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日生の詩歌、第一回、の巻 [文学雑話]

先日の日生への一日旅行(なんと、「日」が多い!)の記事の続きです。
備前市加子浦歴史文化館「文芸館」で「自由にお持ち帰りください」とあった資料プリントに、「日生の詩歌」というものもありました。

ちょっとご紹介したい気持ちになりましたが、手入力するのも少々億劫で、コピペできるようなデータがないかと、ネットで検索してみますと、生命保険会社がらみの記事はありましたが、お目当てのものは見つかりません(笑い)。

ですので、一部を抜粋して引用することにします。
日生にゆかりのある詩歌として、古くは平安末から鎌倉初期のものが紹介されています。
 後鳥羽上皇 『後鳥羽院御集』

月影に むし明のせとを 漕出れば

八十島かけて おくる鹿の音



民都卿為家 『松葉集』

雲かかる 虫明の迫門の 松風に

たへぬる秋ぞ 悼鹿の声



滋円僧正 『拾玉集』

虫明のうら かなしくも 過ぬらん

風によわりし 声を恋ひつつ



藤原俊成卿 校泊聞鹿『長秋詠藻』(「秋歌」)

やよいかに 虫明の松の 風に又

はるかに鹿 声送るなり

後鳥羽院は、藤原定家らに命じて『新古今和歌集』を編纂させました。民都卿為家とは、その定家の子で、藤原為家のことです。また、藤原俊成は定家の父です。
俊成・定家父子は、平安末から鎌倉初期にかけて、和歌の実作と理念において指導的影響力を示し、唯美的・幻想的・絵画的・象徴的等と評されるいわゆる『新古今調』の歌風をリードしました。「幽玄(ゆうげん)」「有心(うしん)」などと名づけた余情美の世界をその理想としました。
滋円は、関白藤原忠通の子で、九条兼実の弟にあたり、新古今集の主要な歌人の一人であるとともに、天台座主(てんだいざす=比叡山延暦寺の貫主)の要職を四度もつとめ、史論書「愚管抄」を著すなど、歴史にたしかな足跡を刻んでいます。
これらの歌に登場する「虫明」「むし明」は、「むしあげ」「むしあけ」と読み、今日でも日生と並んで書きの主要産地として知られています。行政区としては、備前市日生と瀬戸内市邑久町虫明と、異なる自治体に属しますし、地上のルートでは多少の距離がありますが、海上では、隣接しています。
これらの歌に、たびたび鹿が歌われているのは、この地の名物なのでしょうか。今も、鹿久居島(かくいじま)や、鹿忍(かしの=瀬戸内市牛窓町)などの地名に、鹿が登場します。
また、最近、鹿久居島とお隣の頭島(かしらじま)を結ぶ頭島大橋を、鹿の群れが列をなして渡るというニュースが、注目されています。
夜の島 海渡る隊列 : 写真 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

佐賀新聞でも紹介されていました。
 ■餌を求め、夜の渡橋

 橋の上をぽつぽつと照らす街灯の光の中に五つの影(かげ)が動く。夜の静寂(せいじゃく)に包まれた初夏の瀬戸内海(せとないかい)。岡山県備前市(おかやまけんびぜんし)の鹿久居(かくい)島から対岸の頭(かしら)島へ向かう鹿の一群(いちぐん)だ。

ときどき立ち止まっては歩き、警戒(けいかい)しながら300メートルの橋を約10分かけて渡る。人の寝静(ねしず)まった島内で、ミカンの葉や畑の野菜などの餌(えさ)を求めてさまよい、日の出前に帰っていく。

鹿の食害に頭を悩(なや)ませる市や町は多い。



橋を渡って鹿久居島から頭島へ向かう鹿の一群=岡山県備前市


岡山藩の藩主の歌もあります。
池田光政 寒河庄屋 荻原家にて

越(お)く露も しづ心なく 秋風に

みだれてさける まののはぎはら


池田綱政

立花の山の紅葉 散る頃は

ひとり妻恋ふ  さをしかの声

続きは次回と致します。
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コメント 4

majyo

ええっ、鹿の渡橋とは、信じられないです
私が過去に見たのは、猟師に仕留められた鹿
あと、2000m超えの雲取山でした。
そちらでは昔からたくさんいるようですね。
by majyo (2016-03-03 21:04) 

kazg

majyo 様
鹿が海を泳いで渡るという話は、昔から聞いたことがありました。
最近の鹿は近代的ですから、橋を渡るらしいです。
by kazg (2016-03-03 21:33) 

さきしなのてるりん

泳ぐより歩くのが安全なんか。鹿がねぇ。
by さきしなのてるりん (2016-03-06 14:15) 

kazg

さきしなのてるりん 様
大移動でない場合、橋が便利、なのでしょうかね。
by kazg (2016-03-06 22:05) 

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