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郷愁という名のメルヘン カルロス爺さんの思い出 連載第5回 [木下透の作品]

このカテゴリーの文章は、おおむね、私自身の回想に関わるので、常体(だ・である調)で書くことにする。

木下透は、私の高校時代の筆名である。彼の作品を紹介するのが、趣旨である。未熟さは、その年齢のなせる業なので、寛容な目で見てやっていただきたい。

高三の時に書いた「短編小説」を、連載で紹介したい。今日は、その第5回目。


 郷愁という名のメルヘン
カルロス爺さんの思い出
木下 透

  連載第5回
と、その時だった。とてつもない大声が、あたりにひびきわたった。
「こら、おまえたち。なにをやっとる。コラ!!」
カルロス爺さんだった。ぼくは、こんなに怒った爺さんを見るのは初めてだった。爺さんは、今まで一度だって怒りを顔にあらわしたことはなかった。そんな爺さんが、これほどものすごいけんまくで――――。
いたずらっ子達は一瞬たじろいで、二,三歩後ずさったが、なまいきなニールスが、口をとがらせて横柄にこういった。
「おい、爺さん、オレにそんなこと言っていいのかい。とおさんに言いつけるぜ。水車小屋の貧乏じじい、だまって引っこんでなよ。」
爺さんはしきりに首を振り、手を振って、
「いやいや、坊さま。たしかにわしは、地主さまにはお世話になっておりますだ。地主さまのためなら、何でもしますじゃ。じゃが、これとそれとは話が別じゃ。坊さま。あんたは今、何てことをなさろうとしているか、おわかりですか。何てことを、なさっているか、おわかりですかな。あんたは、あんたの一時の気まぐれから、一つの、小さいけれど、大切な生命を、奪おうとしてなさるんですよ。我らが主の生みたもうた生命を・・・。どんな小さな生命も、どんなに弱い生命も、強い者の身勝手やわがままで、もてあそんでいいもんですかい。それをあんたのお父さまは、お許しになりますかい?否、たとえお許しになったとしても、わしが許しませんぞ。我らが主が、決してそれをお許しにはなりませんぞ。」
奴らは、口々に悪態をつきながらも、爺さんのけんまくに押されて逃げ去った。
取り残されたぼくは、安堵とともに、こみ上げてくるくやしさに、爺さんの胸にすがりついて泣いた。
爺さんは、優しくぼくの髪の毛をなでながらこう言った。
「ぼうや、こんなことで泣いちゃいけないよ。男は戦わずに泣いちゃいけないんじゃよ、ぼうや。どんなに手ごわい敵でも、とてもかないっこないような敵でも、それがほんとの敵であることがはっきりしたなら、男は戦わなきゃならないよ。負けてもいいんだ、負けたら泣いてもいいんだ。けれど、戦わずに泣いちゃいけない。坊やが戦わねばならないのは、主をけがす敵、それに坊や自身をけがす敵――ぼうや自身をだめにしてしまう敵。わかったね。」
ぼくは、爺さんの胸でしゃくり上げながらうなずいた。たくましい爺さんの胸と腕。ほのかなきざみタバコの匂い――爺さんの匂い。
爺さんは、ぼくの髪の毛にほおずりをしながら、「アッハッハ」って笑った。
ぼくも一緒に、とめどなく溢れてくる涙をこすり上げながら、「あっはっは」って笑った。
幼年期から少年期へ移ろうとしていたぼくの、こまっしゃくれた、大人びた(恥ずべき))打算――地主と水車番、地主の息子と小作人のせがれの関係といった、大人にはつきものだと考えられた思惑――は吹き飛んだ。そして、日曜ごとに教会で教わる神というものへの不信に比して、爺さんの神は、もっともっと身近にあって、それでいてもっともっと高尚で本質的な愛に満ちていた。

