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郷愁という名のメルヘン カルロス爺さんの思い出 連載第1回 [木下透の作品]

このカテゴリーの文章は、おおむね、私自身の回想に関わるので、常体(だ・である調)で書くことにする。

木下透は、私の高校時代の筆名である。彼の作品を紹介するのが、趣旨である。未熟さは、その年齢のなせる業なので、寛容な目で見てやっていただきたい。

今日掲載するのは、高3の時の作品だ。

門閥(封建)制度は親の敵(かたき)でござる」と、福沢諭吉は言ったそうだが、「受験制度は親の敵(かたき)でござる」と言いたい思いが私にはある。私の親が受験制度によって被害を受けたわけではないが、私にとっては、恨み重なるにっくき仇と思えたのだ。

当時、「受験戦争」という言葉はすでに存在していて、「四当五落」(睡眠時間を四時間にして勉強に専念すれば合格するが、五時間得ると失敗する)などというス

「スポ根」まがいの檄言がまことしやかに喧伝されていた。

自己の存在の全てのものに超越して、「受験」なるものが君臨し、それへの無条件の隷従が求められる生活。拒みながらも拒みきれない不本意さ。

一方、東大安田講堂事件を頂点とする「大学紛争」の風は、地方の寒村にもかすかに伝わってきてはいた。社会的政治的諸課題とともに、「大学解体」というテーゼも、高校生の情緒を揺さぶり不安定にさせるに十分だった。

そんな中で「自分探し」「自分づくり」にあえぎつつ、かなりの時間を費やして原稿用紙に向かったのは、確かに逃避であり、ある種の防衛規制でもあったろう。

折しも、国語の宿題で、「小説を書け」と命じた人があった。このブログで過去にも話題にした、敬愛する恩師故U先生だ。いわば「自由課題」で、強制的なものではなかったが、今なら、高三の「受験生」にこんな要求をすることは、「無謀」のそしりを免れまい。しかし、高三といえば、「自分探し・自分づくり」の仕上げにかかる時期でもあって、そんなとき、この課題は、「表現」を通して自己と世界(外界)への「認識」を深めるという、有効で得難い体験だったと思う。


郷愁という名のメルヘン
カルロス爺さんの思い出
木下透
連載第1回
 

   君、覚えているかい水車小屋のカルロス爺さん。いろんなお話聞かせてくれた、あのジーベルカルロス爺さんだよ。
  ぼくらが、かくれおにをしていると、一緒になって遊んでくれた・・・大きな身体を丸っこく小っちゃくさせて、リンゴだるの後ろに隠れてたっけ。ぼくら、爺さんのかげに小っちゃくなってしゃがんでるんだ。だから、いつでも一番先に爺さんがめっかるんだ。
  爺さんったら、めっかると「アッハッハ」って笑うんだ。歯のない口を大っきく開けてさ。「アッハッハハハハ」て笑うんだ。
  ぼくらも一緒に笑ったさ。大っきな声で。
  空がほんとに高いんだ。あおくってさ。 西の方がちょっぴり夕焼けてるんだ。
  草の上に寝っ転がると、ひんやりしてさ。誰かが言ったっけ。「秋だねえっ」て。ぼくら、ほんとにそう思ったんだよ。「秋だな・・・。」
丘のポプラの葉っぱも黄色くなってたし、土手の草にだって、森のかえでにだって、もう緑はなくなっているんだ。
汗が冷えると、ちょっぴり寂しくなってしまって、そいで、もいちど笑ったんだ。「アッハッハハハ」って。爺さんも一緒にさ。
妙にしんみり悲しくなった僕らの上を、カラスが鳴いて飛んでった。
山は紅く紅く夕焼けていた。

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爺さん本当に子供が好きなんだね。
僕ら、いたずらして爺さんの眼鏡を隠した時も、爺さん柱におでこぶつけて、たんこぶこさえてたけれど、少しもぼくらをしかりはしなかった。やっぱり「アッハッハ」って笑うんだ.歯の欠けた大きな口あけて。

村の大人は、爺さんのことばかにするけど、それえも、ぼくらは、みんな爺さんのこと好きさ。
貧乏なカルロス爺さん、文字も満足に読めないカルロス爺さん。けれど好きさ。


爺さんの作ってくれた呼子笛。青くてつやつやしている竹を、小刀で器用に削って、爺さんが作ってくれた呼子笛。鳴らすと「ピーピロピピ」と柔らかい音がして、小鳥がいっぱい集まってくる。
爺さん巣箱を作るのも上手だから、爺さん家(ち)のまわりにはたくさん小鳥が集まるのさ。
ホオジロだってムクドリだってツグミだって・・・。ぼくらが近寄っても逃げはしないんだ。
爺さんの優しい心は、小鳥にだってわかるんだねって、ぼくらいつも感心してる。村の悪童もいたずらっ子も、爺さんといるとおとなしいんだ。はじめっから、優しい善良な少年であったかのように。(そして、きっとそうなんだ。)

最近のムクドリ
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去年のホオジロ
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ツグミ
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シジュウカラ
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以下、今日の小鳥 たち。
エナガ
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ヤマガラ
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ジョウビタキのオス
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ジョウビタキのメス
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キジバト
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メジロ
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