によれば、自衛隊にも来年度からオスプレイを導入するそうな。

「前のめり」の安倍内閣の姿勢が、日本国民の総意だと、国際的に見なされることは不本意ですね。