 
つづく
 

ジェンダーフリーの発想がまだ一般的でなかった頃なので、
「男は戦わずに泣いちゃいけないんじゃよ」
「どんなに手ごわい敵でも、とてもかないっこないような敵でも、それがほんとの敵であることがはっきりしたなら、男は戦わなきゃならないよ。 」
と、「男の子」へのメッセージというか、自負の表明になっています。
より正しくは、「人間(human)は」と書かれるべきだったでしょうが。
 
 
今日の鳥。
またまた、かいつぶり。今日は大きく写せました。
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ミサゴが上空を輪を描いて舞っていました。
たくさん写しましたが、手ぶれがひどくて、マシなのはこれくらい。
いつの間二か、遠ざかってしまい、採餌の瞬間は目撃できませんでした。
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セキレイ
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ホオジロ?
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バン
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アオサギ
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追伸
今朝は朝刊を見て、落胆した。
「秘密保護法」が昨日深夜に、参議院本会議で強行採決された由。知らずに寝てましたのでね。
「特定秘密法」審議の過程で、安倍さんが繰り返していた「知る権利も大切だが、知られたくない権利もある。」という強弁が、のどに刺さった小骨のように気障りで仕方がなかったことは、以前のブログに書いた。
これは要するに、「国家=為政者には国民に知られたくない権利があり、それは国民の知る権利に優越する」という意味だと気づくまで、うかつにも時間がかかったのだった。でも、今度の強行採決の経過を見届けるまでは、まだまだ、安倍さんの「政治家としての成熟」みたいなものを期待していた。要するに「あまちゃん(文字通り、甘ちゃん)」だった。
安倍さん(たち)の特異なスタンスには、まだ続きがあった。いわく、国家=為政者には、国民の意見を「聞かない権利」、民意の動向を「知りたくない権利」、それでも盾つく国民の声や行動を「テロ」呼ばわりして抑えつける権利がある――。
こんな封建君主も臆するような発想を、主権在民を高らかに謳った日本国憲法下の指導者が、まさか、本気で考えるようなことがあろうなどと、想像することさえ憚られたのは、まさに「あまちゃん」。イマジネーションの不足というものだった。
でも、確か、公務員には憲法遵守義務が定められていたはず。ほらほら、憲法第九十九条にはこうあるではないか。
「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」
あ、そうか、これに違反していることが、肩身が狭いせいで、憲法そのものを自分好みに変えようとしてるのかな?
そう言えば、安倍さん政治姿勢は、お父さんの安倍晋太郎サンよりも、お祖父さんの岸信介サンに似ているというのがもっぱらの噂。第一次内閣の挫折から、少しバランス感覚を身につけたかという世間の期待もあったようだが、参院選圧勝に浮かれて、ついつい地金があらわれたってことか。
お祖父さんの岸信介サンと言えば、戦前、東条内閣の閣僚として日米開戦の詔勅に署名し、戦後A級戦犯として戦争責任を裁かれた人。その後、アメリカの対日政策の大転換により、見事に復活し、「自主憲法制定」「自主軍備確立」などを掲げる「日本再建連盟」を率いて政界に復帰し、石橋内閣を継いで首相に。国論を二分した「日米安保条約」の改訂強行、警察官職務執行法(警職法)の策動、教職員への勤務評定導入など、治安強化と思想統制を特徴とする「ハードポリティクス」を基調に「逆コース」の担い手として君臨し、その後の保守政治に暗然たる影響力を行使した。その足跡は、CIAとの深い関係(資金提供を含む)、黒い金脈、児玉誉士夫・統一教会など右翼勢力との密接なつながりなど、どす黒い汚れにまみれている。
 この岸信介さんを、「敬愛する祖父」とたたえる安倍さんに、いささかでも「主権在民」と「恒久平和」を基軸とする憲法的世界観を求めることは浅はかだった。
「聞きたくない」と思っても、聞かずにいられないほどに、国民の声を圧倒的に大きくしなければならないということか。
 

 
 
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